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気象予報士試験の対策法と参考書紹介

気象予報士試験対策は学科が重要

 気象予報士試験は本当に難しいのでしょうか?

 巷では、気象予報士試験は合格率が5%程度であることから難関資格の一つとして挙げられることがあります。しかし、これは単一回の試験における合格者と受験者の比率です。内訳としては、全科目受験(学科の一般及び専門+実技)の方もいれば、学科免除の方もいます。事実、受験番号から推測した合格率としては、全科目受験が1%程度に対し、学科全免除受験の場合は20%程度となります。

 端的に言えば、学科さえこなしてしまえば、午後の実技試験の合格率は20%と大幅に受かりやすくなるのです。

 筆者の実感としては、実技試験は難しいことを考えて解答するのではなく、限られた時間の中で定型句を「回答」する作業です。75分という時間の中で、過去問で見たことのある似たような問題に対して定められた字数で定型句を埋めます。考えていたら時間切れです。反射的に解答欄を埋めることになります。過去問を十分にこなせば、実技で合格点に達することはそれほど難しいものではありません。事実、私の場合は過去問から30事例を最低2周、特に良問であると感じた10事例については4周をこなすことで対策を終えましたが、正直なところこれでも過剰な対策だったと思うくらいでした(現時点では合否は不明ですが)。

 一方で、学科試験は求められる知識は膨大で、短期間で対策が済むようなものではありません。私の場合、一般・専門合計で500問程度対策を行いましたが、それでも第61回気象予報士試験において(一般12/15、専門13/15)と、少々心許ない結果でした。恐らく、試験問題の難易度によっては不合格も十分にあり得たと思います。

 そして、学科試験で1つでも不合格になると、午後に受ける2回の実技試験は採点すらされません。どれだけ必死に対策しても、そして十分に合格に達し得る解答だったとしても、一切が無駄になってしまいます。

 以上より、気象予報士試験における学科の重要性は十分にご理解いただけると思います。

学科試験の対策は物量がすべて

 結論から言えば、学科試験は過去問を何問と解いたかで合否が決まります。しかし、解いた問題数だけで成果を測ることは危険です。例として、気象予報士試験の場合、以下の様な問題が出題されることがよくあります。


問□□ ~について述べた次の文(a)~(b)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a) ××のときには、○○の許可を受けなければならない。
(b) ××のときには、○○の旨を気象庁長官に届け出なければならない。
(c) ××のときには、○○するよう努めなければならない。
(d) ××のときには、○○と□□をただちに報告しなければならない。


 この様な問題の場合、素直に解くと不正解になります。ある程度理解していても、ひっかけ問題のような理不尽さによって簡単に不正解になります。そして解説を読むと、以下の様な解説となっています。


(a) ××のときには、○○の許可を受けなければならない。
 → 誤:届け出であり、許可制ではない
(b) ××のときには、○○の旨を気象庁長官に届け出なければならない。
 → 誤:許可が必要
(c) ××のときには、○○するよう努めなければならない。
 → 誤:努力義務ではなく、義務である
(d) ××のときには、○○と□□をただちに報告しなければならない。
 → 誤:□□が余分


 個々の内容についてはある程度理解しているのに、問われる部分が上記の様に本質的な内容とはややズレた部分だったりします。

 この様な理不尽さを乗り越えて合格点(一般・専門ともに11点)を取るには、一問一問丁寧に、個々の選択肢についても内容を完璧に理解するしかありません。

学科を舐めていたため、もう少しで不合格だった…

 私の場合、過去に旧帝大の理系に現役で合格しています。そのため、古典力学や熱力学(気象学の基礎)については最低限の理解がありますし、教養として惑星科学についてもある程度貯金がありました。また、専門で出題されるレーダー関連の技術については、大学卒業後に若干ですがプロとして経験があります。

