見出し画像

4 大気における放射(20/20問)仮公開


1 令和5年度第2回(通算61回)問2

解法の確認

 最初に覚えていただきたいことは、シュテファン・ボルツマンの法則です。

$$
I=σT^4
$$

 左辺が放射量で、単位面積・単位時間当たりに放射されるエネルギー量です。右辺の$${σ}$$はシュテファン・ボルツマンの定数というものです。まあ、何かの定数ですね。値は覚える必要は多分ありません。最後に右辺の$${T}$$ですが、これは絶対温度です。

 これとアルベドの定義(エネルギーを反射する割合)さえ押さえていれば、大抵の問題は解けると思います。

(a) の検討

 シュテファン・ボルツマンの公式を思い出しましょう。温度の「4」乗に比例します。

(b) の検討

 反射の割合がアルベドの定義ですから、吸収する割合は「$${1-A}$$」となります。

(c) の検討

 地球から太陽への放射量$${I}$$は一定であることを利用します。

 まず、与えられた条件から$${I}$$を求めると、

$$
(1-0.3)I=σT_1^4
$$

$$
I=\dfrac{1}{0.7}σT_1^4
$$

 これをアルベドが変化した後の式に代入すると、

$$
(1-0.35)\dfrac{1}{0.7}σT_1^4=σT_2^4
$$

$$
T_2=\sqrt[4]{\dfrac{0.65}{0.7}}T_1
$$

 以上より「④」が正解です。


2 令和5年度第1回(通算60回)問5

知識事項の確認

 懐かしの「大気の構造」の分野の知識も混ざっています。復習を兼ねて解いていきましょう。

(a) の検討

 プランクの公式を思い出しましょう。これは放射量であって吸収量ではありません。また、大気は太陽放射に対して黒体と見なすことはできません。太陽放射の約半分の可視光はほぼ地球大気をスルーします。よって、「誤」となります。

(b) の検討

 成層圏で吸収されるのであって、成層圏界面までではありません。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 地球放射の再吸収というのは、つまり地球温暖化の原理ですね。もっとも寄与しているのは、二酸化炭素ではなく水蒸気です。よって、「誤」となります。

(d) の検討

 冷静に考えましょう。アルベドの定義は入射量に対する反射量の比です。つまり、地球の熱収支を考えるのであれば、$${(1-A)I}$$で表現される量が地球大気への入射量となります。これと全く同じ量の放射が地球大気の上層から宇宙に放射されることで、熱収支が釣り合っているのです。よって、「誤」となります。

 以上より「⑤」が正解です。


3 令和4年度第2回(通算59回)問5

解法の確認

 しつこいようですが、今回もシュテファン・ボルツマンの法則です。今一度公式を確認しましょう。今回は地球のアルベド($${A_E}$$)込みの式です。

$$
(1-A_E)I=σT^4
$$

 今回は左辺に注目します。問題で与えられた仮想の惑星は、太陽までの距離が地球の半分です。つまり、4倍の放射が地球に降り注ぎます。それにも関わらず温度が地球を同じなのは、仮想惑星のアルベド($${A_V}$$)の差によるものです。式で表すと以下の様になります。

$$
(1-A_V)4I=σT^4
$$

 さて、ここまでの2つの式は、右辺が等しいので等号で結ぶことができます。

$$
(1-A_E)I=(1-A_V)4I
$$

 これに与えられた条件を代入して整理すると、

$$
A_V=\dfrac{3+A_E}{4}=\dfrac{3.3}{4}=0.825=0.83
$$

 よって「④」が正解です。


4 令和4年度第1回(通算58回)問5

知識事項の確認

 今回覚えておくべきことは以下の通りです。

  • 地球のアルベドは約0.3

  • 水蒸気も赤外放射をする

https://www.data.jma.go.jp/env/radiation/know_adv_rad.html

(a) の検討

 地球のアルベドは0.3程度です。よって、「正」となります。

(b) の検討

 水蒸気の増加により下向きの長波放射が増えます。もちろん、気温分が同じであることも重要です(シュテファン・ボルツマンの公式を思い出してください。温度の4乗に比例して放射量は変わります)。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 シュテファン・ボルツマンの公式を思い出しましょう。上層ほど温度が低いので、その分雲による長波放射も弱まります。つまり、放射冷却の程度も変化します。よって、「誤」となります。

