見出し画像

6 気象現象(29/51問)仮公開


1 令和5年度第2回(通算61回)問8

知識事項の確認

 南北の熱輸送に関する問題です。頻出であり、計算問題は多分ないので確実に解けるようにしましょう。

 赤道付近では太陽放射量が多いため、正の熱収支となり、極付近では負の熱収支になります。そのため、赤道付近から極方向へ熱輸送が発生し、各種気象現象が発生するのです。

 このパターンの問題では、グラフの読み取り方が重要です。(a)を参考にしっかりと理解しましょう。

(a) の検討

 北緯40°より高緯度のある地点では、その地点より少し南の北向きの熱輸送量が、その地点の北向きの熱輸送量よりも大きくなっています。つまり、南から押し寄せる熱の方が、北へ送る熱よりも多く、熱収支としては正になっているのです。そのため、この地点は加熱されています。よって「正」が正解です。

(b) の検討

 知識として覚えるほかありませんが、亜熱帯高圧帯では、降水量よりも蒸発量の方が多いです。「高気帯」なのでここはイメージしやすいと思います。

 問題は、蒸発した水つまり水蒸気(潜熱)は亜熱帯高圧帯からどこへ向こうのかということです。グラフを見ると、20°付近は南北に潜熱が輸送されていることが分かります。実際、亜熱帯高圧帯の潜熱は南北に輸送され、北上したものは温帯低気圧や前線の原因になり、南下したものは熱帯収束帯における積乱雲の種になります。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 設問のグラフの通り、赤道から極側に海流による熱輸送が生じています。よって、「正」となります。

 以上より「③」が正解です。


2 令和5年度第2回(通算61回)問9

知識事項の確認

 今回は竜巻に関する出題です。超頻出なので、しっかりと覚えましょう。気象現象の分野は知識量勝負です。聖典を読み込んで対応すべきです。

 竜巻の基礎知識については以下を参照しましょう。

 今回関係するところと言えば、竜巻発生のメカニズムです。竜巻は積乱雲に伴う強い上昇気流に伴って発生します。また被害域も数十キロメートルに達したこともあります。

 また、頻出の割には参考書等で実際の画像が何故か紹介されないフックエコーですが、これも聖典で一度確認すれば脳裏に刻まれます。

 他にも、竜巻発生時特有の現象は頻出なので、一度は目を通しましょう。

(a) の検討

 竜巻は積乱雲に伴う強い上昇気流に伴って発生します。日射による地表面の過熱では発生しません。よって、「誤」となります。

(b) の検討

 竜巻の被害範囲は時に数十キロメートルに達します。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 スーパーセルに伴う竜巻は、フックエコー付近に発生することが多いです。必ず聖典で実物を確認してください。「正」となります。

(d) の検討

 コリオリ力が原因でいつだって回転方向は一定だ、なんて騙されないでください。いずれの回転方向にもなり得ます。よって「正」となります。

 以上より「④」が正解です。


3 令和5年度第2回(通算61回)問10

知識事項の確認

 主に成層圏に関連する気象現象についての問題です。苦しいですが、知識を定着させましょう。

(a) の検討

 準2年周期振動(QBO)に関する説明です。準2年周期振動は赤道付近の成層圏における現象で、東風と西風が約2年周期で変動します。また風向の変化はより上空から起こります。よって、「正」となります。

 必ず聖典に目を通しましょう。

(b) の検討

 まず、プラネタリー波について説明すると、これは極を中心とする対流圏における大規模な大気の循環です。原因は、チベット高原やヒマラヤ山脈のような物理的障壁による力学的効果や、大陸と海洋の温度差などです。南北に波打つ等高度線として観測され、その名前の由来通り、波長が惑星規模(プラネタリ)の超長波です。

 この対流圏のプラネタリー波は成層圏にも伝播することがあります。条件としては、「成層圏の緯度線に沿う平均風が西風の時」となります。東風の場合は伝播しません。具体的に見ると、北極圏の夏の成層圏は高気圧であり、東風の循環になっているため、プラネタリー波は伝播してきません。そのため、北極を中心とする綺麗な同心円状の等高度線になります。反対に、冬は低気圧のため西風の循環であり、プラネタリー波が伝播します。結果として等高度線はプラネタリー波の影響により南北に波打つことになります。

 よって、「正」となります。

(c) の検討

 成層圏の温度傾度は上層ほど大きくなります。私の覚え方としては、「上空の方がオゾンと紫外線(敵)によって加熱されやすい」としています(理屈が正しいかは不明です)。よって、「正」となります。

(d) の検討

 ひっかけ問題です。確かに、夏極の成層圏は紫外線によるオゾンの過熱により、温度は極大となります。しかし、中間圏では逆に極小となります。よって「誤」となります。

 以上より「④」が正解です。


4 令和5年度第1回(通算60回)問8

解法の確認

 温度風及び気圧傾度に関する問題です。最初に断りますが、本問題は不備があったため全員正解となっています。そのため、以下の解法はあくまでも参考程度のものです。また、難易度は私の知る限りでは最高クラスの問題ですので、とりあえず解説が理解できれば良いと思います。本番で出題されたら焦りそうです。