 それでも、学科については相当苦労しました。2023年の11月頭に試験勉強を始めて、2024年1月28日に本番を迎えましたが、試験の2週間前に第60回の過去問を解いた際は、(一般7/15、専門9/15)と不合格でした。それまでの勉強時間は合計300時間で、学科については100時間程度、内容は以下の項目を行っていました。

  • 学科参考書の通読を2回

  • 過去問8回分を2回

  • 気象関連の新書(ブルーバックス)や専門書等を通読

 正直に言えば、舐めていました。一般の計算問題については、考えれば解けるものだと高をくくっていましたし、法規問題は直前に丸暗記すれば良い、程度に考えていました。それよりも実技の方が難しく(そして解くのが楽しかった!)、実技をこなせば学科も自然に理解が深まると思い込んでいました。

 そのため、本番2週間前のセルフ模擬試験の学科不合格は衝撃的でした。パニックになりかけるくらいには焦りました。そこで、なぜ解けなかったのかを冷静に分析した結果、以下のことが判明しました。

  1. 計算問題に必要な公式類を覚えていない

  2. 法規問題は内容の理解に加え、試験用の対策が必要

  3. 気象庁のホームページに書いてあることを押さえていない

  4. 演習量の圧倒的不足

 1ですが、これは自分にとって衝撃的でした。数学も物理もそれなりに自信がありましたし、プロとしての経験もありました。そして、気象学というのはある種の応用に過ぎないと不当に低く見てしまい、驕り高ぶっていました。そして、短い試験時間の中で正確な解答を求めることができず、自身の物理学・数学的感覚による定性的な判断や直感、消去法に頼っていました。気象予報士試験では、そのようなセンスで解ける問題も少なくないのですが、そのような状態では計算問題は得点源とは言い難く、実際には足を引っ張ってしまっていました。高々10種類にも届かない程度の数の公式を覚えておけば確実に解ける問題を、根拠もないセンスで解くのは、今思えば愚かでした。

 2については、先ほど説明した例の通り、法規問題は気象予報士試験としての慣れが必要で、詳細は後述しますが。少なくとも50問、できれば100問程度は演習により慣れる必要があります。これも、数年分の過去問演習を2周だけでは全く足りておらず、4問中2問しか正解していませんでした。気象予報士試験に詳しい方なら、法規で2問落とすことの意味は分かると思います。つまり、ほぼ不合格です。

 3ですが、これはとても重要です。過去問の解説を読んで、それで納得してはいけません。気象庁のホームページを参照して、きちんと理解してください。ナウキャストも、一度実物を2~3時間かけて眺めれば、知識の定着率は飛躍的に向上します。オゾン層、エーロゾルの原因物質、警報の基準、観測技術等、これらの頻出事項は必ず気象庁ホームページの「知識・解説」を徹底的に読み込んでください。ここでの内容がそのまま試験に出ることもあります。そして、このホームページは税金で作られています。それに、内容は非常に分かりやすく網羅的です。これを使わない手はありません。

 最後に4ですが、これが最後は重要になってきます。当たり前のことですが、解いた問題数が多ければ多いほど合格率は上がります。ですので、残り2週間は、自由時間のほとんどすべてを学科の過去問の徹底的な理解に充てました。合計で500問を、3回連続で正答出来るまでやり込みました。もちろん、正誤問題は各選択肢をきちんと理解し、消去法に頼ることなく正解が導き出せるまで勉強しました。

気象予報士試験は参考書や問題集がイマイチ

 さて、約3ヵ月に渡り気象予報士試験に取り組みましたが、私が感じた気象予報士試験の最大の山場は、見出しの通り、教材が限られていることです。正直、内容としてはそれほど難しくありません。単純に、知らなければならない知識の量がそれなりに多いだけで、一般人が数年かけても理解できないほど難しい内容のものはありません。

 本記事を書こうと決めたのも、この最大の山場を少しでも均そうと考えたからです。特に、受験会場で数多く見かけた、仕事をしながら受験しているだろう社会人の方や、単に資格だけ持っていればなれる訳ではないのであろう、気象キャスターを目指している方にとって、適切な学習教材の不足により、本来の難易度以上の努力を捻出しなければならないのは、あまりにも勿体ないと思います。