 以上より「②」が正解です。

※地面から上向きに長波放射が発生し、地面が冷却されること。放射された長波は、雲により吸収され再度下向きに放射されて地面に吸収されます。そのため、雲が少ない方が地表付近が冷却されることになります


5 令和3年度第2回(通算57回)問6

解法の確認

 地軸や季節による南中高度の変化と日射量の関係といった、中学理科程度の問題となっています。はっきり言えばサービス問題です。義務教育の内容なので、躓いた方はしばらく姿勢を正してください。

※私は正座しました

(a) の検討

 書いてある通りです。思考が止まった方は、中学校の理科の復習をしてください。とにかく「正」となります。

(b) の検討

 高度角をそれぞれ計算してみましょう。

 まずは北緯6.5°ですが、

$$
α=90°-6.5°-23.5°=60°
$$

 天頂と比べ$${sin60°=0.87}$$倍の日射量になります。

 同様に北緯36.5°を計算すると、

$$
α=90°-36.5°-23.5°=30°
$$

となりますので、天頂と比べ$${sin30°=0.5}$$倍の日射量になります。

 よって、$${\dfrac{sin60°}{sin30°}=\dfrac{0.87}{0.5}=1.74}$$となるので、74%の差となります。したがって「誤」となります。

(c) の検討

 書いてある通りです。温度差にを解消するための南北の熱輸送に、コリオリ力等が加わった結果、複雑な気象現象が発生します。「正」となります。

 以上より「②」が正解です。


6 令和3年度第1回(通算56回)問5

解法の確認

 少し面倒な問題ですが、機械的に解けます。

 最初に、大気がない場合の太陽放射$${I}$$と地面の上向き長波放射について考えます。

$$
I=σT_0^4
$$

 次に、太陽放射$${I}$$と大気の上向き長波放射($${大気の温度:T_A}$$)について考えます。これらの量は、地球の気温が一定であるために等しいはずです。

$$
I=σT_A^4
$$

 同様に、地表面についても考えてみます。

$$
I+σT_A^4=σT_G^4
$$

 ポイントは、大気の長波放射は上下ともにその量が等しいことです。

(a) の検討

 地表面が吸収する太陽放射と量と大気の上向き長波放射の量は等しいので、「正」となります。

(b) の検討

 シュテファン・ボルツマンの公式を思い出しましょう。「正」となります。

(c) の検討

 これまでの式を用いて、$${I}$$を消してみると、

$$
σT_A^4=σT_0^4
$$

これを解いて、

$$
T_A=T_0
$$

となります。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 これまでの結果から、$${T_G}$$を求めます。地面の放射収支から、

$$
σT_0^4+σT_0^4=σT_G^4
$$

 これを解いて、

$$
T_G=2^{1/4}T_0
$$

となるので、「誤」となります。

 以上より「②」が正解です。


7 令和2年度第2回(通算55回)問5

知識事項の確認

 難問というか、悪問だと思います。今回学ぶべきことは以下の通りです。

  • 太陽放射のスペクトルのピークは可視光付近の波長

 これについては、お手元の参考書でグラフを必ず確認してください。

 また、(d)が悪問である理由です。応用が利くような何かがある訳でもないので、正直どうしようもありません。

(a) の検討

 知識事項の通り、ピークは可視光です。紫外線(敵)にピークがないのはせめてもの救いですね。とにかく「誤」となります。

(b) の検討

 多くはないですが存在します。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 地球に到達する太陽放射にに対し、反射される放射の割合がアルベドの定義です。よって、「誤」となります。

(d) の検討

 夏至(一年中ですが)の北極は、一日中太陽の高さが変わりません(自転軸上なので。イメージできない方は地球儀を使いましょう)し、その高度$${α}$$は以下の通りです。

$$
α=90°-90°+23.5°=23.5°
$$

 つまり、24時間23.5°の高度に太陽があり、日射量は天頂からの日射と比較して$${sin23.5°=0.4}$$倍となります。

 一方赤道では昼と夜の時間は一年中等しいので、平均して夏至の赤道での日射量が天頂の8割未満であれば、24時間での合計量は北極の方が大きいと言えます。実際、南中高度は76.5°で、$${sin76.5°=0.97\risingdotseq1.0=sin90°}$$となります。理系の方なら、$${cosx=1-x^2}$$という近似が浮かんだと思います。

