「女性だから面白い」大会の存在意義【THE W 2023感想】

12月9日、女性芸人ナンバーワン決定戦「THE W」が放送された。
審査員・麒麟川島さんが票を入れたことを「蝶を飛ばさせていただいた」と表現したことにそこはかとない上品さを感じつつ、いちお笑いファンとしてめちゃくちゃ面白い、また意義のある大会だなと思ったので所感を(雑に)書き残しておきます。お笑いに関しては「素人がゴチャゴチャ言うな」論争が絶えないがそういうこと言う輩は一旦虫歯治療した歯を抜いてきてほしい。ここは私のnoteなので。感想に長短の差があるのは許してください。

ネタについて(※個人の感想です)

【まいあんつ】
めちゃくちゃ笑いました。ギャグってこんだけくだらないのがいいよね。ただR1ぐらんぷりのYES!アキトでもおもったのだがギャガーは賞レースほんと不利よな。王子様に信じてもらいたくてギャグやって「本物でしょ」って流れが最高だった。魔法をかけられたシンデレラっていう設定がよきでした。

【はるかぜに告ぐ】
1年目!!??と度肝をゴボゴボに抜いてきたしゃべくり漫才、すごいな。岸和田の治安の悪さを「あそこは未だに『デカイ』が正義」と表現するあたりセンスが爆発していた。女性の関西弁っていいよな。

【スパイク】
(1本目)
巧みな演技力という点では大会一。目力の強さを存分に発揮していたな。サンドバッグを相手に「罵りながら小突く」という見た目も意味がわからなすぎて面白い。殴れよ!!!途中で見えない部長の声が聞こえたり、「それで月35万しか貰ってないんですよ!」「その会社やめないほうがいいよ???」ってやりとりも生々しくて最高でした。
(2本目)
「靴下の裏ま~っくろなんだもん!!」の「音」の部分で笑いどころを生み出していて、圧倒的な演技力を2本目で改めて見せつけられた。女性ならではのいやらしい部分も、二人の演技で気持ちよく受け止められた。音声トラブルはクソ!!!!!!!!と思ったけど、会場にいた人たちは聞こえていたようでそこはホッとした。ほんといや~ね。

【やす子】
バラエティでお馴染みのやす子、果たしてどんなネタを……と気になっていたら思いっきりフリップ芸でかなり驚いた。フリップをめくるタイミングに???とはなるけど、回文と怪文の奇妙な点を伏線回収していく構成が面白かった。やす子さんは女性芸人というよりはもう「やす子」というジャンルの芸人なので、既にお茶の間に染み付いたキャラを改めて浸透させる役目を果たしたネタだった。

【ハイツ友の会】
去年のM-1グランプリ敗者復活戦から気になっていたハイツ友の会。漫才かと思いきやコントで最初は面食らったが、超絶面白かった。陶芸家の「内田(旧姓)」呼びにいつツッこむのかと思いつつ、ようやく生まれた大爆笑のツッコミが「なんで結婚できはったんですか?」。これはすごい。いろいろと変な人だな?と観客にじわじわ染みていた違和感を一発でスッキリさせる渾身の一言だった気がする。こういうセリフはもう女性芸人にしか言えないのでは?時代の進みをたしかに感じたセリフだった。よく考えるとコント中2人ともちょっとずつおかしいのも良い。ハイツ友の会の言葉選びの良さが存分に発揮されたネタで、個人的に今大会で一番好きでした。

【紅しょうが】
(1本目)
相撲ファン同士の女性というコントで、これまた女性の感性が光るネタだった。登場人物2人の「ファン」のスタンスの違いが、推し文化隆盛中の昨今にドンピシャでハマったような感じ。これを男性芸人が女装でやったらちょっと嫌味入る気もするが、女性が演じることで2人のファンのスタンスの違い、そのいい意味での生々しさが存分に笑いへ昇華されていた。今後もこういうネタでゲヒャゲヒャ笑いたいわね。「自分、幕下以上興味ないんで」はとんでもねぇキラーワードだった。「デビュー組には興味ない」みたいなもん???
(2本目)
「スカートがめくれている」だけで4分笑わせ続けられるのは、ひとえにキャラの強さがこのコントの大きな推進力だからであろう。「勢い」って大事だな。
おめでとうございます!!!!!!!!!!

