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1 大気の構造(20/20問)仮公開


1 令和5年度第2回(通算61回)問1

知識事項の確認

 頻出である「オゾン」は、以下の事項を覚えておけば大抵の問題は解けます。

  • 濃度が最大となるのは高度20~25km

  • オゾンは太陽紫外線を吸収し大気を加熱する

  • 気温が最大となる高度(成層圏界面)とオゾンの濃度が最大となる高度は異なる

  • 成層圏オゾンは酸素分子の光乖離で生成される

 大体この程度となります。

(a) の検討

 知識事項を押さえていれば、「正」であることが分かりますが、もう少し細かく確認すると、

 紫外線→酸素分子→光乖離→酸素原子+酸素分子=オゾン(生成)

という流れとなっていますので、本文の後半のオゾン生成のメカニズムは正しいことが分かります。

 必ず、下記の気象庁ホームページを一度は読んでください。

(b) の検討

 知識事項を覚えていれば「誤」であると即答できます。頻出なので、無思考で解けるようになってください。

(c) の検討

 知識事項だけでは解けないので、補足したいと思います。

「成層圏のオゾンの空間分布季節変動は、太陽放射の強さ時空間分布でほぼ説明できる」

 まず、簡単な言葉に書き直してみます。

空間分布:高度・緯度によるオゾンの量
季節変動:一年のどのシーズンでオゾンが多いか
太陽放射の強さ:紫外線の量
時空間分布:いつどこで紫外線が強いか(地球の自転と公転が関係)

 最後の時空間分布は、北半球の7月は日差しが強く、南半球の7月は日差しが弱い、というイメージで理解すれば良いでしょう。

 一見すると、紫外線が強ければオゾンもたくさん生成される訳ですから、この(c)は正しいようにも思えます。しかし、これは「誤」となります。

 太陽の放射が強い低緯度上空の成層圏が、オゾンの主要な生成場所となります。そして、低緯度の成層圏で生成されたオゾンは、成層圏の大気の流れによって中高緯度に運ばれ下降し、下部成層圏で圧縮されるため、中高緯度の下部成層圏(20~25km)でオゾン量が多くなるのです。

 このような赤道域から中高緯度へのオゾンの輸送機構が存在するため、単純な太陽放射の強度だけでは、オゾンの分布を説明することはできません。


2 令和5年度第1回(通算60回)問1

知識事項の確認

 地球大気に関する基本知識を問うパターンです。案外覚えるべき事項は多いので、本問を説く上で関連性の強い知識事項をまとめます。

  • 地球大気の体積比は窒素78%、酸素21%、アルゴン1%(水蒸気を除く)

  • 地球大気の質量比は窒素76%、酸素23%(概ね体積比と同じ!)

  • 大気の成分は中間圏までほぼ一定

  • 大気中の二酸化炭素はごく僅か(0.04%)

  • 大気中の水蒸気は0~4%程度と僅か

 オゾンに関しては、先述の通りです。

(a) の検討

 知識事項を押さえていれば、「誤」であることが即答できます。

(b) の検討

 知識事項を覚えていれば「誤」であると即答できます。二酸化炭素は産業革命以降増加していますが、それでもアルゴンに比べれば僅かです。

(c) の検討

 低緯度から高緯度方向に輸送され、濃度の最大は中高緯度下部成層圏です。また、中高緯度では冬季から春季(北半球:12~5月、南半球:6~11月)頃にオゾンが多くなっています。季節変動は頻出なので、押さえておきましょう。


3 令和4年度第2回(通算59回)問1

知識事項の確認

 気温の高度分布についての問題です。この様な問題では、各層(地上から対流圏、成層圏、中間圏、熱圏)についての特徴を簡単に押さえておけばそこそこ解けます。

  • 対流圏:上層ほど低温で、気温減率は6.5℃/km

  • 成層圏:上層ほど高温で、オゾンによる紫外線の吸収で昇温

  • 中間圏:上層ほど低温

  • 熱圏 :上層ほど高温

 念のために確認しますが、〇〇圏界面とは、〇〇圏の上の部分になります。したがって、成層圏界面とは成層圏と中間圏の境目付近になります。

(a) の検討

 知識事項を押さえていれば、「正」であることが即答できます。

(b) の検討

 オゾンについての知識事項を覚えていれば「誤」であると即答できます。このパターンは頻出なので、決して間違えないでください。

(c) の検討

 放射収支、つまり太陽や地面、大気の放射(プランクの法則)のみで気温の鉛直分布を理論上で計算した場合と、現実の鉛直分布の違いについての理解を問うパターンです。

 恐らく、「実際の大気」「オゾンなし」「大気なし」の各条件における気温の鉛直分布について、学科の参考書でグラフを眺めたことがあると思います(もしなければ、通読が足りていません。あるいは読む本を間違えています)。その要点としては、「現実の大気では様々な要因により、大気が鉛直方向に熱輸送をするため、簡素化された各気温分布のモデルよりも気温変化が穏やかになる」ということです。

