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ZIGEN写真展「球体関節愛花」

 花屋の二階で血のない人が観られるという。
 訪れると和装の老紳士が迎えてくれた。
「こちらがメインの作品なのですよ」
 階段を回り込んだ壁に、大きな一枚が飾られていた。女が写っている。
 球体の関節に肉の体を合わせた裸の女。
 纏っているのは足首にレースを回したソックスにメリージェーンのみ。うずくまり、傾げた頭を抱えて、虚ろな目をしている。瞳に焦れはない。
 私が目を止めたのは、腿で押さえた乳房より右手の甲と脇腹に浮き立つ骨だった。あそこは人だろうか。それとも人形か。
 花屋の二階に花はなく、静寂と見えない香りが漂っている。
 京都にはそうした空間が少なくない。

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