 まずは風速から絞り込みます。風速は気圧傾度に比例するので、等圧面の傾きが大きい方が、風の記号が大きくなります。この時点では全ての選択肢が問題ありません。

 次に、風向を考えます。北半球では低気圧を左に見て風が吹きます。このことから、(a)、(b)、(e)が適合します。

 更に、温度風の関係と矛盾がないかを調べます。温度風は、あくまでも風のベクトル差で定義されていることを思い出しましょう。つまり、本問題では上下の風の記号をもとに、温度風=上の風-下の風、として考えるのです。等圧線の間隔(層厚)とその層の平均気温は比例する(温度と空気密度と大気圧の関係を思い出しましょう)ことに注目します。そうすると、(a)の温度風は西風となりますが、温度風は高温域(層厚の大きい)を右に見て吹くという性質を満たしています。(b)も同様です。(e)は温度風がやや分かり難いですが、西風となります。したがって、層厚の大きい側を左に見ているため矛盾しています。

 最後に等温位面ですが、先に温位の公式を眺めてみましょう。

$$
θ=T(\dfrac{P_0}{P})^{0.286}
$$

 この公式を見ると、温位は等圧面上では気温に比例することが分かります。

 また、平均すれば温位は上層ほど大きくなります(そうでなければ大気は常に不安定で困ります)。

 以上を踏まえて(a)を見てみると、等圧面の北側は温位が低く、つまり温度も低いことが確認できます。これは、温度風の関係と矛盾しません。次に(b)ですが、上の等圧面は北側の方が温位が低いように読み取れますが、下の等圧面は等温位線と平行なので何とも言えません。全体としては(b)も矛盾がないのでしょうが、選択肢には(a)、(b)を正しいとするものはありません。

 以上より「①」が正解です。


5 令和5年度第1回(通算60回)問9

知識事項の確認

 成層圏に関連する知識を問う問題です。「令和5年度第2回(通算61回)問10」に似た問題です。

(a) の検討

 成層圏の温度を決定するのは紫外線によるオゾンの分解に伴う昇温です。夏極は紫外線の照射量が多い(「令和2年度第2回(通算55回)問5」参照)ので、当然の温度も高くなります。よって、「高く」となります。

(b) の検討

 (a)の解答から必然的に高気圧であると分かります。空気の密度が低く、層が厚いため同じ高度で比較すればより上層により多くの空気が存在することになるからです。よって、「高気圧」となります。

(c) の検討

 (a)と逆の論理です。よって、「低く」となります。

(d) の検討

 (a)及び(b)と逆の論理です。よって、「低気圧」となります。

(e) の検討

 これはややひっかけ的な問題です。恐らく、多くの人にとって「アリューシャン低気圧」という言葉は聞き覚えがあると思います。

 このアリューシャン低気圧というものは、冬の典型的な気圧配置として覚えておくべき現象なのですが、これはあくまでも対流圏における話です。実は、成層圏には「アリューシャン高気圧」とでも呼ぶべき高気圧が出現することがあるのです。設問で述べているのはこちらの方です。よって、「高気圧」となります。

 以上より「①」が正解です。


6 令和5年度第1回(通算60回)問10

知識事項の確認

 大気境界層に関する問題ですが、このテーマは個人的にかなり手ごわいと考えています。

 大気境界層とは、地表面付近のごちゃごちゃっとした辺りのことを指します。つまり、建築物や森など、地面の複雑な形状による影響を受ける層が大気境界層であり、それより上層は自由大気と呼ばれています。

 この大気境界層では、風が摩擦の影響を受ける高度でもあります。つまり、等圧線を横切る風が吹きます。そして摩擦の大きさは地表面から離れれば離れるほど小さくなり、自由大気では0となります。そうすると、風が等圧線と交差する角度も上層ほど小さくなり、やがて平行になります。そのため、風向が螺旋状に変化し「エクマンらせん」と呼ばれています。

 さて、大気境界層は地上数十mの接地層とそれより上の対流混合層(エクマン層)に分けることができます。また、都市や森林の周りは複雑な地形により大気の性質が異なるため、キャノピー層と呼ばれています。

 このように大気境界層は、単純な地衡風や傾度風で表現することが難しい複雑な層となっています。複雑さゆえに大小さまざまな渦(乱流)が存在し、この乱流により空気がよくかき混ぜられており、温度、温位、相対湿度、混合比、風速の鉛直分布が特徴的な分布(お手元の参考書で確認してください)になっています。これをグラフで覚えることはかなり難しいので、定性的な理解とともに覚えることをお勧めします。

※温度、温位、相対湿度、混合比、風速に関する基本的な理解が必須です

(a) の検討

 難問です。私の解説も正しいのか自信がありません。そして先ほど「大気境界層における様々な物理量の鉛直分布をグラフで覚えるのは難しい」というようなことを書いておりましたが、本設問に関しては覚えていないと解けません。

 実は、温位は接地(境界)層では高度度ともに低下します。このことが気温とどう関わっているか考えてみましょう。もし温位が高度とともに一定なら、乾燥断熱減率であると言えます。これは温位の定義から明らかですね。しかし実際は高度とともに温位が増加していますが、これは気温減率が平均して6.5℃/kmと、乾燥断熱減率よりも小さいからです。そうすると、温位が高度とともに減少する場合はこれと逆で、乾燥断熱減率よりも大きい気温減率であると考えられます。よって、「誤」となります。