 そこで、本記事に加え、今後気象予報士試験の学科問題について、過去問を分野ごとに分類し、解く上で必要な知識をきちんと整理した上で解説を作成したいと思います。現在(2024.2.6)、気象業務支援センターに過去問利用の許諾申請中ですので、無事に許可が得られ次第、開始したいと思います。許諾を得ましたので、順次作成と公開を進めたいと思います。

実際の勉強法

 試験を終えて、筆者が改めて今だったらこうやってすべきだなと考えた勉強法について簡単に触れたいと思います。

毎日やること

 気象庁が発表している短期予報解説資料を毎日必ず読みましょう。

 これは、毎日15:40頃、03:40頃に更新されている、天気予報の考え方や防災事項などを解説した資料です。知識面に関して学科及び実技試験の対策になりますが、最大の目的は実技試験における、独特で癖のある言い回しに慣れることです。筋トレだと思って、今日から毎日必ず取り組みましょう。

順番通りにやること

 最初に以下の2冊の本をそれぞれ3回ずつ通読してください。

 コツとしては、2回目以降、内容に飽きても読み飛ばすことなく丁寧に読むことです。また、内容(特に専門)に疑問がある場合は、気象庁のホームページで確認してください。


 次に、以下のいずれかの参考書を3回通読してください。

  あるいは以下の2冊

 いずれにせよ、疑問点は必ず気象庁のホームページで確認してください。気象庁ホームページでの解説文がそのまま問題文になることもあります。そういう意味で、気象予報士試験の真のバイブルは気象庁のホームページです。


 ここまで進めたのであれば、一度過去問を1回分解いてみてください。恐らく一般・専門ともに最低でも6~7点くらいは取れるようになるはずです。この程度の正答率であれば順調です。目標の11点までそう遠くはありません。もし、この時点で5点未満であれば、何か重大な間違いがあるはずです。もう一度最初からやり直すか、気象予報士試験は諦めた方が良いと思います。


 最後に過去問演習です。解説付きの過去問を少しでも多く集めてください。市販の問題集を活用するのが確実な方法ですが、絶版になった本も多く、確実な学科突破に必要な問題数分揃えるのは、現実的ではないかも知れません。

 そこで、本コンテンツでは順次過去問の解説を公開していきたいと考えていますので、よろしければそちらもご活用ください。何種類か気象予報士試験の問題集が市販されていますが、そのどれよりも1問あたりの価格を安くした上で公開したいと考えています。

参考書&問題集ミシュラン

 以下は、私が実際に使用した参考書及び問題集の紹介です。あくまでも一個人の私見であり、背景も人それぞれですので、参考程度にご活用ください。折角なので、本記事の趣旨である学科に加え、実技の方も紹介したいと思います。


読んでスッキリ!気象予報士試験 合格テキスト 第2版

 2023年6月に改訂されたばかりの、現時点(2024.2.6)で恐らく最新の気象予報士試験解説書です。説明や構成がそれほど良くありませんし、誤植(例:p406の右上図)も少々ありますが、他参考書では全球モデル(GSM)の格子間隔が20kmとなっているところ、本書ではきちんと最新の約13kmにアップデートされています。

 そしてとにかく網羅性が高く、最悪これ一冊あれば「どこにも書いてなかった!」ということはかなりの確率で回避できます(それでも抜けはあるので、気象庁のホームページで補う必要はあります)。

 本書では、文中に赤字や下線が頻繁に使用されていますが、恐らくこの部分は過去問から問われたことがある内容を機械的に強調しているのだと思われます。過去問を解いていて「そんなこと知らねーよ」と思って本書で調べると、しっかり赤字で触れられていたりします(私の「通読」なんて所詮この程度です。過去問演習なくして定着なし)。