 さて、ここまで来ればあともう少しです。赤道で見える太陽の動きはほぼサインカーブなので、その日射量の平均値は、天頂と比較し$${\frac{1}{\sqrt[]{2}}=0.7<0.8}$$倍になる(電圧の実効値と同じ発想です)と分かります。

 よって、北極の方が24時間を合計すれば日射量が多いと言えます。つまり「正」となります。

 以上より「④」が正解です。

※こんな問題を電卓なしで試験中に解かせることに、何か意味があるのでしょうか。NAPS10というとてつもない計算量のスパコンを使って気象予報をするのにも関わらず、肝心の気象予報士試験は電卓はおろか計算尺すら使えないのはおかしいと思います


8 令和2年度第1回(通算54回)問6

知識事項の確認

 飽きてきました。ひょっとしたら、過去問の解説を作ることが一番の試験対策になるかも知れませんね。

(a) の検討

 久しぶりの紫外線に関する問題です。UV-A~Cについてはきちんと復習をしておきましょう。紫外線は、地上に到達する前に大部分が吸収されます。よって「正」となります。

(b) の検討

 記述の通り、雲は太陽放射を反射する一方で、地表からの長波放射を吸収し再放射する働きもあります。よって「正」となります。

(c) の検討

 大気の窓とは、長波放射を透過する波長帯のことです。それ以外の波長帯だと吸収されます。設問では、意味が逆になっています。よって「誤」となります。

 以上より「②」が正解です。


9 令和元年度第2回(通算53回)問4

知識事項の確認

 やっと違う傾向の問題になりました。今回は学ぶことが多そうです。

 さて、今回のテーマである錯乱ですが、これは学科専門でも出題されていたと思います。パターンは決まっているので、さっさと覚えて得点源にしたいものですね。

 レイリー散乱は光の波長よりも小さい粒子(可視光の場合は空気分子)による散乱で、夕焼けや空の青さの原因です。波長が短いほど、つまり青色側の方が散乱しやすく、波長の長い赤色側は散乱しにくい。昼間空が青いのは、散乱しやすい青色側が主に散乱するからです。これに対して夕日が赤いのは、太陽光線が大気を斜めに通過し、より長い距離で散乱するために赤色の光も散乱するからです。

 ミー散乱は波長と同じくらいの大きさの粒子(可視光の場合はエーロゾル)によって発生する散乱で、気象予報士試験では暈(かさ)(ハロー現象)の原因として言及されます。散乱の強度は波長にそれほど依存しないので、どの色も均質に混ざり、白色になります。

(a) の検討

 レイリー散乱は、波長よりも小さい粒子によって引き起こされるのでした。つまり、「小さい」となります。

(b) の検討

 波長が短い方が影響を受けます。空の色の原理でした。よって「短い」となります。

(c) の検討

 レイリー散乱の散乱の原因となる粒子は、可視光の波長と比較して十分に小さいサイズ、具体的には空気分子になります。小さいですね。「空気分子による太陽光の散乱」が正解となります。

 以上より「②」が正解です。


10 令和元年度第1回(通算52回)問4

知識事項の確認

 プランクの法則及びシュテファン・ボルツマンの法則に関する問題です。簡単に復習しましょう。

$$
I=σT^4
$$

$$
λ_m=\dfrac{2897}{T} [μm]
$$

 上の式はもう大丈夫だと思います。シュテファン・ボルツマンの法則ですね。これは、放射エネルギーの合計(全ての波長の合計)は絶対温度$${T}$$の4乗に比例するということを意味しています。

 下の式がプランクの法則で、放射エネルギーが最大となる波長$${λ_m}$$と温度の関係式です。試しに、これに太陽の温度6000Kを代入してみますと、482[nm]と分かります。これは可視光の波長である380~770[nm]に収まります。実際、太陽の放射は可視光がメインで、約半分(47%)に相当します。残りの大半(47%)は赤外線領域で、更に残るのが紫外線(敵)(7%)です。意外と紫外線は割合としては少ないのです。