(b) の検討

 接地逆転層は、風のない晴天の夜に、地面が長波放射によって冷却され、それに接する空気の温度が低くなる一方、上層は暖気がそのまま残留するため発生する温度逆転層のことです。基本ですので、知らなかった人は参考書を通読し直してください。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 混合比、つまり単位体積当たりの水蒸気量は、対流混合層はその名の通り空気がよく混ざっているため一定となります。さて、混合比が一定であれば水蒸気圧も同一大気圧(対流混合層は概ね大気圧は一定と見なせます)であれば一定となります。

$${w=0.622\dfrac{e}{p}[kg/kg]}$$(e:水蒸気圧 p:大気圧)


とすると、ほぼ一定の水蒸気圧に対して上層ほど気温が下がる、つまり飽和蒸気圧が下がるのなら、相対湿度はどう変化するでしょうか。もちろん、低下します。よって、「誤」となります。

(d) の検討

 これも難問というか、覚えていなければやや厳しいです。あえてイメージで理屈をこじつけるのなら、接地層は地上ほど障害物が目立つため高度が上がるにつれ風が強くなるが、対流混合層にまで達すると障害物はないので風速が安定し始める、という感じでしょうか。よって、「正」となります。

 以上より「⑤」が正解です。


7 令和4年度第2回(通算59回)問8

知識事項の確認

 本低気圧に関する基本的な知識を問う問題です。確実に解けるようにしましょう。温帯低気圧は実技試験の頻出テーマでもあります。

 ただ、温帯低気圧そのものに関して深く理解することはかなり難しいとので、沼にはまらないように注意してください。実際、温帯低気圧のモデルは複数存在しています。そしてどこまで理解すれば良いのかと言うと、私の考えでは過去問が解ける程度、だと思います。

(a) の検討

 温帯低気圧の気圧の谷の軸は上昇するにつれ西に傾きます。この傾きは、温帯前線の発達期に最大となり、最盛期ではほぼ鉛直となり傾きがなくなります。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 温帯低気圧が発達するメカニズムは、南北に接した暖気と寒気が混ざり合う過程として説明されます。この際、寒気が暖気の下に滑り込むのですが、これは位置エネルギーが運動エネルギーに変換される過程でもあります。したがって「誤」となります。

(c) の検討

 大気圧とは、その地点より上にある空気の重さでした。発達した低気圧は、気圧が低いため上層の空気の量が少ないと言えます。つまり、大気の層厚が薄く、対流圏界面も周囲より低くなります。したがって「誤」となります。

 以上より「⑤」が正解です。


8 令和4年度第2回(通算59回)問9

知識事項の確認

 ガストフロントに関する出題です。パターンはほぼ決まっているので、覚えるべき事項も限られています。得点源にしましょう。

 ガストフロントとは、簡単に言えば積乱雲の冷たい下降流によって発生する気象現象です。重たい空気の塊が地面にたたきつけられて、円弧状に広がります。この空気が暖かい空気を押し上げることにより、小規模な前線(上昇流)が発生します。これがガストフロントです。

 特徴としては、重たい空気が叩きつけられるためガストフロントが通過する際は気圧が上昇します。また、前線に伴ってアーチ雲(アーク状雲、アーククラウド)と呼ばれる特徴的な雲が形成されます。かなり不気味な雲なので一度調べてみてください。また、到達距離は結構大きく、数十から100km程度となります。

https://www.data.jma.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20120427.pdf

(a) の検討

 ガストフロントの説明そのものです。したがって「正」となります。

(b) の検討

 冷たく重たい空気が通過するので、気圧が高くなります。したがって「誤」となります。

(c) の検討

 衛星画像で見えるくらいに巨大な規模です。したがって「誤」となります。

 以上より「③」が正解です。


9 令和4年度第2回(通算59回)問10

知識事項の確認

 頻出の成層圏に関する出題です。これまでの知識で解ける問題ですので、復習のつもりで取り組みましょう。

(a) の検討

 成層圏にも、準2年周期振動(QBO)のような大規模な大気の擾乱があります。したがって「誤」となります。

※擾乱とは、ある一定の時間内での平均から解離した現象のことを指します。例えば、平均すると西風となる地域で東風が吹けば、それは擾乱となります

(b) の検討

 夏極の成層圏は東風というやつですね。折角なので、理由についても再度説明します。

 夏極の成層圏は紫外線によるオゾンの分解が盛んであり、気温が最も高くなります。反対に冬極は紫外線が少ないため気温が最も低くなります。そして温度風は高音域を右(南半球では左)に見て吹きます。つまり、北半球が夏の場合は北極を右に見て、南半球が夏の場合は南極を左に見て吹くため、いずれにせよ東風が吹きます。したがって「正」となります。

(c) の検討

 北半球の夏では、対流圏にはアリューシャン低気圧が、成層圏では(アリューシャン)高気圧が形成されます。したがって「誤」となります。

(d) の検討

 夏極から冬極まで連続的に温度が低くなります。したがって「誤」となります。

 以上より「②」が正解です。


10 令和4年度第1回(通算58回)問8

知識事項の確認

 ブロッキング高気圧に関する良問です。全ての設問で問われている事項について、きちんと押さえておきましょう。

 ブロッキング高気圧は、中高緯度のジェット気流の南北方向の蛇行によって発生します。蛇行が大きいと、高緯度側に蛇行した偏西風は高気圧性の渦となり、移動性の高気圧や低気圧の移動を妨げることになります。そのため、天気が同じ状態て継続しやすくなり、異常気象の原因となることがあります。

 さて、ブロッキング高気圧の発生はジェット気流の南北方向の蛇行が原因となりますが、これは北半球ではチベット高原などの山岳が原因と一つとなっています。つまり、大陸の配置の関係から北半球の方が高頻度でブロッキング高気圧が発生すると言えます。