 また、申し訳程度に頁下に一問一答形式の「豆テスト」がありますが、初めて通読する際には多少役に立ったと思います。必ずやる必要はありませんが、定着率が1割向上するくらいの効果はあると思います。

 しかし、本書の解説では理解が困難な内容もあります。平均的な受験生よりも遥かに恵まれた条件で受験したはずの筆者でも、「これじゃ分からんよ!」と叫んだことは数知れず、です。そういう意味では、過去に気象学について学んだ経験がないのであれば、理系・旧帝大出身者だろうと、謙虚に己を初心者と見なし、本書以外の参考書を最初選ぶと良いでしょう。

※ちなみに、私の場合は本書の分かり難さのために、先述の通り副読本を2冊追加で購入し通読しました。通読した後は、本書は信頼できる一冊として試験当日まで活躍しました。しかし、副読本という余計な支出が必要という点で、下記メリットの「安い」は該当しないかも知れません

メリット

  • 網羅性が高い

  • 内容が新しい

  • 一般・専門両方に対応

  • 頁下の「豆テスト」が地味に役立った(初期の頃限定)

  • 安い

デメリット

  • 理解させるつもりがない

  • 覚えさせるつもりがない

  • 「実技の基礎編」はほぼ不要

  • 章末の「これだけはかならず覚えよう」では不足


図解・気象学入門 改訂版 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図

 学科一般対策の副読本として、本書を通読しました。今思えば、まず最初に読むべき本は本書だったと思います。本書は、気象予報士試験対策本ではありませんが、気象学の入門書として非常に優秀です。つまり、分かりやすいのです。

 実際、ブルーバックスとしてはそれほど多くない「改訂版」であり、それだけ本書は人気なのでしょう。旧版はブックオフで立ち読みしましたが、改訂版の方が内容も充実し、分かりやすさも向上しているなと思いました。最初に読めば、今後の学習速度が改善されます。1冊余分に読むことになりますが、最終的には時間もお金も大幅に節約できるはずです。

メリット

  • 分かりやすい

  • 新書なので通勤中でもベッドの上でも読める

  • 安い

デメリット

  • あくまでも副読本


図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか

 本書は、前出の「図解・気象学入門」と同じ著者の方が書いたものです。端的に言えば、「図解・気象学入門」が一般対策なら、こちらは専門対策になります。

 本書も特に信頼できる1冊として、強くお勧めできます。「図解・気象学入門」とセットで購入しください。間違いなく、最初の一歩として最高の一冊となります。

メリット

  • 分かりやすい

  • 新書なので通勤中でもベッドの上でも読める

  • 安い

デメリット

  • あくまでも副読本


一般気象学 第2版補訂版

 白状しましょう。色々とWeb上を調べ、先人たちの知恵と痕跡を比較し、本書の存在を知りました。そして、最初に紹介した「読んでスッキリ! 気象予報士試験 合格テキスト 第2版」の通読に挫折した際、先に紹介した「図解~」ではなく、この「一般気象学」を通読し始めました。確かに面白く読めたのですが、結論から言えば不要です。大学の学部教科書的な体裁で、ついついこういうものを見ると興奮してしまうのですが、試験対策として効率が悪く、しかも一部で言われている様な辞書としての使用もほぼありません(傾圧不安定波くらいでしょうか)でした。

 個人的には、知的好奇心を満たす素晴らしい入門書(気象学の専門書としてですよ)であり、時間を忘れて読み耽ったこともありましたが、試験対策としては純粋に障害でした。結果的には2週間を溶かしてしまいました。これは大きな痛手で、試験の正答率をほとんど向上させることのない勉強に貴重な時間を充ててしましました。今思えば、ここに費やした時間を過去問演習に充てるべきでした。

 巷ではバイブルと評されようと、それは気象学のバイブルであって気象予報士試験のバイブルではありません。本書をバイブルと崇め、何度も気象予報士試験に挑戦するよりも、手段を選ばす正答率を上げることに全力で取り組み、さっさと気象予報士になってから、その時改めて本書と向き合いましょう。

