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【いまはもうなき旅の記録】 8. サムイ島を出る

2007年8月12日(日)
【安住していた地を離れると恐怖が襲う。今オレはこの宿を拠り所にしてるけど、つい先日まではこの島自体が未知で恐かった。それにしても海が青い。今日はいつにも増して青く美しい。ゆっくりした時間。昼寝をする人々。この島にいくら人の手が加わっていても、この時間の流れだけは誰にも変えられない気がする。でも懐かしい。バンコクの街のあの土煙と騒音と匂いが。恐怖から逃れるため安住をするが、それはまた何かを失う生活となる。まだ見ていない新しいものを見よう。】


2007年8月13日(月)
ALEXがオーストラリアに帰国するため、バンガローを去った。実に頼もしいリーダーだった。今後の人生でまた会うことは難しいだろうが、BBQ中の彼の勇姿を忘れはしまい。最後まで英会話がまともにできなかった僕とも、仲良くしてくれてありがとう。

今夜チャウェンビーチの奥の森で「ブラックムーン・パーティ」が行われるらしい。かの有名なパンガン島の「フルムーン・パーティ」が満月の夜なのに対して、「ブラック〜」は新月の夜のレイブだ。数日前に町でチラシを見つけ、チェックしていた。
今夜これに行こうと準備していたが、バンガローを出る直前にその気が失せやめた。パウロも隣で眠っていることだし。

2007年8月14日(火)
【オハヨー。今日はサムイを一旦出る日です。気付けばALEXだけじゃなく、眼鏡さん & ジョンも、お母さん & ED HARDY兄弟も帰ってしまってるのね。こうやって人は入れ替わっていくのか】

さようならサムイ。とはいえ、最終週には戻ってくるつもり。
そうTRF姉ちゃんに伝えてチェックアウトしている間、パウロの姿を探すが見当たらない。そういえば、起きた時からいなかった。別れが寂しくて隠れたの?犬はそういう生き物なのか?

「またねー!」と手を振りバンガローを出て、ソンテウに乗って、ナートンの港へ向かう。
港のトイレで久々に鏡を見ると、顔が真っ黒になっていた。もうとっくにJapaneseではない。
船に乗って、本島の「スラーターニー」へ戻る。そう、あの夜に“彼女”がバスを降りた町。

サムイ島への玄関でもあるスラーターニー。

スラーターニーは(失礼だけど)何の変哲もない小さな町だった。大通り沿いに見つけたホテルの雰囲気も悪く、すぐにホワイト・サンズ・バンガローが恋しくなった。殺風景な町、なぜ自分はここに来たんだろう…

観光で来る人はまずいない小さな地方都市。

そんな風に悔やんでいたが、夕刻になって市場へ行くと急に気が変わった。大勢の人々と屋台の灯りが陽炎のようだ。

タイの市場はどこも楽しい。2017年バンコク。

なぜこの町に来たのか、理由はひとつだった。

【あれだけ人がいるなら会える気がする。着いた当初は明日にでも離れようと思ったけどしばらく居座ってみようか。NOOちゃんはこの町にいる。そんな気がした。さっき大学があった。あの大学に通ってるのかもしれない。明日探しに行ってみよう!】

しかしその1時間後…

【NOOちゃんにまた会えるかもという理由だけで、ここスラーターニーに泊まっている。オレは何しにこの国へ来たんだ。行かなきゃ。会おうと期待しても会えるもんじゃない。会いたいと駄々をこねても現実になるとは限らない。明日なら、まだここを離れられる。旅を続ける決意をした。
パンガー⇒クラビー⇒アオナーン⇒ライレイ⇒…
先のことを考えると、ワクワクが止まらない。恋しいものに背を向ける時、一番つらい。それは本当に強さを要すること。後ろを振り返らずに、振り返ったとしてもそこから進める強さが欲しい。】

ひとつの恋を忘れた僕は、翌朝スラターニーをそそくさと出て、バスでさらに南のクラビーへ向かった。
クラビーは、プーケットやピピ島への中継地となる南の要所だ。
いよいよ、本当の目的「幻のビーチ」を探すタイ南部の旅が始まる。

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