 そうすると、この設問の場合、現実の大気の方が気温減率が大きいと逆のことを述べていることが分かります。したがって、「誤」となります。

 なお、「平成26年度第1回(通算42回)問1」は本問と関係が強く、理解を深めることができます。


4 令和4年度第1回(通算58回)問1

知識事項の確認

 気温の高度分布や、大気の組成についてのやや応用的な問題です。高層まで含めた南北方向の気温分布は頻出ですが、やや直感に反する事項があるので、あやふやな知識に基づいた推論に頼ると間違えてしまいます。

  • 赤道付近は気温が高いので大気も厚くなる(対流圏界面高度)

  • 中間圏以下までは、大気の組成はほぼ一定

  • 中間圏界面付近の高度では、夏極の方が冬極より寒い

 これくらいを確認できれば良いと思います。

(a) の検討

 一瞬、正しいように思えますが、これはひっかけ問題です。後半の気温減率については正しいです。

 しかし、前半の「対流圏の気温の鉛直分布は放射収支によって決まり」という部分は誤りです。対流圏は、その名の通り大気が対流によりかき混ぜられ、つまり鉛直方向に熱輸送が生じるということで特徴付けられます。59回の問1(c)でも説明した通り、放射収支のみで説明すると、気温減率は実際よりも大きな値になります。したがって、放射収支だけでは実際の気温減率を説明できません。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 知識事項の通り、赤道のように対流圏の平均気温が高い地域では、大気の密度が低くなり、つまり熱で膨張するために大気が厚くなります。そのため「正」となります。

 冬の典型的な気圧配置である西高東低の原因となるシベリア高気圧は、いわゆる背の低い高気圧ですが、その理由は上記のメカニズムの逆となります。つまり、シベリアの冬は寒いので大気が薄くなるのです。

 この辺りの感覚は重要なので、もし今ひとつピンと来ないのであれば、参考書等で再度確認してください。

(c) の検討

 中間圏以下では、大気の成分はほぼ同じです。したがって「誤」となります。一方で、熱圏となると大気の成分は変化するので注意が必要です。

(d) の検討

 中間圏界面付近の気温を夏極と冬極で比較すると、直感に反して夏極の方が低くなります。したがって「正」となります。

 過去の傾向から、その理由まで問われることはなかったと思いますが、高層大気の気温分布に関する知識を元に、温度風の風向を推測させる問題が出題されることはあります。詳しくは温度風の関係についての問題の解説で説明しますが、北半球では暖かい方向を右に見て風が吹くので、夏極の中間圏界面付近の風向は東となります。


5 令和3年度第2回(通算57回)問2

知識事項の確認

 温度風に関しては、「北(南)半球では高温域を右(左)手に見て吹く」ということを覚えていれば問題ありません。

(a) の検討

 頻出のパターンですが、夏至の頃は北極には24時間太陽放射が降り注ぐため、赤道よりも日射量は多くなります。したがって、紫外線の吸収に伴うオゾン層の過熱も最大となるので、「南極より北極」が正解となります。

(b) の検討

 温度風の関係により、高温域つまり北極を右に見て風が吹きます。つまり、「東風に変わり」となります。

(c) の検討

 南半球における温度風の関係は、北半球と逆になります。つまり、高温域つまり北側を左に見て風が吹くので、「西風のまま」が正解となります。


6 令和3年度第1回(通算56回)問1

解法の確認

 一見すると重箱の隅をつつくような知識を問うのかと思う、本番で出たら慌ててしまいそうな問題ですが、よく見れば算数の問題だと分かります。

 問題文の前半を読むと、5km高度が増えると気圧が半分になる、ということが分かります。簡単な指数計算の問題ですね。

 大気の99.9%がある高度の下にあるということは、気圧(その高度より上にある空気の質量に比例)は、

$$
1000\times(1-0.999)=1
$$

1hPaとなります。

 そして、地上低気圧を何回半分にしたら1hPaになるのかを求めると、

$$
1000\times(0.5)^x=1
$$

 これを解けばよいことが分かります。$${log_{10} 2=0.301}$$を覚えていればそれで良いのですが、そうでない場合は愚直に2で割り続ける方法があります。

$$
1000\longrightarrow500\longrightarrow250\longrightarrow125\longrightarrow62.5\longrightarrow31.25\longrightarrow15.625\longrightarrow7.8125\longrightarrow3.91\longrightarrow1.95\longrightarrow0.977
$$

