いさお

マンガ(たまにアニメ)の感想やらレビューやらを書いてます。ぜひよしなに!

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マガジン

  • マンガレビューなどなど集

    今まで書いたマンガのレビューなどなど。

  • あのマンガ、世界史でいうとどのへん?

    様々な歴史ものマンガの魅力を、「世界史上の時代背景」という観点から紹介する記事シリーズ。筆者も高校世界史レベルの知識で書いていますのでノリはゆるいです。

  • アニメレビューなどなど集

    今まで書いたアニメのレビューなどなど。

  • 『進撃の巨人』論 ―本作が継いだもの、生んだもの、残すもの―

    『進撃の巨人』。コンテンツ史の特異点とも言える本作のテーマ性について、ゼロ年代の物語から継いだもの、10年代の物語にもたらしたもの、そして20年代の物語へ残していくものを検討する記事シリーズ。

最近の記事

『よふかしのうた』完結によせて ~異なる世界を見つめるそのまなざし~

※ サムネは『よふかしのうた』20巻(完)表紙より。 0. はじめに 『よふかしのうた』を全て読み終わりました。非常に見どころの多い、素晴らしい作品だったと思います。  個人的にいわゆる「日常系」(死語・・・?)にあたるような作品を読むことがほとんどなく、少なくとも序盤は主人公・コウとヒロイン・ナズナの何でもない夜の日常を描くこの作品に対し、当初はあまり入れ込んでいませんでした。  しかし、登場キャラが一気に増えた第3巻から、本作のストーリーにエンジンがかかります。物語は

    • 【番外編③】『ハイパーインフレーション』~ナショナリズム、帝国主義、経済戦争~

      ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『ハイパーインフレーション』1巻表紙より 1.市民革命、国家統一運動、ナショナリズム 本書3回目の番外編です。とりあげたい時代・地域に当てはまる歴史ものマンガが見当たらない場合、似たような舞台設定のフィクション作品を紹介する「番外編」によってここまで凌いできたわけですが、今回とりあげたいのは、19世紀末から20世紀初頭にかけての世界のほぼ全域を飲み込んでいった、主義・思想のお話です。

      • 【近代・後③】『河畔の街のセリーヌ』~革命後のフランスの混迷と成熟~

        ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『河畔の街のセリーヌ』1巻表紙より 1.フランス革命のその後1―1.漂流するフランス 近世前半(近世)から後半への移行をもたらした「市民革命」。これを先んじて担ったのは、王を処刑し主権を市民へと移行させていったイギリスとフランス、そしてそのイギリスから独立し、初めから「王がいない国」として誕生したアメリカでした。  そして、このうちイギリスは『エマ』のページで見たとおり「世界の工場」と

        • 【近代・後②】『エマ』~産業革命がもたらした新たな英国社会と、「身分差」の意味~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『エマ』1巻表紙より  英仏における市民革命と、前記事の『片喰と黄金』で見た超大国アメリカ合衆国の誕生。  これまで見てきた歴史上の世界は、例えば「王様」がいたり、農業が主な産業だったりとまさに「昔の世界」であったわけですが、この2つの大事件をもって、世界は急激に私たちのよく知るすがたへと変貌を遂げていくこととなります。近代後半戦の始まりです。    世界史という学問では、この時代の出

        『よふかしのうた』完結によせて ~異なる世界を見つめるそのまなざし~

        • 【番外編③】『ハイパーインフレーション』~ナショナリズム、帝国主義、経済戦争~

        • 【近代・後③】『河畔の街のセリーヌ』~革命後のフランスの混迷と成熟~

        • 【近代・後②】『エマ』~産業革命がもたらした新たな英国社会と、「身分差」の意味~

        マガジン

        • マンガレビューなどなど集
          11本
        • あのマンガ、世界史でいうとどのへん?
          26本
        • アニメレビューなどなど集
          11本
        • 『進撃の巨人』論 ―本作が継いだもの、生んだもの、残すもの―
          8本