(a) の検討

 低気圧や高気圧の移動を妨げることになるため、設問の通り異常気象の原因となることがあります。したがって「正」となります。

(b) の検討

 ブロッキング高気圧は、ジェット気流の南北方向の蛇行が原因で、南からの暖気が渦となった結果です。そして、北からの冷気も同様に渦となることがあり、切離し低気圧と呼ばれます。したがって「正」となります。

(c) の検討

 既に説明した通り、北半球の方がジェット気流の南北方向の蛇行が大きく、ブロッキング高気圧が発生しやすいです。したがって「正」となります。

(d) の検討

 ブロッキング高気圧は、10000kmのスケールの気象現象です。したがって「誤」となります。

 以上より「①」が正解です。


11 令和4年度第1回(通算58回)問9

知識事項の確認

 海陸風も頻出の分野ですが、覚えることは少ないので得点源にできます。

 海陸風は、海と陸の比熱差により発生します。陸は熱しやすく冷めやすいので、昼は海よりも熱くなり、それにより上昇流が発生します。そのため、海側から空気が吸い寄せられ海風が吹きます。

 反対に夜間は海の方が暖かいので陸から風が吹きます。しかし、この上昇流は穏やかなので、海風と比べると夜間の陸風は弱くなります。詳細はお手元の参考書と以下の聖典で確認してください。

https://www.jma-net.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20140731.pdf

(a) の検討

 陸地が湿っていると、加熱されにくくなり上昇流が穏やかになります。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 前半部分は正しいと分かります。海からの風が吹くのだから、気圧傾度を考えれば海の方が高気圧になります。一方で、陸で上昇した風はその後どうなるかというと、地表面で収束した分上昇後は発散します。そうして発散した空気は、再度海側へ流れていくことで循環します。そのため、気圧傾度も逆であることが分かります。また、この逆向きの流れは反流と呼ばれています。したがって「正」となります。

(c) の検討

 既に説明した通り、海風の方が強く、陸風は穏やかです。したがって「誤」となります。

(d) の検討

 海陸風の層厚とは何で決まるのかといえば、ずばり風として流れる空気の量です。大量の風が吹くのであれば、その分層厚は大きくなると想像できると思います。そうすると、海風の方が層厚が大きいと分かります。したがって「誤」となります。

 以上より「③」が正解です。


12 令和4年度第1回(通算58回)問10

知識事項の確認

 気象現象は範囲が広く、覚える事項も多いためウンザリしますが、一度覚えてしまえば得点源です。

 成層圏突然昇温は、約1週間以内の短い期間で成層圏高緯度の気温が25℃以上も上昇する現象です。原因は、対流圏で見られる地球規模の波(プラネタリ波)が成層圏へ伝播することによるものとされています。

 そして、プラネタリ波が成層圏に影響を及ぼした結果、冬極の成層圏で見られる西風の循環が南北に蛇行(つまり西風成分が弱まり南北成分が増加)し、その過程で南から北に空気が移動し極付近に空気が集中することがあります。結果、行き場を失った空気は逃げ場を求めて下降し、断熱圧縮により昇温することになります。そのため、昇温は上層から始まります。

(a) の検討

 正直に言うと、具体的に対流圏のプラネタリ波がどのように成層圏に影響するのか分かりません。しかし、西風の減速つまり南北(北極)方向への風の蛇行による大気の収束、そして下降流の発生と断熱圧縮、という一連のメカニズムから、「西風」が答えであると分かります。

※冬極の成層圏は西風であるという知識からも正答を導けます

(b) の検討

 大気の収束により下降流が発生して断熱圧縮による昇温が起きます。したがって「下降」となります。

(c) の検討

 断熱圧縮は上層から生じます。したがって「上層」となります。

 以上より「②」が正解です。


13 令和3年度第2回(通算57回)問1

知識事項の確認

 本問題は難易度が高いため、それなりに勉強しても(b)及び(c)により2択までしか絞れません。それ以上は、背景にある理屈を厳密に理解することで解答しようとすると大変です。

 応用のしにくい個別の知識となってしまうのは嫌なので、ある程度妥協しつつも、より一般的な知識にまとめると、

  • 対流圏が厚い(高い)ほど、気温は下がり続けて界面はより寒い

  • 対流圏の風の波は、西風の時は成層圏まで伝わる

 かなり苦しいですが、こんな感じにまとめられます。

 対流圏の厚さについては、当然赤道が最も厚く、つまり背が高いため、一定の気温減率であれば高ければ高いほど気温は低く下がり続けるということです。

 また、対流圏の風の波というのは偏西風波動のことで、これは対流圏や成層圏下部で西風成分が卓越する冬(極)の場合、成層圏にまで偏西風波動が伝わるため、等高度線がぐにゃりと曲がってしまいます。一方で、夏(極)の場合は高度20km付近を超えると東風成分が卓越するため、偏西風波動は伝わりにくく、成層圏の等高度線は極を中心にきれいに同心円を保ちます。

(a) の検討

 知識事項で説明した通り、対流圏の背が高いため、その分気温が低く下がり続けます。したがって「正」です。

(b) の検討

 オゾンの数密度が最大になるのは20~25km付近でした。そのため「誤」となります。

(c) の検討

 中間圏界面付近の温度についてです。例の直感に反するやつですね。くどいようですが、中間圏界面付近の温度は「冬極が暖かく、夏極が冷たい」となります。つまり「正」となります。