 途中で適当に丸め込みましたが、9~10回で1を下回りましたので、45~50km付近が答えとなります。つまり、「③」ですね。


7 令和2年度第2回(通算55回)問1

知識事項の確認

 これまでに覚えた知識で楽に解答できる問題です。復習を兼ねて解いてみましょう。

(a) の検討

 中間圏までは大気の組成はほぼ同じ、というやつですね。したがって「正」です。

(b) の検討

 成層圏界面、つまり成層圏の一番上で温度が最大となり、その理由は太陽紫外線がオゾンに吸収されて発熱するからです。そのため「正」となります。

(c) の検討

 対流圏界面の高さは、対流圏の平均温度に比例します。赤道が最も暑いのだから、高さも最大になりますね。つまり「誤」となります。

(d) の検討

 対流圏の温度減率は約6.5℃/kmです。よって「誤」となります。


8 令和2年度第1回(通算54回)問1

知識事項の確認

 今回は新たに覚えるべき事項は「電離層」と「熱圏」についてです。頻出ではありませんが、たまに見かけます。

  • 熱圏では、波長の短い紫外線を窒素や酸素分子が光電離で吸収し、大気を温める。また、太陽活動の変化や時間帯による温度変化も大きい

  • 電離層は、高度80km以上で紫外線による大気の光電離により生じたイオンや自由電子により構成される

  • 電離層は、一部の波長の電波を反射する

  • 電離層は、昼間に比べると夜間はイオンや自由電子の数が減る

 以上の事項を押さえておけば何とかなりそうです。

 また、出題頻度はかなり低いのですが、紫外線の波長についても押さえておくと良い事項がありますので紹介します。

 紫外線には、波長によって以下の3種類の分類が存在します。

  • UV-A:0.315~0.38μm

  • UV-B:0.28~0.315μm

  • UV-C:0.2~0.28μm

 UV-Aは、大気ではあまり吸収されずに、5%くらいが地上に降り注ぐ紫外線です。端的に言ってですね。腹立たしい。

 一方、UV-Bは成層圏のオゾン層でほぼ吸収されます。これは、後述するUV-Cにより生成されたオゾンを、UV-Bが破壊することを指します。そして、この破壊により熱が生じて成層圏大気が加熱されます。ほぼ吸収されるとはいえ、0.5%程度は地上に到達し、日焼けの原因になります。なのでです。絶滅すべきでしょう。

 最後にUV-Cですが、こちらはオゾン層により完全に吸収されるため、地上には到達しません。UV-Cにより、成層圏の酸素分子が光解離を起こし、結果としてオゾンが生成されます。この時、温度の上昇はありません。ほとんど無害ですので、放っておきましょう。

 ちなみに、熱圏の大気(窒素や酸素分子)で吸収(光電離)される紫外線は、ここで紹介した3種類よりも更に波長の短い(0.1μm)以下の紫外線です。

(a) の検討

 熱圏での短い波長の紫外線による大気の過熱の説明です。高度とともに温度が上昇するのも事実です。したがって「正」です。

(b) の検討

 電離層は高度80km以上に存在します。そのため「誤」となります。

(c) の検討

 成層圏界面ではなく、高度20~25kmでオゾン数密度は最大になります。つまり「誤」となります。

(d) の検討

 対流圏は、放射のつり合いに加え、大気の鉛直方向の混合や潜熱、顕熱の移動により温度分布が決まります。よって記述の通り「正」となります。


9 令和元年度第2回(通算53回)問3

解法の確認

 東西風の分布に関する典型的な問題です。問題の図については映像で記憶できる方はそのまま画像として、普通の人は言葉で覚えてみてください。つまり「夏極の成層圏では東風が卓越する」ということです。