        記事

          【近代・後①】『片喰と黄金』~アメリカ合衆国の幼年期、その光と影~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『片喰と黄金』1巻表紙より 1.近代前半・後半の境界線 本書はここから近代後半の章に入ります。  近代前半の章の冒頭で、近代の前半を指す「近世」という言葉について説明しました。「中世が終わったらいきなり近代的な時代が生まれたのではなく、その移行期にもまた一つの独自性を持つ時代があったのではないか?」との主張から、その移行期を特に「近世」と呼ぶようになったというお話です。  確かにここ

          【近代・後①】『片喰と黄金』~アメリカ合衆国の幼年期、その光と影~

          【近代・前⑥】『第3のギデオン』~「父殺し」としての市民革命~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『第3のギデオン』1巻表紙より 1.権力の転々 「織田がつき 羽柴がこねし天下餅 座りしままに 食うは徳川」という有名な歌があります。  16世紀、日本はそれまで国を束ねていた室町幕府が弱体化・崩壊し、長い内戦期に入ります(いわゆる「戦国時代」)。  この分裂状態を最初にまとめにかかったのはかの織田信長であり、大進撃の末近畿・中部一帯を支配下に置きますが、志半ばで本能寺の変により暗殺

          【近代・前⑥】『第3のギデオン』~「父殺し」としての市民革命~

          『あのマンガ、世界史でいうとどのへん?』、目次を全て公開しました!

           おおよそ定期連載しております、様々な歴史マンガをその世界史上の背景から紹介していく記事シリーズ『あのマンガ、世界史でいうとどのへん?』。本記事シリーズにつき、これから紹介するマンガを含めて全目次を先日公開しています!↓↓↓ 目次: 第1章 先史 【先史】『創世のタイガ』~人類の「歴史以前」の物語~ 第2章 古代 【古代①】『天は赤い河のほとり』~古代オリエント世界の興亡、そのハイライト~ 【古代②】『ヒストリエ』~アレクサンドロスの大帝国と古代ギリシャ奴隷制の示すもの~

          『あのマンガ、世界史でいうとどのへん?』、目次を全て公開しました!

          【近代・前⑤】『セシルの女王』~「覇権国家」英国、その始まりとしてのエリザベス1世のルーツ~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『セシルの女王』1巻表紙より  本記事シリーズ近代・前半、すなわち近世の章は、前記事まででようやく「ヨーロッパにおける中世からの脱却」の全体像を捉えることができました。  ヨーロッパにおける中世と近世とを分ける出来事は数あれど、よく強調されるのは3つの事件。すなわち①ルネサンス、②大航海時代、そして③宗教改革であり、それぞれ関連するマンガ作品とともにその様相を見てきました。  では、

          【近代・前⑤】『セシルの女王』~「覇権国家」英国、その始まりとしてのエリザベス1世のルーツ~

          【近代・前④】『イサック』~近世前半ヨーロッパの山場、三十年戦争~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『イサック』1巻表紙より  近世の章の最初を飾った『アルテ』の記事にて、「中世」と「近世」の境界線として3つの大きな出来事を挙げたことを覚えておいででしょうか。3つの出来事とはすなわち、ルネサンスの開花、大航海時代の始まり、そして宗教改革です。  このうち前二つについてはそれぞれ『アルテ』、『ダンピアのおいしい冒険』の記事で紹介しましたので、本記事では残る「宗教改革」について、この改革

          【近代・前④】『イサック』~近世前半ヨーロッパの山場、三十年戦争~

          【番外編②】『将国のアルタイル』~オスマン帝国の出現と近世ヨーロッパにおける「国際政治」の幕開け~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『将国のアルタイル』1巻表紙より  今回は第2回番外編です。    本記事シリーズは史実をベースにした「歴史もの」マンガをとりあげ、その作品をその時代背景から紹介するものです。しかし、世界史を語るにどうしても取り上げたい時代ながら、これに該当する作品が(私のマンガ知識不足も災いして)多く見当たらないケースがあります。その代表例がイスラーム圏の歴史でして、中世の章ではイスラーム教の誕生、

