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あの夏のペプシ300

中学を卒業して、私は高校ではなく高専に進学した。ロボコンで有名なあの高専である。理由は早く電気工学に関する知識を身につけて、仕事がしたかったからだ。

高専ではブラスバンド部に入った。全寮制だったのだが、毎朝グランドでサッカーをやってる集団がいた。どう見てもサッカー部には見えないその集団はブラスバンド部の朝練習だった。

私は楽器の経験など全く無いので、叩くだけだろうと考えてパーカッションを選んだ。単純ではなかったけど叩くだけというのは間違ってはおらず、シンプルで楽しかった。

夏休みに入ると毎日練習があった。夏休み期間中は大部分の期間が寮が閉鎖になるので、自宅から通うことになる。自宅から学校までは電車とバスで2時間もかかった。

更に駅から学校までは、20分以上炎天下のたんぼ道を歩いていくしかない。今で言う熱中症、当時の日射病ギリギリの状態で歩く。汗が滝のように流れる。

途中に1軒、田舎の何でも屋のような店があった。ここで水分補給のために、当時発売されたばかりのペプシ300を買うのだ。もちろん瓶である。価格はそのままで250mlから300mlに増量された商品だ。おばちゃんが栓を開けてくれたら一気に流し込む。

Joe Haup

至福の瞬間である。

またこの栓(いわゆる王冠)がくじになっていた。王冠の裏のゴムシートみたいなのを剥がすと、10円とか50円とか当たりが出た。結構な確率だったように思う。

この後私は、誰にも告げること無く、夏休み中に高専を自主退学した。特別嫌なことがあったのではなく、ここではない、ここにいてはいけないと思ったから辞めた。

梅雨明け直後のひたすら青い空を見ると、あの夏のペプシ300のことを思い出す。



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