枕の数を数えたら、人類学者に褒められた―<世界>は細部に宿るから



2008年の夏、ラオス。

「私たちが行った家には、枕が23個ありました」

夏季集中授業で、現地の文化を知るために、ラオスの農家を訪ねた学生のグループが、大真面目な顔でこう言った。

それを聞いた引率の西村正雄先生(文化人類学者)が、応じる。「それはいいところに目を付けた。そういうところが大事なんです!」。

手放しの絶賛である。

え......そこ? 

と人はふつう思うかもしれない。でも、文化人類学はまさに「そこ」を見る学問だ。

フィールドトリップのアシスタントとしてラオスに2週間滞在した。

なぜ枕の数が大事なんだろう。

(枕よりもっと大事なことがあるでしょう!)

家族の人数に対して枕が多いということは、一度にたくさんの人がこの家を訪れるということ。しかも訪れるだけではなく、そこで寝泊まりすることを示す。

いまの日本の1軒家に十数人の人が集まり、さらに寝泊まりすることはあまり考えられない。

枕が23個あるかれらの日々の暮らしとは、時間の流れとは、そして人々の交流とはどんなものなのだろう。

枕というありふれた日用品からラオスの農村の人々の日々暮らしが垣間見える。

世界は細部に宿るから。





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