(d) の検討

 知識事項の部分で既に説明した通り、対流圏及び成層圏下部で西風が卓越する冬は、偏西風波動が成層圏にまで影響を与えるので、等温線がぐにゃりと曲がってしまい、きれいな同心円状にはなりません。よって「誤」となります。

 以上より「①」が正解です。

※関連性の強い問題として、平成27年度第1回問10があります


14 令和3年度第2回(通算57回)問9

知識事項の確認

 大気の循環と水蒸気輸送に関する基本的な問題です。しっかりと頭に刻みましょう。

(a) の検討

 中緯度帯における降水の原因についてですが、当然台風だけが原因ではありません。温帯低気圧や梅雨前線、モンスーンによる冬季の降水もあります。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 設問の通り、赤道で上昇した空気がこの辺りで下降し、亜熱帯高気圧となります。そのため「正」となります。

(c) の検討

 赤道付近では、貿易風、つまり偏東風が南北から流れ込み、収束により上昇流が生じて積乱雲となります。つまり「正」となります。

(d) の検討

 地点Dでは、収支としては蒸発量が勝っています。一方で、北隣の赤道付近では降水量が勝っています。つまり、どこからか降水のための水蒸気の補給を得なければおかしいことになります。そしてその補給源が地点Dであることが分かります。つまり、極方向ではなくどちらかと言えば赤道にも輸送していることが分かります。よって「誤」となります。

 以上より「③」が正解です。


15 令和3年度第2回(通算57回)問10

知識事項の確認

 ダウンバーストに関する問題です。知識量勝負なので諦めて覚えてください。

 ダウンバーストとは、発達した積乱雲内部で発生する強烈な下降流のことです。温度が低下して重くなった空気が原因です。非常に強い風であるため、建物の倒壊等の被害が生じることもあります。

 試験的には、様々な切り口で問われることの多い現象なので、きちんと聖典を読み込んで備えましょう。

(a) の検討

 成長期の積乱雲は上昇流が主体なので、下降流は見られません。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 設問の通り、氷晶が融解する際に周囲の空気の熱を奪います。そのため、下降流が更に強まるのです。よって「正」となります。

(c) の検討

 本質的には(b)と同じで、蒸発することにより周囲の空気が冷却されます。つまり「誤」となります。

 以上より「④」が正解です。


16 令和3年度第1回(通算56回)問8

知識事項の確認

 実技試験でも非常に頻繁に問われるのが温帯低気圧です。ここをしっかりと理解しなければ、合格はあり得ません。本問題では、発達期の温帯低気圧です。しっかりと知識を定着させましょう。

 温帯低気圧とは、かなり簡単に言えば極側の冷たい空気と赤道側の暖かい空気が混ざる、つまり熱輸送の過程で生じる気象現象です。本質的には、冷気の南下と暖気の北上です。

 この熱輸送としての温帯低気圧は、地球の自転によるコリオリ力が影響し、渦流という形をとります。渦が反時計回り(コリオリ力)であることから、冷気は北西から下降流として南下し、暖気は南西からの上昇流として北上します。冷気と暖気の境界は前線と呼ばれ、冷気の下降流が生じている境界は寒冷前線、暖気の上昇流が生じている個所は温暖前線と呼ばれています。これらの2種類前線は、先ほどの渦流の中心、つまり低気圧の中心を挟んで分かれており、西側が寒冷前線で東側が温暖前線となっています。

(a) の検討

 北半球では、暖気は南寄りの風として北上し、冷気は当然北寄りの風として南下するはずです。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 発達中の低気圧は、対応する気圧の谷の東に中心があります。そのため「正」となります。

(c) の検討

 まさに設問の通りです。温帯低気圧とはつまるところ温度傾度解消のための南北の熱輸送です。つまり「正」となります。

(d) の検討

 一瞬手が止まりますが、温帯低気圧の発達に必要なエネルギーは、もともと存在した暖気と寒気の位置エネルギーであり、水蒸気のエネルギーは不可欠ではありません。途中で水蒸気の補給が必須なのは、台風のことです。よって「誤」となります。

 以上より「⑤」が正解です。


17 令和3年度第1回(通算56回)問9

知識事項の確認

 積乱雲に関する基本的な知識を問う問題です。

 要点として押さえておきたい事項としては、積乱雲の寿命や発達のメカニズム、更に積乱雲が引き金となって発生する各種気象現象についてです。

(a) の検討

 単体の積乱雲の寿命はそれほど長くありませんが、それでも30分~1時間程度です。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 強力な上昇流によって発達した積乱雲は、大気上層で上昇流が冷却され下降流に転じ、激しい降水をもたらします。その過程で、上昇流を妨げてしまいます。そのため、上昇流は長続きしなくなるのです。よって「正」となります。

(c) の検討

 「組織化されたマルチセル型のメソ対流系」というのは、積乱雲がある条件により別の積乱雲生成の引き金となり、どんどん新たな積乱雲が生じることです。そして「ある条件」とは、一般風の鉛直シアが大きい、つまり下層と上層で風向や風速が大きく異なるということです。下層と上層で風向や風速が等しいと、上昇流はやがて同じ場所に発生する下降流によって消滅します。もし、下層と上層で風向きが異なれば、うまい具合に上昇流と下降流が道を譲りあって、互いに邪魔することなくやっていけます。

