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人類学的地域/5.大洋洲 地理的というより、むしろ人類学的であることが知られている。

『 ⚪︎インドネシア人種/マライ人種/インドネシア・マレー人種(東南アジアのモイ族とは同じ人種)


 「 ⚪︎原マライ人種/原始インドネシア人、一次マレーとも呼ばれる(長頭あるいは中頭型)[身長1.55〜160m、人類の平均以下であるが、ピグミーではない。皮膚は、程度の差はあるが淡い褐色である。毛髪は黒色で、直毛あるいは経度の波状毛である。概して中頭(示数平均78.5)、粗野な容貌で、張り出た頬骨を持ち、唇は厚く、鼻は平たいことが多い。眼は、ヨーロッパ人のように開いてはいないが、ほとんど常に蒙古皺襞を欠いている。
    ⚪︎マレー半島のプロト・マレー(オーストロネシア語族に属する先住民)
    ⚪︎マレー半島のセノイ(オーストロアジア語族に属する)
    ⚪︎ボルネオ中央のダヤック(ダヤックは大きく二つに分けられる。陸ダヤクと海のダヤク族(イバン族)である。

イバン族 ボルネオ


    ⚪︎フィリピンのイゴロト
    ⚪︎スマトラのバダック
    ⚪︎セレベスやモルッカ諸島のアルフロ

   ⚪︎デューテロ・マレー /二次マレー(短頭型)[身長1.60〜1.63m、皮膚は多少褐色であるが、黄色を帯びている。毛髪は直状、頭は明白な短頭で(示数の平均85)、頬骨が突出している。鼻は、プロト・マレー人ほど広くないが、平たいことは彼ら以上で、顔から突出していない。南蒙古人種と同様、顔の下半は、軽度の突顎を示す。眼はしばしば斜めで蒙古皺襞を持つ。また体全体は華奢で上品な様子をし、プロト・マレー人の頑丈なのと対照的である。起源は混然としているがともかくデューテロ・マレー人は、冒険的な民族としてふるまっている。実際にはインド文化の影響を受けたのであるが、ジャワの美しい文化は、実に彼らに負うものである。彼らは海洋生活者として、インド洋と太平洋を走り回った。そこで日本にも、ポリネシア、メラネシアにも見出される。キリスト紀元の初期数世紀来、彼らがマダガスカルに植民したことも忘れてはならない。]
    ⚪︎マレー人

    ⚪︎インドネシア人」』
 
 ⚪︎ポリネシア人種(大洋洋のポリネシア諸島が広がっている地域は広大である。北緯30度(ミッドウェイ島)から、南緯48度(ニュージーランド先端)にまでほとんど経線の約半分にわたる。また西経110度(イースター島)から、東経(165度(ニュージーランド)にわたるから、地球周囲の約4分の一となる。しかるに、マライ群島やメラネシアのもっと島に集中した群島で見られるのとは逆に、ポリネシア人は比較的同質なのである。すべてポリネシア人種という同一の人種に属し、人類学的特徴が、文化・言語的特徴と同様、島嶼間でわずかしか異ならない。ポリネシア人は背が大きく、皮膚が明白で、頭は丸く、ほとんどヨーロッパ人のような容貌をしている。
  ⚪︎ポリネシア人(身長の高い人々で、平均1.72mある。皮膚はオリーヴ色、強い黄色、あるいは茶がかっている。毛髪は常に黒く、直毛あるいは波状毛であるが、巻く傾向は全然ない。体毛は少ないが、髭は濃い。頭形は相当な変異を見せる。大部分は、頭蓋高く、短く、幅広く、短頭あるいは過短頭型である。この特徴は、とくに中央部のポリネシアで強調され、ハワイ人、タヒチ人では、示数が85に上る。これは、時に人工変形に帰せられたが、短頭を強めることはあっても、示数でいってただ一、二の違いだろうと思われる。西方では、示数がやや低くなるが、変化が真に判然とするのは、ニュージーランドであって、77になる。ポリネシア人の顔は卵形で、頬骨は突出することもある。鼻翼が幅広であるが鼻は突出し、直状で、そのためにヨーロッパ人とは異なり、顔の上に三角形を描いている。目は水平できわめて大きい。また目は蒙古皺襞の徴候を見せることが多い。唇は肉厚であるが、ヨーロッパ人ほどではない。頤ははっきりと形が定まり、突顎は存在しない。)

トンガの人々 ポリネシア


  ⚪︎ミクロネシア人(ミクロネシアを構成する諸島については大して言うことがない。その住民は非常に混血していて、低身長のポリネシア人の要素ー本来の意味でのポリネシア要素より、むしろ蒙古的特性を持つーと、メラネシア人の要素若干を含む。その結果、頭示数はポリネシアにおけるよりも低く78で、身長は低く、さらに濃色ということになる。だが、毛髪は直状あるいは波状で、眼が皺襞を有することも非常に頻繁である。