※気象学の専門家ではないので断言はできませんが、筆者の経験からして、この程度の内容の本は専門書としてはレベルの低い、入門書に該当すると思います。ほとんど概説書です。恐らく、気象学として専門家を名乗るレベルに達するのであれば、本書を遥かに超えた専門性の高い複数の文献があるはずです。ですので、気象予報士合格後も、本書はあくまでも気象学の優しい入門書として、単なる通過点にしかならないと思います。ですので、過剰に持ち上げる必要はありません。

メリット

  • 知的好奇心を満たす

デメリット

  • 気象予報士試験対策には不適


気象衛星画像の見方と使い方

  実技対策に購入しました。結論から言えば不要です。ひまわり6・7号の時代の本なので、最新の内容ではありません。3~4回ほど本書で調べごとをしたくらいで、試験対策としてはほとんど役に立っていません。

 知的好奇心を満たすための一冊でした。


よくわかる高層気象の知識(2訂版)

 こちらも知的好奇心を満たすための一冊になりそうですが、意外なことに実技対策ではそこそこ活躍しました。10事例ほど過去問をこなし(頻出分野を網羅)た後に読みましたが、後付けで理屈を学ぶことができます。例えば、温帯低気圧の閉塞点と500Pha高度での強風軸の関係については、本書で実践的な説明がされており参考になりました。

 ただ、必要な一冊ではありません。時間が余っている人が読むものです。はっきり言えば不要です。


ひまわり8号 気象衛星講座

 付録のDVDによって、気象衛星について動画で学べるのかな?、と期待して買いましたが、そういうものではありませんでした。ですので、これも知的好奇心を満たすための一冊となります。気象予報士試験には不要です。


気象予報士試験精選問題集 2023年版(最新版あり)

最新版はこちら

 最終的に学科の過去問演習として特に活用した一冊です。試験本番までの残り2週間は、必死に本書を完璧に仕上げることに専念しました。学科の問題数は、一般が100問、専門が97問となります。解説は可もなく不可もなく、といった詳しさです。

 また、実技の過去問もありますが、解説は殺意が芽生えるくらいの分かり難さです。ほとんど文章による説明で、図解もありません。本書で実技の対策をすることはやめた方が良いです。

 とはいえ、試験直前に学科対策で何周もした問題集として愛着があります。もっと学科の問題数を増量して、解説の分かりやすさを5割増しくらいにすれば良いなと思いました。良問を文字通り精選しているのだから、尚更勿体ない一冊です。試験の傾向についてのまとめなど、データブックとしてもかなり優秀です。本当に惜しいです。

メリット

  • コスパは良い

  • 電子データ版(付録のはがきが必要)も入手可能

  • 学科の問題選択が良い

  • ぎりぎり電車内で使用可能なサイズ

  • 試験に関する統計資料が優秀

デメリット

  • 実技の解説はないに等しい

  • 誤植がやや多い(許容範囲)

  • 本としての構成(レイアウト)が悪く使いずらい


気象予報士かんたん合格テキスト <実技編>

 個人的には買わなければよかったなと思う一冊です。後述する別の実技対策本の購入を強く推奨します。

 まず、演習問題は過去問ではなく本書オリジナルのもので、本書執筆時は知りませんが、現在では実際の問題とは異なる癖の強い問題となります。実技試験の鬼門である、採点基準についても詳しく説明しているですが、実際のところ本書の基準が正しいのかは不明です。

 肝心の現象の説明も、正直それほど詳しいとは思いませんでした。また、知識事項として覚えるべき図や各基準についても説明していますが、ほとんど出題されない(されたこともない)ものについても、さも全て覚えるのが当然かのような体で紹介されています。はっきり言いますが、現在天気なんて、すべて覚える人は余程時間が余った人くらいです。それよりも、典型的な問題パターンをきっちり理解した方が高得点を期待できます。惑わされないでください。

