BPLS4 IIDX部門 ドラフト結果と戦力を考察

 先日、BPLS4 IIDX部門のドラフト会議が終了しました。ドラフト結果を振り返るとともに各チームの戦力を分析します。もちろんドラフトのネタバレを含みますので、未視聴の方は配信アーカイブへGO!



APINA VRAMeS

継続:UCCHIE、WELLOW、CHP*1E
獲得:NAGACH
放出:KENTAN

 昨年のチャンピオンチームであり、3選手の継続は誰もが予想したところでしょう。3選手で課題曲の全域をカバーできており、4人目は力さえあれば得意ジャンルを問わずに補強できるポジションでした。KENTAN選手も素直な譜面をまっすぐぶつける戦い方でシーズン3は十分な活躍を見せましたが、チームはNAGACH選手との入れ替えをチョイスしました。
 そこそこの確率で2タテを取れる選手が3名揃っており、前述の通りジャンルカバーも完璧です。NAGACH選手も勝負強さが光っており、今シーズンもアピナは強豪チームとして大暴れが期待できます。

ROUND1

継続:U*TAKA
獲得:1-PIN、CYBERX、LEO
放出:KUREI、I6VV、NAGACH

 昨年度の準優勝チームです。3期連続のファイナリストチームでありながら、さらなるチーム強化を目指して大幅入れ替えを敢行しました。
 1-PIN選手を2巡目選手として補強できたのが何より大きいです。1-PIN選手はチームリーダーとしてはパンチ力に欠けるイメージがあったものの、先鋒戦や中堅戦での勝率は非常に高かったです。よってサブメンバーとしては最強の一角になるでしょう。昨年はエースのU*TAKA選手がやや無理をしてポイント配分の高い☆11の試合に出場していましたが、この補強によってU*TAKA選手も得意分野の☆12にほぼ専念できるでしょう。
 U*TAKA選手が十分に手腕を発揮できればファイナルまでは進めることが過去のシーズンで証明されており、ファイナルで勝ちきれるチームを目指して再編を行ったという印象が強いです。ファイナルでの課題であった「2人目の☆12要員」「中低難度で2タテまで狙える選手」の両方を補強することに成功しました。
 強いていえば中低難度のソフランはちょっと薄そうでしょうか。とはいえTRENDジャンルの曲目入れ替えにより『罪過の聖堂』が飛ぶシーンはかなり減るはずですので杞憂かもしれません。
 LEO選手はFinal Match(大将戦)も含めたヘビーな鍵盤ジャンルでの起用が想定されるので、BPLの舞台になるべく早く適応させるチームマネジメント力も重要でしょう。

TAITO STATION Tradz

継続:KKM*、8$.(前年度名8S.)
獲得:KUREI、KENTAN
放出:RIOO、RAITO.

 KKM*選手が残留したことが何よりも大きいでしょう。ドラフトのクジ運に泣かされたこともありますが、それにしても中低難度重視の選手で固めてきたなという印象。
 ぱっと見ではKUREI選手の役割が過重になりそうな予感がします。2人目の☆12要員、中低難度スクラッチ、中低難度ソフラン、☆11エース級選手への対処を1人で賄うことはコスト上不可能でしょう。KUREI選手以外の3名について新たな戦い方を開拓する必要があります。具体的には8$.選手が☆12をプレーする。KENTAN選手が低難易度のソフランをプレーする。KKM*選手のFinal match(大将戦)出場にこだわらずに出場回数をやや増やす、などがありうるでしょうか。ジャンル抽選でスクラッチソフランを1試合の中で複数個引いてしまうとかなりリスクの高いオーダーを求められそうです。

GAME PANIC

継続:MIKAMO、PEACE、TAKA.S、FRIP
獲得:なし
放出:なし

 ゲームパニックは全選手と継続することを選択しました。今シーズンのルールはFinalMatch(大将戦)を待たずに決着をつけることが可能であり、みかピーコンビが中低難度で2タテを取り続ければそれだけで2勝くらい取れてしまうかもしれません。
 チームを変えないことを選んだ以上、戦略も従来と同じでしょう。つまりMIKAMO&PEACEで取れるポイントを最大化し、高難度をTAKA.S選手、低難度をFRIP選手で補うという方針だと思われます。
 上位2名を手放す理由はないと思いましたが、全選手継続は筆者にとってはやや意外でした。戦略は他チームにもすでに読まれているでしょうが、それでも十分な戦力を保有していると考えたのでしょう。毎年MIKAMO選手の試合に少しずつ手痛い負けがあるのでMIKAMO選手の安定性がカギとなるでしょうか。

SILK HAT

継続:SEIRYU、VELVET、LICHT、KIDO.
獲得:なし
放出:なし

 シルクハットも全員継続を選択。シーズン3終了時の各選手の様子からある程度予想通りといえます。
 SEIRYU選手がポイントを獲得するのはこのチームにとっては前提条件であって、VELVET選手とLICHT選手がどれだけのポイントを持ち帰られるかにかかっているでしょう。チームとしてのカバー範囲は問題ないものの、より戦いを有利に進めるにはソフラン・スクラッチジャンルを多めに引きたいところです。昨シーズンのシルクハットはスクラッチの試合を1つも引かずに終わってしまいましたが、リーグ屈指のスクラッチ力をもつVELVET選手の手腕を今シーズンこそ見たいですね。