カロリン諸島民 ミクロネシア


 ⚪︎ネグリト人種/山の矮小黒人[ネグリトは、1.47〜1.50mという低身長の人々である。だからピグミーの範疇に入る。皮膚は濃褐色で、黒からチョコレート色まで変化する。毛髪に球状で、体毛はまれか、または欠如している。頭は短く、短頭または中頭、顔は丸く、突顎はごくわずかである。唇は中等度に発達しているが、外翻しない。鼻は幅が広いが、潰れていない。その突出の度も、ネグリロやアフリカ黒人よりも、ずっと顕著である。体の釣合はよくとれ、腕が長過ぎるとか、脚が短いとかいうことはない。]
  ⚪︎ベンガル湾のアンダマン諸島に局在するアンダマン人は平均身長は1.48mに下がり、短頭が目立つ(示数83)。非常に原始的な文化祭を持ち、全人類の中で、火の作り方を知らぬのは彼らだけである。その知恵といったら、現在所有しているものを維持することに限られている。アンダマン人は1858年には、約5000人を数えたが、今日数百人に減ってしまった。たった一種族だけが、少人数にもかかわらず、依然活発である。すなわち南方の島々にいるジャラヴァ族で120人くらいと思われる。異人種と接触することに猛烈に反対して、上陸しようとする者には毒矢を放つ。
※オンゲ族とジャラワ族のY染色体ハプログループはD1a2b (Y34637) である。
  ⚪︎マライ半島の密林に住むセマングで、多かれ少なかれ混血しているが、やはり非常に数が少なく、ほぼ2000人である。
  ⚪︎本来の意味でのネグリト、すなわちアエタは、ずっと多数で、フィリピン群島の山地、主にルソン島中央を占めている。約3.6万人の人口を有し、その7分の1がかろうじて混血をまぬかれている。身長は低く(1.47m)、頭は丸い(示数82)。

 ⚪︎カーペンタリア人種(オーストラリア人種で典型的な原始人種。オーストラリア大陸北部のカーペンタリア湾から命名)[オーストラリア人の身長は、やや人類平均を上回って1.65〜1.66m、北にゆくとさらに高くなる。皮膚は、小児では淡褐色で、成人ではチョコレート色になるが、けっしてアフリカの黒人のような色にはならない。毛髪は、巻き、波打っているが、若干の学者のいったように球状であることはけっしてない。髪は例外を除いて常に黒い。黒人や黄人と違って、体毛がよく発達し、ひげもヨーロッパ人と同じように生える。頭はきわめて特殊である。常に長頭で(示数72〜75)、頭蓋は低く、額は後退して、その下に眉上弓が一種の庇のように突出する。その下の目とか鼻根は深く窪んでいるようにみえる。これが人相に、きわめて特徴のある野蛮な様子を与えている。鼻は平たく非常に広く、鼻孔も同じである。唇は厚く、頤は後退し、ある程度の突顎を示すことが多い。付言すれば、オーストラリア人の身体は、細く、骨盤が狭く、非常に脚が長い。)

アボリジンの子供たち


 ⚪︎タスマニア人種(タスマニア島に住んでいた黒色人種の一種で1876年に最後の一人が死んでしまった。)

消えたアボリジン タスマニア


『 ⚪︎メラネシア人種/大洋洲黒人 (ニューギニア・ビスマルク諸島・ソロモン諸島・ニューヘブリデス諸島・ニューカレドニア・フィジー群島などオーストラリアの北方・北東地域に分布その地域をメラネシアという。メラネシア人の身長は変異に富む。たいていの場合、1.60〜1.65mの間に変動するから、人類平均よりも低いわけである。身体はずんぐりして四肢は頑丈である。皮膚は黒く、赤褐色からチョコレート色にわたる。毛髪はアフリカ黒人のように球状であるが、黒人では非常に短くて頭にへばりついているのに対し、彼らのは長く逆立って、真の羊毛といった感じを持っている。他の特徴は、彼らの毛は、二歳から五歳になってはじめて巻きはじめることである。しかるにアフリカ人では、生まれてすぐにそうなる。そのことから、大洋洲黒人の《球状毛》は、アフリカ黒人よりもずっと近代になって生じたと結論された。時には、毛がただ波状のことすらある。頭はたいてい長頭であるが、これも変異がはげしく、短頭も見られる。頭蓋は高く、額は多かれ少なかれ後退している。その下には眉上弓が、オーストラリア人のように突き出していることがある。顔は粗雑でがっちりとし、やや長めで、多少の差はあれ突顎である。唇は厚いが外翻せず、頤は後退する。鼻の形も実にまちまちで、非常に幅広、鼻梁が凹状で鼻根が額の下に落ちこんでいるかと思うと、逆に鼻梁が凸状で、セム型といってよいほどの突出を示す個体もある。こうした特性は、黒色諸人種では例外的である。メラネシア人種が非常に多種多様であるので、彼らの中に二つの亜人種をもうけた。)

フィジーの人々 メラネシア


 「 ⚪︎東部メラネシア亜人種(もっと新しく、身長が勝り、毛の球状の度弱く、群島のその他の地域に住むことが多い。これが鼻の広い、本来の意味での《メラネシア人種》である。

ソロモン諸島民 メラネシア



   ⚪︎パプア亜人種(比較的原始的で、身長低く、ニューギニアや隣接島嶼に局在し、鼻の凸状に特徴がある)

ジャレ族 ニューギニア高地



    ⚪︎変種メラネシア・ピグミー人種(内陸山地や海岸の狭い地点に極限された数群によって代表されるにすぎないが、非常な低身長で区別される。
     ⚪︎ナッソー山脈のタピロ(身長1.45m)
     ⚪︎ゴリアート山脈のピグミー(1.49m)
     ⚪︎ザッテルベルクのピグミー(1.46m)がある。

⚪︎タサデイ族⭐️世界がはじめてタサデイ族のことを耳にしたのは1971年の中ごろであった。

タサデイ族 ミンダナオ島

※参考文献 
人種とは何か 著者寺田和夫 岩波新書 1967年
人種 (著者アンリ=ヴィクトル・ヴァロワ 訳者寺田和夫) 白水社 1971年
モンゴロイドの道 朝日新聞社 1995年
「民族」で読み解く世界史 著者宇山卓栄 日本実業出版社 2018年
世界民族辞典 弘文堂 平成12年
世界民族言語地図 東洋書林 2000年
世界の民族全20巻 平凡社 1979年
中国少数民族辞典 東京堂出版 平成13年

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