 そして下降流は地表面で水平方向に向きを変え、別の空気を押し上げて上昇流にしてしまいます。そしてその上昇流は積乱雲として、また別の下降流の原因へとなり、悲劇は連鎖します。

 話が長くなりましたが、「誤」となります。

(d) の検討

 (c)で説明した通り、マルチセル型は悲劇の連鎖です。よって「正」となります。

 以上より「③」が正解です。


18 令和3年度第1回(通算56回)問10

知識事項の確認

 オゾンに関する問題です。気象現象以外でも問われる分野ですので、順に学習した方であれば既に解けると思います。

 折角なので多少復習しましょう。オゾンの一生は太陽から始まります。太陽から放射された紫外線(UV-C:0.2~0.28μm)により、成層圏の酸素分子が光乖離を起こし、オゾンへと変化します。

 オゾンは、紫外線量の多い地域で多く発生します。そのため、低緯度で大量に生成されますが、大気の循環により高緯度に運ばれます。また、中高緯度では空気の流れが下降し、結果下部成層圏でオゾンの密度が最大となります。中高緯度では冬季から春季(北半球:12~5月、南半球:6~11月)頃にオゾンが多くなっています。

 そして最後に、オゾンは紫外線(UV-B:0.28~0.315μm)により分解されます。邪悪な紫外線を身を挺して食い止めてくれるオゾンに、今日も感謝が絶えません。

(a) の検討

 紫外線によるオゾンの分解は熱の発生が伴います。夏極は24時間の太陽照射量が最大で、しかも赤道方面からのオゾンの輸送によりオゾンの密度も大きいです。よって、オゾンの分解による熱の発生量が多く、そのため成層圏では夏極の気温が最大で、冬極が最低となります。したがって「正」となります。

(b) の検討

 オゾンの生成は赤道付近が最大です。よって「誤」となります。

(c) の検討

 夏に低緯度帯で生成されたオゾンが極に輸送され、冬から春にかけて密度が最大となります。よって「正」となります。

(d) の検討

 極渦が強いと、渦内部が低温になり極域成層圏雲という特殊な雲が発生し、この雲の表面でフロンが化学反応を起こすことによって塩素が発生します。そして、発生した塩素は春になるとオゾンを破壊します。つまり、極渦が強い方が塩素の生成量が増えるので「誤」となります。

 以上より「②」が正解です。


19 令和2年度第2回(通算55回)問8

知識事項の確認

 熱輸送の問題ですが、グラフを素直に読めば解ける問題です。

 押さえておきたい事項としては、低緯度地域からの各大気循環の名称と性質です。

 ハドレー循環は、低緯度から中緯度にかけてみられる大気循環で、偏西風と貿易風(偏東風)の原因となっています。赤道付近では上昇流となっており、北緯30°付近では下降流となり亜熱帯高気圧の原因となっています。

 極循環は、極付近で見られる大気の循環です。極付近では空気が冷却されるため下降流が生じ、高気圧となります。反対に北緯60°付近では上昇流となります。

 フェレル循環は、以上の2つの循環に挟まれる形で存在する見かけ上の循環です。

https://www.jma-net.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20130930.pdf

(a) の検討

 グラフの北半球部分を見ると、高緯度地域の任意の地点で、その地点の南の方が北よりも北向きの熱輸送量が大きくなっています。つまり、その地点は熱収支的に正となっているので加熱されています。したがって「加熱」となります。

(b) の検討

 知っていれば即答です。よって「ハドレー循環」が正解となります。

(c) の検討

 AやDの緯度では、温帯低気圧が南北の熱輸送による気象現象となっています。そして温帯低気圧の原理は傾圧不安定波です。よって「傾圧不安定波」となります。

(d) の検討

 水蒸気による熱輸送は、潜熱による形で起こります。グラフを見ると、PとRではいずれも極方向と赤道方向に熱輸送が見られます。よって「PとR」となります。

(e) の検討

 (dグラフを見るとQではすぐ南からは北向きの、すぐ北からは南向きの熱輸送が見られます。よって「Q」となります。

 以上より「①」が正解です。


20 令和2年度第2回(通算55回)問9

知識事項の確認

 大気境界層は細かい部分をねちねちと問うような嫌な問題が多いですが、知識事項をなるべく覚えて大人の対応で臨みましょう。

 類似問題として「令和5年度第1回(通算60回)問10」がありますので、セットで覚えましょう。

(a) の検討

 一瞬、エクマン螺旋を思い浮かべますが、それはあくまでも風向の鉛直方向に伴う変化(地面との摩擦が徐々に小さくなること)であって、風速そのものは一定です。したがって「正」となります。

(b) の検討

 大気境界層内は混合比(単位体積あたりの水蒸気量)が一定です。しかし、上層ほど気温が低下するので、飽和水蒸気量は低下します。つまり、相対湿度は上昇します。よって「誤」が正解となります。

(c) の検討

 強い日射により地表面が強熱された際に、絶対不安定になることがあります。よって「正」となります。

(d) の検討

 夜間や昼間で大気境界層の厚みはダイナミックに変化します。よって「誤」となります。

 以上より「③」が正解です。


21 令和2年度第2回(通算55回)問10

知識事項の確認

 定期的に出題される成層圏突然昇温がテーマです。

 再度簡単にまとめると、成層圏突然昇温は約1週間以内の短い期間で成層圏高緯度の気温が25℃以上も上昇する現象であり、対流圏のプラネタリ波が成層圏へ伝播することが原因で発生します。

