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【書評Unlimited】「ディズニー」と「会計」の関係って?

本日の1冊

「ディズニー魔法の会計」秦美佐子・著
中経出版

こんにちは。少しでもお金が手元にあるとアマゾンや書店で本を買い込み、「読書貧乏」と化している五十路MANです。

本日ご紹介する一冊は、ディズニー大好き女子の著者が、公認会計士の立場からディズニーの人気の秘密とビジネスモデルをストーリー形式で解説した本。

ブライダル会社の経営者を父に持ち、経営コンサル志望就活生の美城は、第1志望のローズ社面接試験がディズニーランドで行われることになったと知って大喜び。10年間通い続けた経験をもとに感覚とフィーリングだけで乗り切ろうとしますが、就活ライバルの麗子やスパルタ面接官からのダメ出しで合格は遠くなるばかり。しかし、持ち前の明るさと素直さを武器に巻き返しを図り、徐々に会計の知識を習得していくというお話です。

東京ディズニーランドというと、創業者の素晴らしい経営理念やゲストを虜にするホスピタリティばかりがクローズアップされがちです。しかし、そういった切り口の関連書籍はすでにたくさんあるので、本書はそういった視点とは一線を画したビジネス寄りの内容となっています。

もともとテーマパーク業界は人気と天候に左右される非常に不安定なビジネス。たとえ「ディズニー」という強力なブランドを持っていても、サービスの質が下がったり設備やアトラクションが陳腐化すれば、飽きてしまったファンから見放されて閉鎖に追い込まれる厳しい世界です。

本書では、「売上」「コスト」「投資」「資金調達」というポイントから、常に入場者で満員にする方法や米国ディズニーとオリエンタルランドとの関係、とうやって資金を集めどこに投資しているのかといったビジネスモデルを分析しており、読み物として楽しめることはもちろん、就活で自分の志望企業を分析したい学生さん、財務諸表の読み方や財務会計の知識が必要となる管理職候補の方々にもおススメです。

私は、社会人なりたての頃にたった2回しか行ったことがありませんが、その時にこうした会計の知識があればもっと興味深く観察できただろうなと感じました。

それでは、ポイントとなるキーフレーズをチェックしていきましょう。

1日あたりの来客者数がわかったら、そこに平均の客単価をかければ、1日の売り上げが出る。それに営業日数をかければ毎月の売上、12ヵ月分を合計すれば年商だ。会社を見る目を養いたければ、日頃から訓練することだな
ディズニーランドの強さの秘密:立地
①広大な敷地(1日では回りきれない規模)
②巨大なマーケット(50キロ圏内に3,000万人)
③便利なアクセス(東京駅から電車で15分)
ディズニーはあらゆる世代の人向けと言いながら、実際はかなりの部分で女性目線に立っている。デートの行き先の主導権を握っているのは女だから、その心をとらえることができれば、男もこどももついてくるという寸法だ
会社の経営を見るときは、支出があったら収入がいくらになるかを計算し、収入が得られたらいくら支出したのか集計すべきだ。両方を合わせることで、ようやく損得がはっきりするんだ
飲食業の場合、材料費率を30%以下に抑えるのが基本だ
本当に大事なものはつねに固定費ということだ
一つのコンテンツを多重利用することで、価値を何倍にも増やせる。シングルリソース・マルチユースってことだな
『ディズニーランドはいつまでも未完成である。現状維持では、後退するばかりである』これはウォルトの言葉だ。客にあきられないためには、成長し続けなければならない
わかった!ハウス食品といえばカレーね!スポンサーになれば、広告宣伝費だけじゃなくて、自社商品をパーク内で販売できるのね。お客さんが多いから、ここに出店すれば売上も伸びるはず
本当のお金の動きを知りたければ、キャッシュフロー計算書を見ることだ
会社が大きな借金をするのは設備投資のときよね。ディズニーシーとホテルミラコスタ、それにディズニーランドホテルの建設費とその時の負債額、開業してからの年数を考えると、いま残っている負債の残高はだいたい1200憶円ぐらいかな
最高の舞台をつくり上げるためには、リスクを恐れないチャレンジ精神と勇気がいるんだ

会計を手軽に学びたい学生、社会人向けの読み物

経営コンサルタントで起業家の大前研一氏は「これからのビジネスマンの三種の神器は『経営』『英語』『IT』だ」と主張していますが、なかでも会計は、ビジネスパーソンなら覚えておいて決して損はない分野でしょう。

日本を代表する企業の経営手法を、会計目線、マーケティング目線から学べるユニークで実務的な内容です。

さあ、新しい会計の世界への扉をひらいてみましょう。

目次

第1話 なぜディズニーランドはいつも満員なのか?
第2話 夢の国の維持費はいくらか?
第3話 夢の国の建設費はいくらか?
第4話 夢の国は借金だらけ?
第5話 縮小する業界で生き残る方法
あとがき

編集後記

30代で公認会計士を目指した経験のある私としても、今回紹介した本の内容はとても勉強になりました。

文系だろうが理系だろうが、社会人になれば「数字」にまったく関わらない仕事はほぼ皆無です。営業担当者や経営者でなくても、親や友達、自分の勤めている会社がどのような経営状態なのか、自分で分析できることはとても強いセールスポイントになるでしょう。

ストーリーの落ちもちょっとひねりが利いていて、新しい知見を得た快感とほっこりしたハッピー感を同時に楽しめました。


関西在住のWebライター/文筆家のタマゴです。私の書く文章があなたの人生を豊かにすることができていれば、ぜひサポートをお願いいたします。