(a) の検討

 成層圏で東風が卓越しているのは南半球です。つまり、南半球が夏です。そのため、「1月」だと分かります。

(b) の検討

 温度風の関係から、南半球では高温域を左に見て風が吹きます。つまり、東風が卓越している場合は極側が高温になっていることが分かります。したがって「高温」となります。

(c) の検討

 成層圏における温度上昇は、オゾンの紫外線吸収が原因ですね。つまり「オゾンの紫外線吸収に伴う加熱」です。


10 令和元年度第1回(通算52回)問1

知識事項の確認

 こういう問題は、いつも以上に学びの機会が多いため、全ての選択肢を丁寧に理解して記憶するようにしましょう。折角なので、設問に出てくる用語について、簡単に触れていきたいと思います。

  • 降水:雨だけではなく雪やみぞれ等も含みます。降雨と降水は同じ言葉ではありません

  • 成層圏突然昇温:春先に対流圏のプラネタリー波が伝播することで発生する、成層圏における急激な温度上昇。成層圏の上部から発生する現象で、下部に至るにつれ弱まる。僅か数日間で40℃ほど昇温する

  • 準2年周期振動:赤道域の下部成層圏で見られる約26か月周期の現象。東風と西風に交互に変化する現象で、高度40~50kmで始まって時間とともに下層に降りてくる。18km付近まで変化の波が到達したら、次の変化がまた上層から発生する

  • 夜光雲:中間圏界面付近に発生する特殊な雲。出題例は多くない

  • ブリューワー・ドブソン循環:赤道付近の対流圏界面から高緯度に向かって流れる大気の循環で、オゾンを極に輸送する機構の1つ

 以上の事項は特に太字部分をしっかりと覚えておきましょう。

(a) の検討

 対流圏と中間圏は上層ほど気温が低いので「低い」が正解です。

(b) の検討

 成層圏と熱圏は上層ほど気温が高いので「高い」が正解です。

(c) の検討

 成層圏の最下層は「200」hPa程度です。ぎりぎり旅客機が飛べる高度なので、10hPaのようなスカスカな気圧ではありません。

(d) の検討

 熱圏では、波長の短い紫外線による大気(窒素や酸素分子)の光電離が起きていることは「令和2年度第1回(通算54回)問1」でも触れたと思います。よって「紫外線による光電離」が正解です。


11 平成30年度第2回(通算51回)問1

知識事項の確認

 今までの問題では触れていない内容もあるので、簡単に説明します。

 まず、対流圏での気温の南北傾度ですが、これは等温線が集中し、込み入っていることと対応しています。中緯度帯、つまりちょうど日本の辺りですが、この緯度帯ではハドレー循環による南からの熱輸送があります(「大気の大規模な運動」で詳しく扱われます)。また、極からの冷たい空気も北からフェレル循環によりやってきます。そのため、中緯度地域は寒気と暖気のせめぎ合う地域となり、南北の温度傾度は大きくなっています。

 また、「令和4年度第1回(通算58回)問1」でも少し触れましたが、温度風についても再度簡単に説明します。

 温度風は、平均気温の等温線と平行に、温度の高いほうを右に見て吹く、隣接高度間での風のベクトル差として定義される風となります。つまり、中緯度県では西向きの温度風が存在します。

 また、平均温度の違う大気が南北で接しているとすると、地上での南北の気圧差はほとんどありませんが、高度が増すにつれて、気温差の分だけ気圧差がより大きくなります。結果、上層ほど南北の気圧傾度が大きくなり、風速も増すことが分かります。

※説明が分かり難い場合は、お手元の参考書を再度読み直してください

(a) の検討

 「令和3年度第2回(通算57回)問1」でも同じことを問われていました。熱帯地方、つまり赤道付近は対流圏の平均気温が高いため、対流圏が高緯度と比べて厚く、より長く高度上昇に伴う気温低下が発生するため、対流圏界面の温度がより低くなるということでした。よって「正」となります。

 ここまで解いてきた方ですと、正直くどいなと思うでしょう。その感覚が大事です。うんざりするほど繰り返し解くことで、本番でも解けるようになるのです。

(b) の検討

 知識事項で説明した通り、中緯度帯は南北の温度傾度が大きくなっています。つまり、「正」となります。

(c) の検討

 温度風の性質と、高度によって気圧傾度がどう変化するかを理解している必要があります。知識事項で説明した通り、平均気温の異なる大気が接している場合、上層ほど気圧傾度が大きく風速も大きくなります。そして、温度風の関係により中緯度では西風となっています。よって「誤」となります。