 ポイントとしては、

  • 冬に発生

  • 昇温は上層から

  • 地形由来のプラネタリー波が成層圏に影響し、成層圏西風が南北蛇行することが原因

  • 南極では一度しか観測されていない(南半球の地形は穏やか)

辺りを押さえておきましょう。

※類似の「令和4年度第1回(通算58回)問10」を参考にしてください

(a) の検討

 成層圏突然昇温は冬に発生する現象です。冬極は日射がなく放射冷却により大気温度はかなり低くなり、そのために成層圏における下降流に伴う断熱圧縮による昇温を打ち消すほどです。しかし、下降流が一時的に増すことで昇温が上回り、気温が上昇することがあります。それが成層圏突然昇温です。長くなりましたが「寒候期」となります。

(b) の検討

 成層圏突然昇温が発生する遠因は北半球の地形が原因で、ヒマラヤ山脈などが挙げられます。逆に南半球は北半球ほど地形が険しくないため、成層圏突然昇温は一度しか観測されていません。よって「地形等の効果」が正解となります。

(c) の検討

 設問に「下降流による断熱上昇」とあるので、知識としてなくても上層から昇温することは考えれば分かりそうですが、正解は「上層」となります。

 以上より「②」が正解です。


22 令和2年度第1回(通算54回)問8

知識事項の確認

 温帯低気圧は複雑怪奇です。私の場合、参考書を何度眺めてもはっきりと理解できた気がしません。

(a) の検討

 これは知識として押さえておくしかありません。そもそも温帯低気圧は南北の熱輸送の過程における気象現象です。気圧の谷、つまり寒気が下降流として南下し、反対に暖気は上昇流として北進します。この過程が進むと、最終的には地上付近では温度傾度が解消され、上昇では南下した寒気が切り離されてしばらくの間存在します。これが切離低気圧(寒冷低気圧や寒冷渦とも)と呼ばれるものです。正解は「正」となります。

(b) の検討

 南半球だからと言って騙されないでください。北半球と南半球は鏡像です。したがって気圧の谷の軸の傾きは依然として西になります。よって「誤」が正解となります。

(c) の検討

 久しぶりに声に出してみましょう。「大気圧とは、その地点よりも上層にある空気の重さである」でしたね。低気圧ということは、空気の重さが小さく、そのため対流圏の層厚も小さくなるはずです。よって、正解は「正」となります。

 以上より「③」が正解です。


23 令和2年度第1回(通算54回)問9

知識事項の確認

 台風は頻出の問題であり、実技でも定期的に出題されるため、土台作りのためにもしっかりと覚えましょう。

 そして例によって台風については聖典がとても素晴らしい資料を提供しています。必ず、全てを複数回通読しましょう。

(a) の検討

 表現がやや紛らわしいので迷いそうですが、潜熱とはつまり水蒸気のエネルギーです。気象予報士試験やその参考書では、台風の発達を「暖かい海面から供給される水蒸気をエネルギーとする」のような表現で説明されることが多いです。しかし、だからといって「水蒸気」という表現がないから間違いと判断してはいけません。正解は「正」となります。

(b) の検討

 台風の中心付近には強い上昇流が存在し、これが水蒸気を上層に輸送し、凝結させることで潜熱を放出し気温が上昇します。そのため、台風の中心には暖気核があります。よって「正」が正解となります。

(c) の検討

 台風は上層ほど気圧傾度が弱くなり、低気圧として曖昧になります。一方で地上付近では気圧傾度が最大となるので、風速も強くなりそうですが、地上に近すぎると摩擦によって減速してしまいます。そのため、風速が最大となるのは大気境界層の上で、自由大気の最下層付近となります。よって、正解は「誤」となります。

 以上より「①」が正解です。


24 令和2年度第1回(通算54回)問10

知識事項の確認

 成層圏に関する問題です。そろそろ応用が利くようになったと思います。ある程度知識が身につくと、理屈で正解にたどり着けます。

(a) の検討

 成層圏の温度は、紫外線がオゾンを分解することで上昇します。つまり、紫外線量が多いと成層圏の温度は高くなります。そして冬極は紫外線量が少ないので、気温は低くなると考えられます、よって正解は「正」となります。

(b) の検討

 対流圏には「アリューシャン低気圧」、成層圏では「アリューシャン高気圧」です。また、アリューシャン高気圧は、対流圏からのプラネタリー波が原因で発生します。よって「正」が正解となります。

(c) の検討

 対流圏のプラネタリー波が成層圏に伝播する条件は、「成層圏の緯度線に沿う平均風が西風である」となります。よって、正解は「正」となります。

(d) の検討

 対流圏のプラネタリー波の波長は2000kmなんてスケールではありません。文字通り惑星規模の波長なので10000kmのオーダーです。よって、正解は「誤」となります。

 以上より「①」が正解です。


25 令和1年度第2回(通算53回)問8

知識事項の確認

 いわゆるマルチセル型の積乱雲の発達についての問題ですが、良問とは言えません。設問が言葉足らずで図が分かり難く、細長い矢印が何を意味しているのか説明がありません。恐らく、隣り合った2本の細長い矢印で挟まれた細実線の楕円は同じセルの異なる時刻の状態を表しており、大きさは発達の度合いを表現しているのでしょう。そして、左から右に大きくなるのは発達中のセルで、逆にサイズを縮小しているのは衰弱中のセルだと思われます。大きい楕円は、設問の通り同一時刻のそれぞれのセルということです。