【変ホ長調】
ゆったり和やかで、寝ながら聴きたい漫才。「手土産でセンスいいと思われたい」という着眼点がなんか可愛い。アベノマスクと花畑牧場がネタ内で共存するとは思わなかった。楽しんでる感じが好印象でした。

【梵天】
「ダイエットのアドバイス」という分かりやすい、かつ女性がやることでより面白くなるタイプの話題。実際面白かったんですが、ツッコミのお姉さんが終始キレてる表情だったので、見ている側としては常に緊張状態でなんか疲れたな……。緩急のずっと「急」の方の空気をまとっていた印象。もう少しほっこりする瞬間が個人的には欲しかった。ただ姉妹って顔似ててそれだけで面白いね。

【ゆりやんレトリィバァ】
絶対王者の空気があるので、どうしてもこちら側の期待値が高くなりがち。「エアーハムスター」がどうにも分かりにくかった……。最後の終わり方も「(ゆりやんで)その締めじゃ締まらないよ」と肩透かし感が否めなかった。最初にエアーハムスターのいるであろう透明のケージをバーン!と見せた、ああいった場面があと2個くらいあったら良かったです。個人的にですが。

【あぁ~しらき】
ゆりやんからあぁ~しらきのこの約20分間は『世にも奇妙な物語』だったんやね!と受け取りました(殴)。審査員の塚地さんが言った「いないハムスターよりも本物の角刈り」としか言えないな私も。

【ぼる塾】
改めて田辺さん・あんりさん・はるかさんの安定感はダテじゃないな~と実感。酒寄さんが生放送の場数を踏んであらゆるものに慣れてきたらすごいんじゃないか????ぼる塾ってちゃんと4人なんだと感じられた。正直驚きは一番あったかもしれない。もっと4人のネタが見たいので、ひな壇だけでなくネタ番組への出演増加も何卒。

【エルフ】
(1本目)
初めてガッツリネタを見たエルフ。ほかの番組で荒川さんって演技はそこまでなんだな(笑)と思っていたので期待値は別に高くなかったのだが、ギャルを活かしたネタでめちゃくちゃ自然で面白くてびっくり(失礼、ごめんなさい)。あとはるさんの声がめっちゃ通っていて気持ちがいい。はるさんが以前ネタ番組で「私はネタ考えないけど、その代わりなんでもやる」とコメントしていたのを思い出した。すごくバランスのいいコンビなんでしょう。単純なネタの巧みさだけでなく、「コントの中でバチバチのメイクを落とす」というのは女性だからこその「面白さ」が内包されまくっているのには脱帽と言わざるを得ない。「THE W」と銘打たれた大会で、勝負ネタとしてかけられた意味が最もあるコントだと思った。
(2本目)
「ホストを超えてくるギャル」という、またしてもキャラが全面的に生かされたネタ。面白いし存分に笑ったけど、この「ギャル」という要素を消費で廃れさせないためには、コント主軸の方がいいのでは?と思ったり思わなかったり。いや、それ差し引いても面白かったけど。

全体の感想

「もっと時間的余裕をくれないか」

出場芸人側のネタ磨き上げが進んでいくにつれ、運営の不手際が目についてくるのもある程度は仕方ないのかもしれないが……。
最終ステージのスパイクネタ中の音声トラブルはもとより、時間配分どうなってる??????と感じた。序盤から時間押してるって何……。あと申し訳程度にコメント振るだけとか、歴代のチャンピオンをお飾りにしないでくれよ……。もっと吉住や3時のヒロイン、阿佐ヶ谷姉妹のゆったりしたコメントが聞きたかったな~。改善求ム。

「『THE W』の存在意義をひしひしと感じた」

とはいえ今回は女性の感性が活かされたネタがたくさんあり、全体としては個人的にとても面白かった。最終戦に進んだ紅しょうが、スパイク、エルフ、さらにハイツ友の会など、「女性が作り上げるからこそ面白い」要素を感じたネタに好感を持った。
個人的に過去大会で一番好きなのは吉住の「女審判」であるが、当時「こういうネタが増えてくれたらいいなあ」と思っていたのが現実になっているようで、一視聴者として、また一女性として勇気づけられる。男性芸人の模倣で口悪く漫才をやっても、それって面白くないから。女性が女性に投げかける「それおかしいやろ」を「なんで結婚できはったんですか?」に集約させたハイツ友の会がやっぱり私の中でのMVPだった。

このジェンダーレスが声高に叫ばれている時代(雑なまとめ)に、「女性芸人ナンバーワンを決める大会」が開かれる理由はここにあるとさえ感じる。「女性の感性で磨きあげられたネタ」が、最もチャンピオンにふさわしいと選ばれ、さらに研ぎ澄まされていく。「THE W」はそういう大会であり続けてほしい。


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