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『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』の書評

人間関係の構築において自己開示が大事だということは周知ですが、それをチームだけでなく会社全体のカルチャーとして実践できているところはどれだけあるのでしょうか?

ぼくは自己開示が苦手なので、組織論の本だけれど自己啓発の意味合いでも読めればと思って購入したのが本書。タイトルが印象的で、知っている人も多い本だと思います。問題提起はタイトルどおり、「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」。具体的な3社のモデルケースとその共通点、そのための個人的成長のステップ、などなど、盛りだくさんの内容です。

今回はその中から、表題のなぜに答える要素を紹介しつつ、本書で紹介されている「自分の死角をあぶり出すための最も手っ取り早く、最も強力な方法」を実践してみたので、紹介します。

個々人の成長を重要視する組織カルチャー「発達指向型組織」とは?

本書の核となるのは、発達指向型組織(Deliberately Developmental Organization:DDO)という組織のあり方。会社の成長にはメンバーの成長が欠かせないという大前提を持ち、一般的な組織とは一線を画す組織体です。DDOで大事なのは発達という概念であり、以下のように定義されています。

・はっきりと確認できる現象である
・強烈な科学的土台がある現象である
・ビジネス上の価値がある現象である

日本の多くの組織では仕事とプライベートが分けられているので弱さを積極的に出すというカルチャーは中々ないと思いますが、DDOは真逆です。本書の中に、「痛み+内省=進歩」という記述がありますが、弱さを認識しその根本となっている無意識的な固定観念を疑い、取り壊して次のアクションを起こすことで、新しい価値観を持つ人間になれる。それが人間的な成長であり、そういった支援を継続的に積極的におこなっていくのが、DDOの特徴なのです。

DDOを実践することによる組織に対しての好影響

DDOの概要をお伝えしたところで、それがなぜいいのかについても紹介します。

①人間的成長につながる

前述ですが、とても大事な考え方です。仕事に慣れてくるとルーティンを回すことが増えるので、相対的に初めて尽くしの頃よりも成長実感する場面が圧倒的に減ります。しかし、人は取り組み次第で成長し続けられます。DDOでは、環境順応型知性、自己主導型知性、そして自己変容型知性という3つのステップで、人間的成長を説明しています。

②境目をなくしてありのままでいられる

多くの場合、仕事とプライベートは分かれているため、すべてをさらけ出して職場で人間関係を築けている人は少ないと思います。つまりそこにはありのままの自分ではない、仕事用の自分を演じている自分が存在しているのです。弱さを見せあえる組織では、職場だからって自分を取り繕う必要がありません。気分を楽にいつもどおりいることで、コトに向かうことができます。

③良い関係性をベースにしたチーム構築

ありのままの自分でいられる組織であれば、人間関係においても無駄な調整や駆け引きが行われにくく、消耗することがありません。日本では特に顕著だと思いますが、周りに気をつかって早く帰るのを遠慮したり、嫌々な飲み会に参加したりと、昔ながらの慣習が依然として残っています(もちろん、若い会社ではあまり見受けられませんが)。弱さを言い合える組織、すなわち本気で接することの人間関係の中では、そういった無駄な遠慮や気遣いが必要ないため、ストレスフリーなコミュニケーションを築けます。

④成果を出せる

「偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる」と、あるデザイン会社は掲げていますが、本音を言い合い、強みを伸ばして弱みを改善・補完し合えるチームであれば、アウトプットまでの道のりが最適化されます。無駄な忖度をする必要なく、コトに向かえるからです。一見すると、互いの成長に対して時間を使っているがゆえにメイン業務の時間が少なそうですが、生産性という観点では、圧倒的にこちらの方が良いです。

どうやって弱みを認識するの?

ここまでDDOが組織にもたらす好影響について、項目ベースでお伝えしてきました。「弱み」という言葉を何度も使っていますが、向き合うのは容易ではありません。人が弱みを持っているということは、これまで長い間向き合えてこなかった原因があるからです。そしてそれは、恐怖や不安といったネガティブな感情や思い込みから生まれているものなので、進んで立ち向かおうとすることが難しいのです。

本書では、弱みをあぶり出し、向き合う手段として「免疫マップ」という方法を紹介しています。人が成長するにあたって、それを妨げている固定観念をあぶり出すプロセスのことで、強制的に「自分が向き合いたくない感情」と向き合うよう設計されています。

(免疫マップの雛形、本書を参考に筆者作)

免疫は変革における天敵です。免疫に打ち勝つ方法を見つけ出すには、自分の変革を阻む免疫がどのように機能しているのかを言葉にしていない潜在的感情から紐解き、そのベースにある固定観念をあぶり出す必要があります。

ぼくも実際にやってみました。

ぼくは、いい人であろうとするが故に、自己開示して信頼をベースにした人間関係の構築が難しい、という課題があります。ですので、1.改善目標を「他人の評価に囚われず、自分をさらけ出してありのままの自分で生きたい!!!」としました。

続いて、改善目標の達成を阻害している行動を具体的に書き出します。例えば、「みんながいる前では自分の話をしたがらない」だったり「相談ができない」、「頼まれたら断れない」「怒らない、反抗しない」などといったものです。これが2.阻害行動。

3.裏の目標を書き出すために、阻害行動と逆の行動を取ったときの自分の感情を言語化します。例えば、もし「みんながいる前で自分の話をする」ことを想像したら、お前の話なんか興味ないと思われることを恐れます。「人に相談する」ことを想像したら、相手の時間を奪って申し訳ないという気持ちがわきます。このようにして、不安の感情を言葉にしていき、なぜそう感じてしまうのか、裏の目標を洗い出します。「できるやつだと思われ続けたい」「他人からの評価を下げたくない」「自分だけ劣る状況を避けたい」などなど。こういった裏の目標を持っているために、課題だと認識している阻害行動を取ってしまうんですね。なるほど。

そして、それらを支えている4.強力な固定観念を導き出します。「ダサさを露呈することは、人からの評価を下げるものである」だったり「人に貢献していないと、自分はこの世に必要ない」だったり、「人間関係のすべては他人からの評価である」だったり。それはもう、極論を信じ切っています(笑)。が、自分の中では口にはしていないもののすべて納得感のあるものばかり。でも、それらって全部疑うべき固定観念であることがわかるので、それらをひとつずつ崩していく行動を日常に取り入れていく。

このようにして、弱みを自己認識し、改善する努力をおこなっていくんですね。

さいごに

忙しい中でも人の成長を自分ごととして捉えることは、中途半端な覚悟ではできないと思います。弱みと向き合うということは、優しさだけでは立ち向かえません。ときには残酷とも言えるくらい人の弱みを伝え、それでも愛を持ってその改善のために支援をする必要があります。しかし、成果を出し続ける組織になるためには、個々人の成長が欠かせないのです。

もし、自分が組織を作る立場になったら、弱さを見せあえるチームを作ってお互いの成長にコミットするような関係を築いていきたいです。

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