 唯一これは良いなと思ったのは、可視・赤外画像による雲型の判断とその記述例です。この部分だけは、他所とは比較にならないくらい詳しく説明されていました。本書をそのまま覚えることによって、この手の設問を確実な得点源にすることができるのではないかと思います。

 何だかんだで本書については3週くらいこなしましたが、正直苦痛でした。無理してやる必要はなかったなと後悔しています。

メリット

  • 一部の解説は素晴らしい

デメリット

  • オリジナル問題が実際の問題と乖離

  • 出題頻度の低い事項と高い事項を区別していない


イラスト図解 よくわかる気象学【実技編】

 結論から言いますが、本書を完璧にマスターして、他の過去問をひたすら積んでいけば合格点に達すると思います。実技対策本として極めて強く推奨します。

 本書の優れている点は、頻出の典型的な7事例についてかなり分かりやすく説明していることです。正直くどいと感じましたが、初心者の方にはとても良いのではないかと思いました。また、試験の心構えであったり、暗記事項についても頻出のものにのみ絞って説明してあります。私の場合は、本書で紹介されている暗記事項をコピーして、直前の確認に使用しました。

 購入しませんでしたが、本書は気象予報士試験対策本のシリーズの一つで、姉妹本に学科の一般と専門分野のものがそれぞれあります。立ち読みしかしていませんが、かなり分かりやすさに配慮して作り込まれていると感じました。全てそろえるには少々高価ですが、通信教育に比べれば十分安価なので、独学にこだわりたい方は本書のシリーズを全て揃えると良いかもしれません。

メリット

  • 過去問の選択が素晴らしい

  • 過去問の解説が分かりやすい

  • 暗記事項等のまとめが素晴らしい

デメリット

  • 表紙がダサい(ちょっと恥ずかしい)


気象予報士試験 模範解答と解説

 このシリーズは、27、29,39回試験のものについても中古で揃えました。正直、学科も実技も解説が無駄に詳し過ぎて、試験に受かるためのテクニックの習得としてはかなり微妙です。

 しかし、唯一の例外は27回試験(平成18年度第2回)のものです。実技試験については、公式の模範解答について少々疑問が残ることがありますが、まさにこの点についてかなり批判的に論じているのが「気象予報士試験模範解答と解説 27」の特徴です。模範解答の矛盾点や至らない点、疑問点についてきちんと説明し、批判を加えた上で別解を提示しています。執筆を担当した方がどなたかは存じませんが、読んでいてとても参考になりました。

 個人的には参考になった「気象予報士試験模範解答と解説 27」ですが、過剰な期待はしないでください。これを読んだところで得点率が飛躍的に高まることはありません。単に、模範解答とはいえ完璧ではないということ、あるいは素人なりに感じていた模範解答に対する何とも言えない不信感の様なものに対して、一応の答えを示してくれるだけです。

 長くなりましたが、本シリーズについては、直近のものを1冊か2冊揃えれば良いと思います。


気象の数値シミュレーション

 興味があり、自分の専門とも多少関連があったので読みました。試験対策としてはほぼ役に立ちません。数値予報については気象庁のホームページで入手できる各種解説や資料で十分です。


気象の数値シミュレーション

 中古書店で見かけたため購入しました。気象予報士試験に参考になる部分もありましたが、不要です。ここで扱われている情報については、全て気象予報士試験用の参考書であればきちんの説明されています。
 
 しかし、過去の有名な台風についての詳細な解説は読んでいて面白かったですし、知的好奇心を満たすためであれば個人的には高評価です。時間が余って仕方のない人は読んでも良いでしょう。


新装版 富士山頂

 試験勉強のモチベーション維持のために読みました。実話です。


新装版 芙蓉の人

 同じくモチベーション維持用です。これも実話です。いや、本当に昔の人って凄かったんだなと感動しました。

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