          【番外編②】『将国のアルタイル』~オスマン帝国の出現と近世ヨーロッパにおける「国際政治」の幕開け~

          【近代・前③】『海帝』~中国による大航海時代というイフ~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『海帝』1巻表紙より  ヨーロッパの歴史において「中世」と「近世」の境界線の一つとされるだけでなく、前記事で論じたとおり「現代」の始まりとして位置づけることもできる「大航海時代」の幕開け。特にその初期におけるヨーロッパからの長期航海とこれによる新航路・新大陸の発見はしばしば華々しく語られるところであり、当事者の中にはコロンブスのような超有名人もいます。  しかし、例えばヨーロッパから

          【近代・前③】『海帝』~中国による大航海時代というイフ~

          【近代・前②】『ダンピアのおいしい冒険』~「現代」の始まりとしての大航海時代~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『ダンピアのおいしい冒険』1巻表紙より  『アルテ』をとりあげた前記事は、「中世」と「近世」の境界線の一つとして挙げられる「ルネサンス」をテーマとしました。続く本記事でとりあげたいのは、その境界線として主に挙げられるもう一つの出来事、すなわち「大航海時代」の幕開けです。  『狼の口 ヴォルフスムント』の記事で見たように、十字軍による東方との交流の拡大以来、遠隔地との商業を発展させてき

          【近代・前②】『ダンピアのおいしい冒険』~「現代」の始まりとしての大航海時代~

          【近代・前①】『アルテ』~「近世」の始まりとしてのルネサンス~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『アルテ』1巻表紙より。  「近代」の前半は特に「近世」と呼称されます。この言葉は「古代」、「中世」、「現代」といった他の時代を指す言葉よりも日常生活で目にする機会は多くはなく、この言葉にあまり馴染みのない方も多いかもしれません。  それは古くより続く「歴史学」の世界でも同じであり、この「近世」という時代区分が歴史学上で導入されたのは、20世紀中盤になってからであるようです。それまで

          【近代・前①】『アルテ』~「近世」の始まりとしてのルネサンス~

          【中世⑧】『チ。-地球の運動について-』~人間は「宗教から科学へと進歩している」のか?~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『チ。-地球の運動について-』1巻表紙より。  今回で中世の章は最後となります。  本記事シリーズはある特定のマンガをとりあげ、そのマンガが舞台とする時代を紹介する構成をとっています。ですのである特定の時代の出来事を紹介しやすい形式にはなっているのですが、一方で、特定の時代でなく、どの時代にも共通して起こっていた現象や文化について説明するには少し向かない内容になっています。  しかし

          【中世⑧】『チ。-地球の運動について-』~人間は「宗教から科学へと進歩している」のか?~

          【中世⑦】『狼の口 ヴォルフスムント』~十字軍と西ヨーロッパ世界の分岐点~

          ※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『狼の口 ヴォルフスムント』新装版1巻表紙より。  中世後期ヨーロッパにおける大事件とは何か?    そのように問われた場合、主に二つの事件が答えとして挙げられると思います。一つは前記事で既に紹介した英仏百年戦争。そしてもう一つは、世界史上でも最長かつ最大といっていい軍事作戦である、十字軍の派遣です。  十字軍の派遣自体は、本記事シリーズの中ですと既に『アンナ・コムネナ』の記事で少し言

          【中世⑦】『狼の口 ヴォルフスムント』~十字軍と西ヨーロッパ世界の分岐点~

          『アリスとテレスのまぼろし工場』感想~「生の実感」はどこにあるか?~

          ※ 核心に触れるネタバレは避けていますが、本筋への言及はあります。  『アリスとテレスのまぼろし工場』を見ました。間違いなく面白かったのですが、同時に非常に複雑な作品でもあったと思います(この感想もどう順序立てて書いたらよいものかを思案しながら書き始めています)。  岡田磨里さんが監督・脚本を務めるのは2018年の『さよならの朝に約束の花をかざろう』以来。もともと『あの花』等の脚本で著名な方ですが、この『さよ朝』が人生唯一円盤まで買ってしまったアニメである程度には刺さって

          『アリスとテレスのまぼろし工場』感想~「生の実感」はどこにあるか?~