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強豪校はつらいよ【命がけの洗濯】

スポーツ強豪校の上下関係は、とても厳しい。
1年生は、先輩の衣類を洗濯しないといけない。
1年生なんてほんの数か月前までは中学生で、洗濯なんてしたことのない生徒がほとんどだ。
それが寮に入った途端、自分の分だけでなく先輩の洗濯までしないといけないので、当たり前のように失敗ばかりする。
しかし先輩方は、失敗した1年生に対して容赦なく鉄拳制裁を加える。
僕が洗濯で初めて先輩の鉄拳制裁を受けたのは6月の梅雨時期だった。
その日は雨だったので、僕は部屋の中に洗濯物を干して学校に行った。
学校から帰って部活の準備をするために寮の部屋に戻ると、なんか臭い。
臭いの元を辿っていくと、朝干した洗濯物が臭くなっていた。
風の通らない部屋の中で洗濯物を干すと生乾きになって臭くなることを、僕は知らなかったのだ。
すぐに洗い直せば良かったのだが、僕はその臭い洗濯物をきれいに畳んで先輩に渡してしまい、気絶するほどの鉄拳制裁を受けた。
僕は柔道部だったので、柔道着を毎日洗うのだが、柔道着は分厚い生地なので他の衣類とは別に洗うことになる。
なので、1人最低でも2回は洗濯機を回すことになる。
ところが、柔道部寮には洗濯機が2台しかなかった。
順番が最後になると寝るのは夜中確定なので、洗濯機の取り合いになってケンカになることも珍しくない。
僕も洗濯機の取り合いで、同級生とハンガーで殴り合ったことがある。
洗濯物が乾きづらい冬も大変だ。
特に生地が分厚い柔道着は、冬場なかなか乾かない。
それでも翌日の練習までには乾かさないといけないので、ストーブに扇風機を当て、その風で乾かしたり、部分的に濡れているところはドライヤーで乾かしたりと、とにかく1年生は先輩から鉄拳制裁を受けないために、命がけで洗濯物と戦っているのだ。
そのおかげかどうかはわからないが、今でも洗濯は得意だ。





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