人間の脳はコンピュータよりエネルギー効率がいい?←論点はそこじゃないよ
人間はいつも数字が好きだ。知能というその能力が測るのが難しいものにさえ、偏差値やIQという数字をつけて測ろうとする。人工知能に向き合った時に対してもその態度は変わらなかったりする。
例えばWatsonが3000個近いCPUを使って人間にクイズで勝利した。Deep Blueは1秒間に2億局面読む。Ponanzaは1兆近い局面を強化学習で調べ上げた。こんな感じだ。
もちろんこう言った指標は全部が決して悪いものではないんだけど、次のような文章をみると、うにょうにょした気持ちになる。
「○○というタスクはコンピュータの性能が良くなったが、エネルギー効率を考えれば人間の方が効率がいい」
これ結構な専門家もこういうことをいうのだが、ちょっと待ってほしい。確かに今この瞬間なら、それは真実かもしれないけど、ソフトウェアやハードウェアの進化は指数的だ。エネルギー効率なんて数年もしたら抜かれてしまう。実際、声を大きくいう話ではないが、スマホであってもコンピュータ将棋は人類より強いと言ってもおそらく問題ない。逆に言えば計算の問題に落ちてしまえば、その課題はもうすぐコンピュータに抜かれるのだ。
ところで人工知能の課題ってこう言い換えれないだろうか。本来ならとても計算可能に見えないような問題を計算可能な問題に落とし込むことであると。専門家でない人にとって将棋や囲碁ってよくよく考えると、とても計算問題に見えないはずだ。仮にそれらが計算可能な問題だと感じる人も、例えば機械翻訳などのタスクはどうだろうか?本当に1ミリも計算の要素を発見できないと思う。
事実、翻訳というタスクはまだ完全に計算可能な問題になっておらず、どれほど電気を使っても、コンピュータを使っても、翻訳家の性能にはまったく追いついていない。
これはもちろん、人間の脳のエネルギー効率がいいという問題ではない。人間の脳のアルゴリズムが、少なくとも言語を扱うことについては、コンピュータのアルゴリズムよりもずっと性能がいいからだ。
私は人間の脳を褒め称えたい。それはエネルギー効率がいいからでなく、そこに汎用性が途方もなく優れたアルゴリズムがあるからだ。
2020/06/30 追記
翻訳はかなり精度が上がってきた。少なくとも翻訳家のレベルにコンピュータが全く勝てないとはいえなくなってきた。進歩が凄まじい。
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