「撮影軌跡の曲率による観光スポットの特徴分析」を読んだ感想

この記事は、岩手県立大学 Advent Calendar 2017の26日目の記事です。

アドベントカレンダーで穴が空いたときのためにとっておいたら、使うことがなかったので26日目として公開します。

引き続き、最近読んだ論文の感想(成果を応用することによって具体的にどんなことができそうかという視点を中心に)をなるべく平易な言葉で1000字以内で書いていきます。

さて、今回は、「撮影軌跡の曲率による観光スポットの特徴分析」(高野ら, DEIM Forum 2017)です。

[あらまし] (論文より引用)
本研究では,ユーザがソーシャルメディア上に投稿した複数の写真データにおける撮影位置間の関係に着目し,その曲率から観光スポットでのユーザの行動を周遊行動と非周遊行動に分類し分析する.ここで,周遊可能なスポットとは,遊園地や公園のように,ユーザがスポット内の複数箇所を長時間かけて回ることが可能なスポットを指す.周遊行動は非周遊行動と比較してスポットでの滞在時間が長く,行動も多いため与えるの経済的効果も高いと考えられる.したがって,周遊可能なスポットの発見は,スポットの利益拡大に関係性の強い特徴の把握につながる.そこで本研究では,Flickr 上の実データを利用し,東京都内のスポットを来訪者の移動軌跡に対する曲率を用いてランキング化し比較することで,周遊可能なスポットを発見し,これらのスポットに共通して現れる特徴について分析した

感想

※解釈が間違っている可能性もあるので、正しくは原著を読んでね!

観光において、なにかを撮影することは、そこに魅力的な対象物がある可能性が高いことは理解しやすいですね。この研究では、撮影された写真の位置情報を時系列で扱い、その観光者が「周遊行動」をしているかしていないかを判断するものです。

これができることによって、例えば観光業者が、自分達の観光スポットやエリアといった単位で旅行客が周遊しているかどうか、あるいは周遊しやすくするにはどうしたらいいかといった分析ができそうです。

この論文には書いていませんが、一般に、あまり巡る歩き方をしない観光地よりも、周遊できる観光地のほうが観光先として行きたいと思いますし、滞在時間が長く、ひいては満足度、経済効果も高くなる傾向にあるように思いますので、そういった分析をしてよりよい観光地にしようというところに使えそうですね。

その手法を簡単に説明します。写真撮影をした各地点から平均して最も近い点を「中継点」として算出します(最小二乗法)。次に各地点から、時系列で、中継点を経由させて線を引いたときに現れる角の角度をみて、鋭角であれば折り返している(= 周遊)、鈍角であれば経由している(= 非周遊)とみなし、タグ情報を使って各写真の撮影地点ごとにその度合いを算出できるそうです。

中継点を中心とした円を描いたときの半径に基づく閾値を設定するようです。言い換えれば、どのくらいの範囲までをひとつのエリアと考えますか?ということなのだと思います。この閾値については妥当なサイズを探す必要があるようです。しかしながら、ディズニーランドくらいの広さがあるスポットもあれば、居酒屋のように狭いスポットもあります。また、山や橋といった多面的かつ離れた距離から撮影する対象もあります(各撮影地を「景色の良いスポット」と考えればいいのかも?)ので、この辺の調整が難しいかなと言う印象です。

写真の対象を認識する技術を使ってある程度ふるいにかけるだとか他の手法と組み合わせるとよさそうです。

(約820文字)

おわりに (ただの宣伝です。)

普段は旅行系のWebサービスを開発しています。ゆくゆくは学術的な成果を実装してサービスに組み込みたいという思いがあって論文読んでます。観光系サービス開発をしてみたい!観光系の業務や研究してるんです!という学生さんや社会人の方いらしたらぜひお気軽にお声掛けください。

そういえば岩手県立大学卒業生・学生であれば誰でも参加できる同窓生Slack 「IPU Slack」というのもあるのでこちらもぜひどうぞ。

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