(a) の検討

 シュテファン・ボルツマンの法則より、「$${T^4}$$」となります。

(b) の検討

 プランクの法則より、「反比例」となります。

(c) の検討

 プランクの法則に代入すると、「0.5」μmとなります。

 以上より「⑤」が正解です。


11 平成30年度第2回(通算51回)問2

知識事項の確認

 「令和2年度第2回(通算55回)問5」にやや類似した問題です。

(a) の検討

 赤道は、太陽放射から受け取ったエネルギーが有り余っている(熱収支として正)ので、その余りが南北の極方向に輸送されます。その結果、様々な気象現象が生じるのでしたね。つまり、長波放射量よりも太陽放射量の方が多いので「正」となります。

(b) の検討

 極付近は赤道と逆で、長波放射量と太陽放射量の熱収支は負となります。よって「誤」となります。

(c) の検討

 シュテファン・ボルツマンの法則を考えましょう。赤道の方が地表の温度が高いので、放射量も大きくなります。よって、「正」となります。

(d) の検討

 恐らく理系でない方には難問です。まずは、赤道上の太陽放射量$${I_0}$$と北緯80°の太陽放射量$${I_{80}}$$及び赤道上の長波放射量$${G_0}$$と北緯80°の長波放射量$${G_{80}}$$について不等式を立てます。

$$
I_0-G_0>0
$$

$$
I_{80}-G_{80}<0
$$

 上の式をまとめると、

$$
I_0-G_0>0>I_{80}-G_{80}
$$

 これを変形すると、

$$
I_0-I_{80}>G_0-G_{80}
$$

 よって、「正」となります。

 以上より「②」が正解です。


12 平成30年度第1回(通算50回)問5

知識事項の確認

 散乱に関する問題です。大してバリエーションはないので、沈めるつもりで覚えましょう。

(a) の検討

 アルベドは、地表面だけではなく大気や雲も含まれます。跳ね返せば何でもOKなイメージですね。よって、「誤」となります。

(b) の検討

 レイリー散乱は波長に散乱強度が依存します。よって「誤」となります。

(c) の検討

 これは国語の問題です。ミー散乱は、その原因となる粒子が波長と同じくらいの大きさの時に見られます。よって、「誤」となります。

(d) の検討

 これはやや難しい問題です。気象レーダーの波長が数センチ程度であることを知っていれば、水滴がミリメートル以下の大きさであることから、レイリー散乱であると見抜けます。しかし、学科専門の対策前ですと、気象レーダーの波長はご存知ないかもしれません。とにかく「正」となります。

 以上より「④」が正解です。


13 平成29年度第2回(通算49回)問5

知識事項の確認

 黒体の定義について簡単に触れておきましょう。

 黒体とは、「外部から入射してくる電磁波を、全ての波長にわたり完全に吸収し、かつ、熱放射できる仮想の物体」です。

(a) の検討

 大気は太陽光線をほぼ透過します。つまり黒体ではありませんね。よって、「誤」となります。

(b) の検討

 地球のアルベドは0.3です。つまり太陽放射量の3割は反射しています。よって「正」となります。

(c) の検討

 プランクの法則を思い出しましょう。

$$
λ_m=\dfrac{2897}{T} [μm]
$$

 つまり、エネルギー強度が最大となる波長は温度に反比例するので短くなります。よって、「誤」となります。

 以上より「④」が正解です。


14 平成29年度第1回(通算48回)問6

解法の確認

 久しぶりの計算問題なので精神が高揚します。理系の方は、ここで引き離してください。そうでない方は食いついてください。

 基本的なことですが、赤道において正午に太陽が天頂に位置するのは春分の日と秋分の日です。

(a) の検討

 地点X(緯度60°)の直達日射量を$${I_X}$$、地点Y(赤道)の直達日射量を$${I_Y}$$とします。両者の関係は、

$$
I_X = I_Ycos{60°} = 0.5I_Y
$$

 となります。

 よって「0.5」が正解です。

(b) の検討

 実際には、太陽から地球上のある地点に到達する短波放射量と、その地点の地表による長波放射量は釣り合いません。この収支は赤道付近では正ですが、極付近では負となり、そのため赤道と極付近の間で過剰・不足の解消のための熱輸送が発生しこれにコリオリ力が加わって、各種気象現象(台風とかですね)が発生するのでした。

