なぜ「おじさん」は英会話ができないのか?

会社員相手に英語を教えているネイティブの友人が、日本人の「おじさん」が英会話ができない理由を話してくれた。

友人曰く、英会話のポイントは3つ。

1.自分事を話す

2.相手の話しにあいづちを打つ

3.質問をする

日本の「おじさん」に徹底的に欠けているのは3番目なのだそう。

質問をされたら答えるけど、自分からは何も言わない。だから会話が回らない。

友人はその辺りを何度もレッスン中に話すのだが、そこはほとんど変わらない。質問をしないという「おじさん」のメンタリティはいかんとも動かしがたいのだ。

わかる。

ものすごいわかる!

相手が自分のことを話していても、すぐに自分の話しにすり替えて、永遠と自分の話をしつづける「おじさん」。

壮大な演説が終わった後、相手に話を振ることもせず、黙ってしまう「おじさん」。

加えて質問のできない「おじさん」はほぼ9割型「"教えたい"おじさん」である。こちらが何か言うと、「それは間違っている」「私の若いころはね…」と訓示を垂れ始める。

誰もあなたに人生相談なんてしてないのである。

「なぜあなたはそう思ったか?」くらいの気が利いた質問もできないのか。

そしてこの傾向は地位の高い「おじさん」ほど強くなる。


「会話」とは壮大な共同作業だ。

「目の前のあなたはどんな人なんだろう」という好奇心がお互いにあれば、それは相手を知る絶好のいい機会になる。新しい世界がコーヒー一杯で目の前に広がる。質問はそんな世界に入る混むための重要なツールだ。

でも「おじさん」にとって会話とは接待される場なのである。

周りにいる人間の役割は、「おじさん」のビールが空になったらついであげ、「すごいですね」、「素敵ですね」、「勉強になりました」と褒めたたえる。「おじさん」はそこにただ座っていればいい。



さてここからが本題である。

なぜ「おじさん」は質問ができないのだろう。

これは「おじさん」の社会背景と強いかかわりがあると思う。

一言でいうと、「おじさん」は、質問が必要な人生を歩んでいない。

日本の社会は空気を読ませる社会である。組織の下の者は上の者の意図を汲み、先回りして動くことが求められる。

バイト先の上司が、「おれらの世界では先輩にカラスが白と言われたら、カラスは白なんだ」と、誇らしげに言っているのを大学生の時に聞いた。

いまは状況は少し変わっているかもしれないけど、昭和生まれであることが多い「おじさん」たちは、少なからずこういう社会を生きてきただろう。

こういう社会に質問はいらない。

求められるのは、目上の人間や、力のある人間のマインドに、自分のマインドをすり合わせることである。

もちろん「私のやり方は間違っていないでしょうか?」といった質問は許される。

一方で「私はこう思いますが、あなたがそう思う理由は何ですか?」といった、<相手と私は違う人間>という前提を基本にした質問はアウトだ。

こういう質問を下手にしつづけると、目上の人間から「素直じゃない」「プライドが高い」といったレッテルを貼られる可能性すらある。

質問のできない「おじさん」は、上意下達の社会に見事に適応した成果なんだと思う。

そう思うと少し切なくなるけれど、やっぱり演説はやめてほしいんだよね。

ここでいう「おじさん」とは必ずしも特定のジェンダーや年齢に属する人を指すわけではありません。「おじさん」の女性。昭和マインドに見事に適応した、平成生まれの「おじさん」も存在します。


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コメント1件

既得権益を離すわけがない人の欲望の輪廻をどう変えていくかを考えてますが、なかなか答えがみつかりません。
損得と正義との折り合いとか。
文化人類学、面白そうですね。
檀上の人にとっては、多くの場合、想定外の質問をしてくる人は厄介者扱いです。
どこかの影響で「その質問は良い質問ですね」と言いながら
はぐらかす人がいます。
せめて「私にはわかりません。勉強してみます」
ぐらい言ってよとか思います。(笑)
壇上にあがることのないタイプの人は、「難しく考えてるねぇ」とか揶揄して自分の立ち位置を確保します。
そんな人が多いです。
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