 マルチセル型の積乱雲の発達は、風向の鉛直シアが大きいことで、個々の積乱雲の発達が別の積乱雲の発達へと無理なくつながる状態で起こり得ます。そもそも積乱雲は、発達するとやがて強力な下降流が生じ、降水が発生します。そうすると、自らの収入源である上昇流を妨害してしまい、やがて消滅してしまいます。これを避けるためには、少なくとも下降流と上昇流の位置がずれる必要があり、その為には高度によって風向が異なる必要があるのです。

(a) の検討

 セルが複数図示されていますので、典型的なマルチセル型ストームの説明です。スーパーセル型の場合は、単一の積乱雲の現象です。よって正解は「マルチセル型」となります。

(b) の検討

 マルチセル型の場合、下層と上層で風向が異なります。下層風の風上から個々のセルが連鎖的に発生し、徐々に発達しながら風下に流れていき列を成します。よって$${V_S}$$が下層となり、$${V_P}$$が中層です。「中層」が正解となります。

(c) の検討

 (b)より正解は「下層」となります。

(d) の検討

 下層風の風下は北側です。よって、正解は「北端」となります。

(e) の検討

 下層風の風上は南側です。よって、正解は「南端」となります。

 以上より「①」が正解です。


26 令和1年度第2回(通算53回)問11

知識事項の確認

 とても分かり難い問題です。矢印は風向、そして数値は空気の密度に「重み」を付けたとありますが、なにをどうやって重み付けしたのか不明です。しかし解答する上では必要のなさそうな情報なので、冷静に解きましょう。

(a) の検討

 強い上昇流、つまり赤道付近で見られる上昇流(2つのハドレー循環の境界)が北緯15°あたりに見られるので、夏であると推測できます。よって正解は「6~8月」となります。

(b) の検討

 地点Pはハドレー循環の北なのでフェレル循環であると分かります。これは、ハドレー循環と極循環に挟まれて生じる見かけ上の循環で、間接循環とも呼ばれます。「間接循環」が正解となります。

(c) の検討

 地点Qは貿易風が見られます。つまり東風なので、負の西風成分です。答えは「負」となります。

 以上より「③」が正解です。


27 令和1年度第1回(通算52回)問8

知識事項の確認

 熱輸送に関する知識を確認する問題です。気象現象とは究極的には温度傾度の解消のプロセスにすぎません。そのことをきちんと理解しましょう。

(a) の検討

 気象現象の根本的な原因は、赤道付近と極付近で温度が異なり、それを解消するために生じる熱輸送です。つまり、台風も偏西風波動も全ては南北の熱輸送が原因です。そしてハドレー循環は赤道付近で完読される気象現象で、当然南北の熱輸送の結果です。よって「誤」となります。

(b) の検討

 冷たい空気は下降します。暖かい空気は上昇します。サービス問題です。「誤」が正解となります。

(c) の検討

 気象現象は、南北方向の温度傾度を解消するプロセスです。よって答えは「誤」となります。

 以上より「⑤」が正解です。


28 令和1年度第1回(通算52回)問9

知識事項の確認

 実技でも問われることの多い、積乱雲の発達に関する問題です。既に類似の問題を解いていますが、エマグラム上で表現される物理量についてきちんと理解を深めることも求められています。

(a) の検討

 浮力が生じるのは、空気塊が周囲よりも高温になった時です。持ち上げ凝結高度は、空気塊に含まれる水蒸気が凝結を始める温度であり、自由対流高度が正解となります。よって「誤」となります。

(b) の検討

 マルチセル型やスーパーセル型の積乱雲を除けば、設問の通り降水を伴う下降流が上昇流を妨げてしまい、積乱雲は消滅へと向かってしまいます。したがって「正」となります。

(c) の検討

 これは理屈ではなく温気することですが、積乱雲は単体では1時間くらいの寿命です。よって答えは「誤」となります。

 以上より「④」が正解です。


29 令和1年度第1回(通算52回)問10

知識事項の確認

 成層圏に関する基礎的な知識を問う問題です。今回は久しぶりにオゾンが登場します。忘れている方は復習しましょう。

(a) の検討

 オゾンが生成される量は、成層圏に達する紫外線量に比例します。それでは赤道が一番多いじゃないかと考えた方は、残念ながら間違いです。ここで言う紫外線量は24時間の合計です。つまり、太陽が沈まない夏極が最大となるのです。よって「誤」となります。

(b) の検討

 オゾンが紫外線を吸収する際に熱エネルギーが放出されます。夏極が成層圏で最も気温が高くなるのです。したがって「正」となります。

(c) の検討

 理屈抜きに結論だけ言えば、成層圏は夏極だけが東風で、それ以外は西風が卓越します。理由は温度風の関係、つまり「北半球の温度風は高温域を右に見て吹き、南半球では左に見て吹く」だからです。よって答えは「正」となります。

 以上より「③」が正解です。


30 平成30年度第2回(通算51回)問8



31 平成30年度第2回(通算51回)問9



32 平成30年度第2回(通算51回)問11



 本解説で使用した問題の著作権は一般財団法人気象業務支援センターに帰属します。本問題に対する解説は同センターから許可を受けた上で作成した筆者独自のものであり、同センターのものではありませんのでご了承ください。

 また、本解説は筆者個人の理解に基づいて制作したものであり、その科学的妥当性を保証されたものではないことをご了承ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?