 本問題では、この収支が仮に釣り合うとしたらどうなるか、ということです。

 まずX地点ですが、

$$
I_X=σT_X^4
$$

となりますので、

$$
T_X=\sqrt[4]{\dfrac{I_X}{σ}}
$$

 次にY地点は、

$$
I_Y=σT_Y^4
$$

$$
T_Y=\sqrt[4]{\dfrac{I_Y}{σ}}
$$

 これらの式に加え、$${I_X = I_Ycos{60°} = 0.5I_Y}$$を用いて$${T_Y/T_X}$$を求めると、

$$
\dfrac{T_Y}{T_X}=\dfrac{\sqrt[4]{\dfrac{I_Y}{σ}}}{\sqrt[4]{\dfrac{I_X}{σ}}}=\sqrt[4]{\dfrac{I_Y}{I_X}}=\sqrt[4]{\dfrac{I_Y}{0.5I_Y}}=\sqrt[4]{2}=1.19
$$

となります。よって、「1.19」となります。

 以上より「①」が正解です。

※ちなみに、太陽からの短波放射量と地表の長波放射量が釣り合うのは、南北ともに35°付近です


15 平成28年度第2回(通算47回)問6

知識事項の確認

 温室効果ガスやシュテファン・ボルツマンの法則、大気の特性についてのバランスの良い問題です。

(a) の検討

 温室効果の高い気体は順に、水蒸気、二酸化炭素、メタン、フロン(フロン11及び12併せて)、一酸化二窒素です。よって、「誤」となります。

(b) の検討

 大気の窓とは、長波放射を透過する波長帯のことです。よって「誤」となります。

(c) の検討

 シュテファン・ボルツマンの法則を思い出しましょう。雲は上層ほど温度が低くなるので、長波放射も弱くなります。よって「誤」となります。

 以上より「⑤」が正解です。


16 平成28年度第1回(通算46回)問5

解法の確認

 楽しい計算問題に、興奮を隠せません。

 まずは設問中の大気層の放射収支の式について見てみましょう。

$$
2σT^4_a=0.1I_S+σT^4_g
$$

 これの左辺は大気が上下に放射する長波放射です。なので係数に2があるのです。そして右辺は、設問中にもある通り、太陽からの短波放射のうち吸収される10%と、地表から放射されてきた長波放射の合計です。

 これが理解できれば問題ありません。では、各設問に移りましょう。

(a) の検討

 地表面の熱収支について式を立ててみましょう。

$$
σT^4_g=0.9I_S+σT^4_a
$$

 左辺は地表からの上向き長波放射です。そして右辺は、大気で吸収されずに地表まで到達した90%の太陽由来の短波放射と、大気からの下向きの長波放射です。よって「1」が正解です。

(b) の検討

 これまでの2つの式から$${T_a}$$を消すと、

$$
σT^4_g=1.9I_S
$$

となりますので、「1.9」が正解です。

 以上より「②」が正解です。


17 平成27年度第2回(通算45回)問5

知識事項の確認

 一瞬考えてしまいますが、冷静になれば今までの知識で解くことができます。しかし、それでもややひっかけ的な要素があります。

(a) の検討

 「令和元年度第1回(通算52回)問4」を思い出しましょう。

 太陽放射の最大強度となる波長は、プランクの法則より可視光付近の約480nmになります。実際、太陽の放射は可視光がメインで、約半分に相当し、残りの大半は赤外線領域です。ここから更に残るのが紫外線(敵)でしたね。よって、「正」となります。

(b) の検討

 可視光線は大気をほぼ通過します。吸収されるのは地表からの長波放射です。よって「誤」となります。

(c) の検討

 地球のアルベドが0.3なのでこれは正しいなと考えた方は、冷静になってください。

 確かに、地球のアルベドが0.3であるので、地球大気の上端と比較すれば、70%がどこかで吸収されたのは間違いありません。しかし、その70%の全てが地表面とは限りません。途中、大気で吸収されるものもあるのです。実際、反射されなかった70%の内、地表面で吸収されるのは約71%で、残りは大気に吸収されています。よって「誤」となります。