12 平成30年度第1回(通算50回)問1

知識事項の確認

 ここまで解き続けた方なら、瞬時に正答にたどり着けるはずです。

(a) の検討

 対流だけではなく放射も気温の鉛直分布にとって重要な要素です。つまり「誤」となります。

(b) の検討

 成層圏におけるオゾン生成の説明ですね。「正」となります。

(c) の検討

 中間圏は上層ほど温度が低いので「正」となります。

(d) の検討

 熱圏では、波長の短い紫外線による大気(窒素や酸素分子)の光電離が起きていることは「令和2年度第1回(通算54回)問1」や「令和元年度第1回(通算52回)問1」でも触れたと思います。よって「正」となります。


13 平成29年度第2回(通算49回)問1

知識事項の確認

 本問題では「大気の熱力学」の知識も若干必要とされていますので、簡単に説明します。

 温位とは、乾燥した空気塊を1000hPaまで断熱的に移動させた場合の温度です。乾燥断熱変化では、水蒸気の凝固や蒸発に伴う潜熱の移動がないため、温位は変化しません。
 
 さて、実際の大気となりますと、大気の平均的な気温減率は6.5℃/kmであり、乾燥断熱減率の10℃/kmと比較すると値が小さくなっています。つまり、実際の大気は上層ほど温位が高いのです(もし温位が一定なら、乾燥断熱減率と同じ10℃/kmの温度変化となるはずで、上層はもっと気温が低くなります)。

(a) の検討

 気温減率は確かに一定ですが、温位は上層ほど高いのです。したがって「誤」となります。

(b) の検討

 赤道付近は対流圏の平均気温が高く、そのため密度が低いため背が高くなるのでしたね。つまり、気温減率が一定であるため、高度が高いほどより気温が低く下がり続けることになります。そのため、赤道付近の方が対流圏界面の気温は低いのです。つまり「誤」となります。

(c) の検討

 気温の最大は成層圏界面付近の高度50kmですが、オゾンの数密度は20~25km付近で最大です。よって「誤」となります。


14 平成29年度第1回(通算48回)問1

解法の確認

 咄嗟に式を思い浮かべようとして理系の方には申し訳ありませんが、これは計算問題ではありません。冷静に考えましょう、気圧とはその高度よりも上にどれだけの重さの空気があるか、です。

 そうすると、ある大気の層の最上部と最下部で100hPaの気圧差があるということは、100hPa分の質量の空気塊がそこにあることになるのです。400~500hPaであろうが、200~300hPaであろうが、気圧差が同じならば空気塊の重さは同じです。

 本設問では、どの層も気圧差は100hPaと一定であるので、答えは「⑤」となります。

※気象業務支援センターによる発表では、④も正解とするとありますが、気にしないでください。重力加速度が上層ほど小さいことを勘案すると、④も正答になり得るということです

※この問題が大気の構造に分類されるのは少々疑問ですが、「気象予報士試験精選問題集 2023年度版」ではそのような分類です。どちらかと言えば大気の熱力学ではないのでしょうか。


15 平成28年度第2回(通算47回)問1

知識事項の確認

 本問題は、今までの知識だけでも解けますが、やや難易度の高い応用的な問題です。

(a) の検討

 例の直感に反するやつですね。つまり、中間圏界面では夏極が最も気温が低くなるのでした。そのため、本設問では1月に夏極となるのは南極ですから「正」となります。

(b) の検討

 成層圏界面付近で温度が極大になるのはオゾンによる紫外線の吸収が原因です。つまり「誤」となります。

(c) の検討

 温度の極大点になっていません。「誤」となります。

(d) の検討

 これは、中間圏界面で温度が極小になる理由を問うているのです。中間圏で気温が上層ほど減少するのは、純粋な乾燥断熱による温度低下です。そして中間圏界面以上、つまり熱圏で上層ほど温度が上昇するのは大気(窒素や酸素分子)が波長の短い紫外線を吸収するからです。

 この相反する温度分布に挟まれているからこそ、中間圏界面付近で温度が極小になるのであって、放射冷却は関係ありません。よって「誤」となります。


16 平成28年度第1回(通算46回)問1

知識事項の確認

 本問題は、今までの知識だけでも解けますが、電離層や熱圏の温度変化については今までの問題にはあまりなかったと思います。「令和2年度第1回(通算54回)問1」の知識事項でも触れていますが、再度復習を兼ねて確認してみましょう。

(a) の検討

 散々見てきたと思いますが、もう一度確認しましょう。オゾンの数密度が最大になるのは20~25kmでした。そして成層圏では上層ほど温度が高くなります。よって「誤」となりますね。

