週刊isologue(第459号)2018年のベンチャーのオプション実務展望(その1)

今週と来週は、上場前後の資本政策シリーズをちょっとお休みしまして、揺れ動く2018年のストックオプション実務について考えてみたいと思います。

今週は先日1月12日に企業会計基準委員会(ASBJ)から公表された有償ストックオプションに関する「取扱い」の影響について考えてみたいと思います。また来週は、最近一部のベンチャーでもブームになりつつある「信託型有償ストックオプション」が、この「取扱い」の制定でどのような影響を受けるか、を考える予定です。

今週の要旨

・従業員に無償で交付される未上場ベンチャーのストックオプションは、通常は、会計上、費用計上しなくていいのが普通。
・個人の税務上も、将来行使して取得した株式を売却した時にキャピタルゲインに約2割の税金のみがかかる分離課税となる「税制適格ストックオプション」になるのが一般的。
・生の株式だと高くて買えない従業員等がほとんどになってしまうのに対し、オプションは「株式を買う権利」なので「タダ」で従業員の負担なしに付与できるところが、ストックオプションの本来のメリットでした。
・ただし、この税制適格ストックオプションには、年間の行使額が1200万円以下に限られるなど様々な(例えば企業価値が数十億円になったスタートアップでの大物CXOの採用などには)使いにくい要件が付いています。
・そこで「報酬」とは関係なく「有価証券投資」としてやってますよ、という体裁で、時価で発行したストックオプションを従業員が取得するという「有償ストックオプション」というスキームが登場して、結構な数の上場企業や未上場企業で使われてきました。
・しかし、ベンチャーのオプションの時価をシンプルに計算すると、非常に高く(例えば株式の5割くらいに)なってしまいます。オプションは「タダ」なのがメリットだったはずなのに、株式の5割もオプション料を払うのだったら、あまり意味がない。
・そこで、様々な条件(一定の条件が満たされた場合には、オプションの権利が失効する条件=ノックアウト条項)をわざわざ付けて、有償ストックオプションの価値を下げることが行われてきました。
・今回のASBJによる「取扱い」の公表は、「いくらなんでもちょっと下げすぎじゃね?」という問題意識が生まれてきていたことが背景にあると思います。
これは、一部の過度に安いストックオプションが問題になるだけで、一般の有償ストックオプションには影響はないかというと、意外に余波は大きく、有償ストックオプションというスキーム自体が(特にスタートアップでは)使われなくなる可能性があるのではないかとも思います。
・しかし、結論としてスタートアップがすごく困るかというと、あまり困らない気がします。
・優先株式を発行しているミドルステージまでのスタートアップは、CXOなどの大物については生株の発行(所得税法施行令84条1項の適用を受けないリストリクテッド・ストック)、一般従業員については引き続き「無償ストックオプション」を使えばいいのではないかと考えられます。


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