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自虐的な”師匠”(藤井八冠の杉本師匠)のエッセイ本と、先日の王座戦で逆転の瞬間を見逃した記者さん達の”瞬間”。

今、「師匠」と聞いてすぐ思い浮かぶのは杉本昌隆師匠、という人も多いのではないでしょうか(^^)。
週刊文春の、2021年4月8日号から2023年4月27日号までの連載が6月に出版されてます。
師匠のユーモラスな文章も楽しいですし、連載開始時は藤井八冠が二冠だったことも隔世の感 ( ゚Д゚)。

そして、先日の王座戦は、不肖私もAmeba中継を見ていました。
私はよそ見をしてて永瀬王座の最期の”苦悩の瞬間”=藤井八冠誕生の瞬間 を見逃して残念に思っていたのですが、なんと記者さん達は永瀬王座が勝つと確信してコメントを取るために移動したエレベーターの中だった!
心中、察するに余りありすぎます (-ω-;)。

これは私の妄想ですが、永瀬王座も記者さん達も「今日は決まった」と思った「空気感の隙」に、藤井七冠の”鬼気迫る執念”が入り込んで勝ちをさらっていったのでは、と感じます。
および私ですら持っていた「藤井七冠の勝利」という、多くの人達からの期待が入り込んだのでは、と。

人智を超えた「何か」の存在を、感じた瞬間だったように思います。

うつむいた藤井聡太は激闘の跡が残る将棋盤を見つめていた。見たことがないくらい青白い顔色をしている。撮影はフラッシュが禁じられているので表情はわからないが、喜びがこぼれている様子はうかがえなかった。

将棋界初の八冠制覇の感想を主催紙の記者に問われると、
「見合った力があるかというとまだまだだと思うので、引き続き実力をつけていくことが大事かと思っています」
と小声で話した。今しがた、将棋界を手中に収めた人間のコメントとは思えなかった。藤井の顔はますます白くなり、透き通るかのようだった。

(略)

終局間近と見られ、報道陣は控え室から対局室のあるフロアに向かった。日本将棋連盟のモバイル中継の期待勝率は藤井0%、永瀬100%を示している。藤井玉には詰みが発生していた。エレベータを降りて、対局室に近づく。終局するとすぐにコメントを取らなくてはいけない。

すると誰かが「あれ?」と疑問を発した。手にはスマートフォンが握られており、将棋盤が映っている。そして「逆転だ!」と叫ぶ声が聞こえた。

意味がわからずに自分のスマホを見ると、今度は永瀬の期待勝率が2%、藤井が98%と大きく変貌していた。永瀬が詰みを逃したのだ。

「こんなことがあるのか」

誰かがうめくと、私は「またか」と嘆息した。第3局も永瀬勝勢を見て報道陣が対局室に近づいた時に逆転が起こったからだ。

もうひっくり返ることはなかった。皆が静まり返り、八冠がなることを噛みしめていた。永瀬が投了し、報道陣が対局室に入室した。そこには凍り付いたような表情の藤井と、ため息を漏らす永瀬がいた。将棋の歴史が動いた瞬間だった。

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