(b) の検討

 厳密にいえば、複数ある電離層のうち、D層と呼ばれるものは夜間焼失します。しかし、他の層については全てなくなる訳ではありません。つまり「誤」となります。

(c) の検討

 熱圏は、太陽放射の強度変化や、時間帯によって気温がダイナミックに変化します。よって「誤」となります。


17 平成27年度第2回(通算45回)問1

解法の確認

 これは計算問題ではありません。定性的に考えれば良い問題です。

 既に何度も説明していますが、地上気圧は大気の重さに比例します。つまり、本問題では、黒太枠で囲われた部分の空気の重さが最も小さくなるものを選べばよいのです。そうすると、温度が高いほうが密度が低く質量も小さいため、②か④に絞れます。

 それではこの2つを比較するとどうなるのでしょうか。両者とも周囲より温度が高い気層の厚さは1000mですが、平均気圧が違います。地上に近い②の方が、より気圧が高くより密度が高いことが分かります。そうすると、より密度の高い気層の方が温度変化による空気質量の変化が大きいため、②が最も軽い大気になっていることが分かります(上層の薄い空気が少々暖かくなっても、質量に与える影響は小さいでしょう)。

 よって、地上気圧が最も低いのは「②」になります。

※本問題は、「気象予報士試験精選問題集 2023年度版」では、大気の構造に分野として分類されていますが、私の考えでは大気の熱力学ではないかと思います。したがって、今後他分野の過去問の作成が進み次第、どこかの時点で再度分類の上、整理を進めたいと思います


18 平成27年度第1回(通算44回)問1

知識事項の確認

 既にこの程度の問題であれば、サービス問題に感じられるのではないでしょうか。今までの知識で十分に解けます。

(a) の検討

 「令和5年度第1回(通算60回)問1」でも説明しましたが、水蒸気の含まれない乾燥空気では、窒素78%、酸素21%、アルゴン1%の体積比です。よって「誤」となります。

(b) の検討

 中間圏まで大気の成分は一定です。したがって「誤」です。

(c) の検討

 中間圏まで大気の成分は一定です。中間圏界面付近もこれに含まれます。変に深読みしなくて惑わされないようにしてください。「誤」となります。

 ちなみに、熱圏では高度1000km付近になるとヘリウムが占める割合が顕著に増大します。


19 平成26年度第2回(通算43回)問1

知識事項の確認

 「令和2年度第1回(通算54回)問1」で学習した、紫外線やオゾンに関する知識の復習として良い問題です。

  • UV-A:0.315~0.38μm

  • UV-B:0.28~0.315μm

  • UV-C:0.2~0.28μm

について、それぞれの性質を再度復習しましょう。

(a) の検討

 中間圏は上層ほど温度が低いので「誤」です。

(b) の検討

 UV-Cによりオゾンが生成されるのでしたね。記述の通り「正」となります。

(c) の検討

 UV-Bがオゾンを破壊し、つまりオゾンが紫外線を吸収して熱が発生し温度上昇が起こるのでした。「正」となります。

(d) の検討

 紛らわしいですが、UV-A(絶対的な敵)は約5%が地上に到達します。したがって「誤」となります。

 最後の(d)については、正直良い設問とは言えません。こんな些末な知識まで抑える必要があるのでしょうか。しかし、消去法で正解が導けるため、この部分については知らなくても問題ありません。


20 平成26年度第1回(通算42回)問1

知識事項の確認

 やや難易度の高い問題ですが、今までの知識でも対応可能です。

(a) の検討

 大気がない場合、気温は地表付近から劇的に減少するはずです。したがって、記述の通りA~Cはいずれも大気の存在を組み込んでいると言えるでしょう。つまり「正」となります、

(b) の検討

 対流圏での温度変化は、文字通り対流現象による鉛直方向の熱輸送があってこそ、6.5℃/kmになるのでした。この点で、Cのみが標準大気と同じ気温減率であるため、記述は「正」と言えます。

(c) の検討

 これは簡単ですね。成層圏での加熱はオゾンによるUV-Aの吸収が原因であり、可視光は無関係です。つまり「誤」となります。


 本解説で使用した問題の著作権は一般財団法人気象業務支援センターに帰属します。本問題に対する解説は同センターから許可を受けた上で作成した筆者独自のものであり、同センターのものではありませんのでご了承ください。

 また、本解説は筆者個人の理解に基づいて制作したものであり、その科学的妥当性を保証されたものではないことをご了承ください。

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