大人になった今でも、学生時代の話になると

「俺が通っていた中学は、めちゃくちゃワルかった」

「私の２コ上の先輩たちは荒れていた」

というワードがよく出てくる。

僕が通っていた中学校は全然ワルくなかったし、高校はスポーツ強豪校だったので、学校がワルかったという感覚がわからない。

おそらく不良生徒がいたということなのだろうが、

１０代の少年少女がする悪さなんて、たかだか知れている。

過去のワル自慢をする人の話を聞いていると、

「他校の生徒とケンカをした」だとか、「学校のグラウンドをバイクで走りっ回った」といったようなことばかりで、全然ワルくない。

運動不足の不良少年たちが集まってケンカしたところで、命にかかわるような大けがはしないし、

学校のグラウンドをバイクで走り回るなんて、ただの目立ちたがり屋のお調子者のすることだ。

もし学校が組織化して麻薬の売買をしていたり、売春を斡旋していたりして、

その麻薬や売春の利権争いのために、他校と抗争を繰り返している。というような話しであれば、ワルい学校と言えるだろう。

だがそんな学校は、日本中探してもどこにもない。

それを一部の不良生徒が、１度や２度したケンカの話しくらいで、

「俺の学校はワルかった」と言われても、どう答えていいかわからない。

「ワルい学校」の定義が、一部の生徒の素行が悪いことだとしよう。

だとしても、その「ワルい学校」というのが成立するのは、中学校だけだ。

中学校は義務教育なので、どんなに素行の悪い少年少女でも学校に通う義務があるからだ。

だから、高校で「ワルい学校」というのは意味が分からない。

高校は義務教育ではないので、暴れたいなら進学せずに暴力団にでもなればいい。

それを敢えて進学したうえで、先生に悪態をつき、学費を出してもらっている親に反抗する。

高校生になってまで不良をしている生徒は、やっていることと、自分の身を置いている環境が違いすぎるのだ。

先日、僕は奥さんと散歩をしていた。

すると奥さんが一軒の焼鳥屋の前に立ち止まって、こう言った。

「ここのお店、私の同級生のＳ君が経営しているんだよ。私が通っていた小学校ってめちゃくちゃワルくて、その中でも一番ワルかったのがＳ君なんだ。それが今はこうして頑張ってるんだよ」

…めちゃくちゃワルい小学校って、なんだ？