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彩鮮やかなアルマトイの小旅行

空港で乗り込んだタクシーが走り出してすぐ、窓を開けた。手でハンドルを回す古いタイプの車だ。こんな車久しく見ていないなと、旧ソ連の国であった場所に来たという実感を早くも持ちながら街を眺める。顔をさらっていく風が気持ち良い。強い日差しに照らされる木々がきらきらと光っている。

「街中でも緑が多いな」

これが、今回訪れているアルマトイに着いてすぐの初めての感想だった。

アルマトイはカザフスタンの昔の首都だ。カザフスタン国内では南部に位置し、近くにキルギスや中国の新疆ウイグル自治区がある。カザフスタンについて、これまでの人生でとくに意識したことはないし特に行ってみたい場所があるわけでもなかった。たまたまGWのわりには安いチケットがカザフスタン行きだったから購入しただけだった。

チケットを買ってから本格的にしらべはじめると、どうやらシルクロードに近かったりずっと行きたかったウズベキスタンのサマルカンドまで行けそうだという算段ができたりと、少しずつ旅の輪郭が形作られていった。

ということなのでアルマトイでは宿泊の予定はなく、お昼過ぎに到着し夜にはウズベキスタンへ飛んでしまうことに決めていた。半日ほどのスモールトリップ。

街の中心部に着いた。あまりリサーチはしていなかったが、半日を使ってやることは何かなと考えて、以下のようなプランを立てた。

・ロシア正教の立派な教会を見に行く
・カザフスタンかロシア料理を食べる
・ロープウェーに乗って高いところから街を眺める

ゼンコフ教会の圧倒的異文化体験

街の中心にあるパンフィーロフ公園は平和感で溢れていた。木々が生い茂り、木漏れ日が道を照らし、子どもたちが鳩に囲まれてはしゃぎ、大人や老人たちがそれを見つめる。ああ、なんだかすごく心地の良いところに来たなと感じながら歩みを進めると、大きくてカラフルな建物が姿を現した。

ゼンコフ教会だ。

ロシア正教の教会で、フィリピンやスペインで見てきたような教会とは大きく雰囲気が違っている。黄色を基調にパステルカラーで彩られ全体的に明るいオーラをまとった教会だ。てっぺんには玉ねぎ頭の小さな屋根がついていてかわいらしい。ディズニーランドにあっても全然おかしくない、メルヘンチックさがあるなと思った。

周りには観光客とおぼしき人よりも、地元出身だと思われる人たちで賑わっていた。

中に入ると、人がたくさん集まっていて、正面を囲んでいた。すると前の方から黒い衣服を全身にまとった牧師さんのような人たちが出てきて挨拶をはじめた。牧師さんの呼びかけに対して、集まっている人たちが一斉に何がを話し、やがてオペラの歌声が教会内を響き渡った。おそらくロシア正教のミサのようなものなのだろう。戸惑いを隠せないまま観察をしていると、みんながろうそくを持って牧師さんから火をもらいはじめた。

教会内にはざっと150人くらいの信仰者が手に火を灯し、祈りを捧げている。すごく軽い気分で中を見てみようと入った自分にとっては、あまりにも異様で異文化を感じる光景にびっくりして、そそくさと出てきてしまった。このあともっと何が起きるか見ていたかった気持ちもあったが、未知の体験に怖さを感じたのも事実だ。

中はすごくきらびやかな装飾で飾られていた。人もめちゃくちゃいた。

窓がすごくきれいだった。ステンドグラス?といってもこれまで見てきたカトリック教会では見たことのない配色だった。

初めて?のロシア料理に舌鼓

ゼンコフ教会を出てすぐそばにロシア料理屋さんがあったので入ってみた。『Гости(ゴスチ)』という名前のお店だ。

装飾がキレイで映える。店員さんが英語しゃべれたので、なんとか注文ができた。

まずはサラダかなと思い、サラダの欄の一番上に書いてあったのを頼んでみた。豆と人参?とかが入っていて、酸味としょっぱさが一緒に来る味。すごい美味しい!ってわけじゃないけど、前菜として好きな味だった。

