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大晦日、お洒落してひとりでロンドンへ観劇に出かけたら。

 ひとりで過ごす大晦日、アイコニックな1日にしたくて思いついたのがピカデリーサーカスの赤い照明か印象的なクラシックな劇場でムーランルージュを観ること。働いてる会社のロンドンオフィスの近くで、行くたびにいつか観たいと思っていた。オンラインチケットを買った瞬間、俄然やる気が出て、当日までの2週間で思いっきりドレスアップする準備をして、大晦日は自分のやりたいことをして過ごすことに決めた。

 思い描いてたイメージはGossip Girlみたいなエッジーで且つ上品なスタイル。Zaraで見つけた首元の繊細なフリルと黒リボンがポイントの白地のシースルーブラウスとレザーショーツを合わせて、足元はH&Mのフローラルレースの黒タイツにカンペールのソックスブーツを。DIESELのケープがついたコートを羽織って、お母さんのお下がりのmiumiuの赤いヴィンテージ風パーティバッグ。メイクはシャネルの赤リップがアクセント。寄せ集めだけど、思い描いてたスタイルになった。

  大晦日の朝、新しい服を纏って最寄り駅から2時間電車に乗ってWaterlooへ。13:30の公演だから、それまではすぐ近くのNational Galleryで絵画を見ることに。なんだかんだメインのコレクションを見るのは初めて。正直、時間潰しのつもりだったからまさかこんな錚々たる人気画家の作品が勢揃いだとは。さすが大英帝国、そりゃそうか。ミケランジェロ、ダヴィンチ、フェルメール、ゴッホ、モネにクリムト。誰もが知っている著名な画家の作品が次から次へと並んでいる。怖い絵展でみた、『レイディー・ジェーン・グレイの処刑』もあった。ここから来たのね。ゴッホの蟹の絵は初めて存在を知った。まだまだ知らない作品がたくさんある。しかもこんな身近な場所に。小学校の廊下に飾られてられていたひまわりもあった。これが本物か。観光客らしい日本人や韓国人を見かける間、時折り大理石の壁に映る自分の姿が目が入る。改めて私はイギリスに住んでいるんだなぁ、なんて思いながら、みっちり絵を楽しんじゃった。ランチの時間がもうほとんどない。

 急いでNational Galleryを出て、トラファルガースクエアに向かって歩き出した。そうすると後ろから声がする。
「You look like a princess!」
 ええ!と思って振り返ると、声の主は頭にターバンを巻いた男性だった。インド出身で、National Galleryでセキュリティとして働いていて、ランチのビリヤニを運んでる途中だったらしい。声をかけてくれたことにお礼をして、私は港町に住んでいてこれから観劇するところで急いでいることを伝えたら、「本物のプリンセスみたいでとっても素敵だよ、ハグをさせて」と言って優しいハグをして仕事へ戻って行った。突然の出来事に「これって普通?」と一瞬考えたのだけど、「プリンセスみたい」と言う言葉が頭でリピートして笑ってしまった。普段の私から程遠い形容詞だけど、なんだか幸せな気分。今日の私は素敵なのかも!

  ピカデリーサーカスまで歩きながら、ツナメルトを頬張ってなんとか時間通りに劇場に。リップを塗り直して会場に入る。中はすでに混み合っていた。バーでアルコールを楽しむ人、若いカップル、家族、観光客、色んな人が、煌びやかな劇場を埋め尽くしていて一層心が躍る。ムーランルージュは、舞台装飾から衣装、ダンスとすべてがセクシーで華やかだった。私は新体操とバレエをして育ったけれど諦めなかったらこういう場所にいられたのかもしれない。自然と体が動き出すような、そんな悦びに満ちた舞台だった。チケットも電車もそこそこかかったのだけど、思い切って観に来て本当に良かった。

 帰りの電車までAntholopologyで買い物。(セールで£44が£28になった前から欲しかったお皿を2枚買うか相当迷って、結局2枚レジに持っていったらさらに値引きされて£20に。ラッキー!) すべてが満たされる1日を過ごして、欲しかったものを思いがけずにー手に入れて、るんるん気分で、暗くなり始めたSohoを通り抜けて駅に向かって歩いていると、後ろから声がする。
 「You look too cute, what are you doing?」
 えええ、と思って振り返ると、今度の声の主はシルバーのダウンジャケットを着た黒髪の男性だった。彼はスペイン出身でホテルマネージャーとして働いているらしい。イタリア人の友達が時間になっても全然来ないからぶらぶらしてたと言う。電話番号を教えてと言うのだけど、電話番号を聞かれるにはイケメンすぎて内心この人信用して大丈夫?と思うほどだった。少し話したら、普通の人だったから電話番号を教えて今は時々メッセージを送り合っている。異国の地で持つべきものは友。

 なんだか、ものすごい1日だった。来年こそは自分のためだけじゃなくて、誰かのために生きれられる人間になりたいなって思っていたのに、自分のためだけに大晦日を楽しんだら、なんだかたくさんの新しい価値と、人と、経験に巡り合ってしまった。人生で1番楽しい大晦日だったかもしれない。(家族と過ごす大晦日はもちろん最高だけど、なんだか世界が恋しくなるのは私だけ?) イギリス人は1人で何かをすることが苦手らしいのだけど、ひとりでドレスアップをして観たい演目を見に来た私は確かに素敵なのかも。これから一年、きっと自信を無くしたり自分を見失ったりする日もたくさんあるだろう。だけど、私はプリンセス。いつでもこの気持ちを思い出して、楽しくて光に満ちた舞台みたいな一年にしなくちゃ。

 Side Note - Waterloo駅の丸亀でしっかり年越しうどんを食べました。ここでも日本人を見かけて、同士みたいな気になった。

ピカデリーサーカスの目の前の劇場


劇場内、住みたい。


開演前のパフォーマンス。この役でもいいです、私。


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