 以上より「③」が正解です。

※太陽放射のうち、大気で吸収されるのは紫外線(敵)や赤外線(長波)です。可視光はほぼ吸収されません


18 平成27年度第1回(通算44回)問5

知識事項の確認

 暗記してないと解けない問題です。嫌な問題です。

 地球のアルベドは0.3です。つまり、30%が反射されて宇宙に追い返されてるのですが、それはどこで起きているんでしょうか。

 実は、地表面による反射よりも、大気中で雲やエーロゾルに反射される方が約2.5倍多いのです。意外なことなのでしっかり覚えておきましょう。

(a) の検討

 地球が反射して宇宙に追い返す太陽放射3割の、その更に約7割が大気で起きています。つまり「23」が正解です。

(b) の検討

 地球が反射して宇宙に追い返す太陽放射3割の、その更に約3割が地表で起きています。つまり「9」が正解です。

(c) の検討

 地球が吸収する太陽放射7割の、その大部分は地表で吸収されています。大気中では設問によると約19%ですね。となると、$${70-19=51\fallingdotseq49}$$。つまり「49」が正解です。

 以上より「④」が正解です。


19 平成26年度第2回(通算43回)問5

解法の確認

 計算問題ですが、比較的簡単に解けるのでマスターしましょう。

 まずは設問中で与えられた条件をもとに、地球の放射平衡について考えます。

$$
I_0(1-A_0)=σT^4_0
$$

 あとは、これとは別に太陽と地球の距離や仮想惑星の半径が関連します。特に仮想惑星の半径は、入射量を決める断面積$${π^2}$$だけではなく、放射量を与える表面積$${4πr^2}$$とも関係します。

(a) の検討

 太陽までの距離が半分になると、到達する太陽放射の強度は4倍になりますが、仮想惑星の半径が半分なので、断面積が$${\dfrac{1}{4}}$$となり、結果打ち消しあって変わらず、ということになります。よって、「誤」となります。

(b) の検討

 太陽までの距離が倍になっているので、到達する太陽放射の量は$${\dfrac{1}{4}}$$となります。更に、アルベドから求められる仮想惑星の太陽放射の吸収率も地球の半分になっています。これらをすべて合わせると$${\dfrac{1}{8}}$$となります。よって、「誤」となります。

(c) の検討

 ひっかけ問題?です。これまでの問題では太陽からの入射量(左辺)の議論のみでした。今回は仮想惑星の黒体放射も考えるのですが、仮想惑星の半径が増加すると、それに伴い表面積も増えます。そうすると、放射量も比例して増加することになります。これを組み込んで計算しないといけません。

 ただし、左辺である入射量に関する議論については、$${R}$$と$${r}$$は(a)と同じ論理で打ち消し合っているので省略し、アルベドのみで考えます。

 まずは仮想惑星について平衡式を立てます。右辺の$${1.2^2}$$は、仮想惑星の表面積と地球の表面積の比となります。

$$
I\times(1-A)=σT^4\times1.2^2
$$

 これをもとに$${I=I_0}$$と$${1-A=1.2(1-A_0)}$$を合わせて考えると、

$$
I\times(1-A)=I_0\times1.2(1-A_0)=σT_0^4\times1.2
$$

 これが仮想惑星についての平衡式の右辺と等しいので、

$$
σT_0^4\times1.2=σT^4\times1.2^2
$$

となるので、更に整理すると、

$$
T_0^4=T^4\times1.2
$$

$$
T_0^4>T^4
$$

$$
T_0>T
$$

 よって、仮想惑星の温度は地球の平衡温度よりも引くなるので「誤」となります。

 以上より「⑤」が正解です。


20 平成26年度第1回(通算42回)問5

知識事項の確認

 基本事項の問題です。確実に解けるようにしましょう。

(a) の検討

 レイリー散乱は、波長の4乗に反比例sます。つまり「誤」が正解です。

(b) の検討

 ミー散乱の散乱強度は波長に存しません。つまり「正」が正解です。

(c) の検討

 与えられた式に対して、地球の平均温度となる300Kを代入すると、約20倍程度になります。よって「誤」が正解です。

 以上より「⑤」が正解です。


 本解説で使用した問題の著作権は一般財団法人気象業務支援センターに帰属します。本問題に対する解説は同センターから許可を受けた上で作成した筆者独自のものであり、同センターのものではありませんのでご了承ください。

 また、本解説は筆者個人の理解に基づいて制作したものであり、その科学的妥当性を保証されたものではないことをご了承ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?