ロシア料理といえばボルシチかなと思い頼んでみた。ボルシチってあんまりよく知らなかったが、どうやらスープだったみたい。上に乗っているのはサワークリームとディルという香りのある葉っぱ。スープ自体を近くで撮れていないけど、深い赤とピンクの混ざったような色で、中には牛肉や玉ねぎ、キャベツが入っていたような気がする。めちゃくちゃ美味しい。こんな美味しいスープを24年間見逃していたのかと思うくらいだった。付け合せのパンもカリカリでスープにつけて食べるとこれもまた美味しい。

続いて頼んだのはキエフ風カツレツ。普通にパン粉をまぶしたチキンカツレツかなと思って食べたが、これもまた美味しい。

中にはボルシチの上に乗っていた葉っぱが入っていて、いい香りが足されていた。

お腹いっぱい食べてビールとかもウォッカみたいなのも飲んで2,000円くらいだった気がする(ウォッカは想像以上に強すぎて全然飲めなかった)。お手頃価格てロシア料理を楽しめたし、かなりいいお店選びできたと思う。

街歩き〜KOK TOBEからの夕日を眺める

そろそろ日も傾いて夕方になってきたので、歩いて次の目的地に向かうことにした。

ほんとうに緑が多い街で、とても歩くに適しているまちづくりがされていた。

高い建物もたまにはあるが、高くてもこれくらい。

なんだか旧ソ連感のある古いマンションもいろんなところで見かけた。背の低い香港のマンションみたいで個人的には好み。

車道はとても広い。

おそらく天山山脈?が見える。平地にはない雪が稜線には残っている。

ここからロープウェーに乗る。行き先は『KOK TOBE』というところ。コクトベと読む。

箱根で乗ったことあるようなタイプの車体だった。片道300円くらいかかった。

徐々に上がっていく。結構高いし、スピードも早いので高所恐怖症の人には無理だと思う。

頂上に着いた。頂上は意外と広くて思ったよりも栄えている。観覧車があったり動物園があったりアトラクション系がいくつもある。結構クオリティが高いものばかりで驚いた。

なぜかTHE BEATLESの銅像もあった。丸っこく可愛くデフォルメされている。

夕焼けの時間になると、人が景色が見えるところへ集まっていく。

東京近辺では地平線に沈む夕日ってなかなか見られないし、これだけ遮るものがない中での夕日を拝むのはとても貴重な体験だった。

帰りのロープウェーから見る夜景もキレイだった。カザフスタン人5名の女性グループと同じ車両に乗ってしまってとても気まずかった。とにかく英語は通じないので、ずっと外を眺めていた。

あんまり期待していなかったけれど、広大なカザフスタンな大地を高い標高から見られるのは圧巻の一言で、いつまでも見続けたくなる景色だった。とくに夕日が徐々に下がっていくのを目視で観察できることはそうそうないので、わざわざ上ってよかったなと思う。

半日のカザフスタン観光で感じたのは、途上国ではないけど先進国でもないこれまでに体感したことのない都市だなということ。高層ビルがめちゃくちゃあるわけでも、外国人がたくさんいる国際都市でもないただの地方都市のような佇まいだけど、顔立ちはロシア系の人が多かったので、洗練されている雰囲気もある。これまで訪れたフランスやスペインやシンガポールや香港、そのほかの東南アジア諸国とはいろいろと違う。また新たな世界の引きだしが増えた感覚をたしかに得られた。

今回訪れたところ以外でわかりやすい観光地はとくにないので、わざわざ観光しにいくほどでもないけれど、街自体落ち着いていて、住むにはいいんだろうなと思った。

このあとはアルマトイからウズベキスタンの首都タシケントへ飛び、電車でサマルカンドへと向かった。

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