GiGO

継続:なし
獲得:CORI-(前年度名CORIVE)、NIKE.、46、LOOT
放出:NUCHIO、CYBERX
※CORI-、LOOTについては継続契約の権利を使用せずに獲得した

 昨年度は振るわなかったGiGOでしたが、DON*選手の獲得レースに参戦しチームを大きく改革する姿勢を見せました。高難易度鍵盤系への対応力の薄さを46選手で補い、2タテを取るポイントゲッターにNIKE.選手を据えるフォーメーションが出来上がったと言えます。46選手以外の3名がソフランに対応でき、CORI-選手とLOOT選手がスクラッチに対応可能でカバー範囲も問題ありません。
 自選曲の確実性には問題がないメンバーなので、他選曲を獲得できるオーダーにするために戦略の練り込みが求められるでしょう。具体的にはNIKE.選手だけでなく、CORI-選手にも2タテを取ってきて欲しいところです。氏の代名詞はソフランスクラッチですが、☆12のソフランスクラッチは2タテが取りにくいジャンルでもあります。得意分野に固執せずに46選手やLOOT選手にしのいでもらうプランも検討する必要があるでしょう。
 ドラフトではくじ運に泣かされつつも的確な補強に成功したGiGO。今シーズンの戦いが非常に楽しみです。

レジャーランド

継続:DINASO、G*
獲得:DON*、NUCHIO
放出:1-PIN、U76NER

 今ドラフトの目玉選手であったDON*選手の獲得に成功するとともに、3年戦い抜いたチームを大幅に解体しました。
 DON*選手は☆12の歴代スコアを大量に持ち、特にBPM150まわりの鍵盤譜面であれば地球で最も上手い選手と言って間違いありません。リズムキープの正確性に特色のある選手であることから☆11以下でも手腕を発揮しやすく、BPLルールへの適合度も高いのではないかと推測されます。
 前シーズンまで2巡目選手として稼働したNUCHIO選手を、5チームでの獲得競争の末4巡目選手として獲得することに成功しました。DON*選手と合わせてクジで2勝です。
 鍵盤系のジャンルについては4名とも幅の広い強みがあり、全域をカバーできているでしょう。
 ポイントゲッターとして最も期待されるDINASO選手ですが、チーム全体のカバー範囲が狭まったために起用の自由度がやや下がるかもしれません。特にソフランはDINASO選手が一挙に引き受けることになるでしょう。1試合2ソフランを引いてしまった場合はかなりピンチですが、今期から監督に就任するU76NER氏のスキルを上手く継承したいところです。
 レジャランは3シーズン通しての課題であった「スーパーエース級選手への対抗手段のなさ」をDON*選手の獲得で一気に解決しました。ルール改正にともないチーム下層の厚みが求められる今期ではレジャランの従来から持つ強みが発揮されやすいでしょう。悲願の初優勝も決して夢ではありません。

新規参入選手のチャンスは少なすぎるか?

 ドラフト後に各所で見られた感想の中に、「既存選手がローテーションしている部分が多く、新規選手が少なくて残念だ」というものが見られました。新規選手を観るワクワク感は何物にも代えがたく、心情的にはわかるものの妥当な結果だったのではないかと考えています。以下、そう考える理由をいくつか挙げてみます。

・そもそも現プロは相当に強い
・BPLルールは☆11以下の割合が高く、本番慣れの要素が大きい
・シーズン試合数が少なく、新規選手の「本番慣れ」を待てない
・ノバ東北の撤退による選手枠の減少
・音楽ゲームの能力は加齢で衰えにくいのかもしれない

 何点か付記します。まず、現プロは相当に強いことを確認したいです。レジャーランドチームアドバイザーのべあー氏が主催した『第9回 べあー杯』ではBPLS3プロとノンプロが何度もぶつかりました。それらの試合を集計すると、24曲中20曲でプロが勝利し、さらにBPLS4まで残存したプロに限ればノンプロ選手は1曲たりとも勝利できませんでした。選手はシーズン中にこそ成長するものであり、ノンプロがプロの壁を超えるのはかなり大変そうです。

 また、音楽ゲームのスキルは加齢で衰えにくいのではないでしょうか。つまり時間が経ってもトップ選手が落ちてこないと言えそうです。例えばMIKAMO選手やTAKA.S選手は2013年のKAC最終決戦で活躍して以降ずっとトップの実力を維持しています。U*TAKA選手やは6th KAC(2017)で表舞台に現れて以後ずっとランカーであり続けています。(LICHT選手も同時期に登場し、ブランクを経てBPLに出場)
 海外ではKKM*選手やDON*選手、国内ではWELLOW選手が現れ、UCCHIE選手がランカーからトップランカーに成長するなど新たな勢力は現れているものの、彼らは既存のトップランカーに仲間入りしたに過ぎず、”選手層の循環”にはなっていません。一度強くなった選手はそう簡単に落ちてこないのがIIDXというゲームの特徴なのではないでしょうか。

 これからプロを目指す選手にとっては過酷な状況が続きそうです。BPLの舞台に上るためには、非公式大会でノンプロ選手に対しては全曲勝レベルの強さを持つ、他機種音楽ゲーム由来の”満点を狙って出す”スキルを持つ、めちゃくちゃ若いうちに成果を出す、などのアピールが必要そうです。新たな選手への期待感を上げるという意味ではLEO選手の活躍にも期待したいですね。

終わりに

 BPLも4シーズン目を迎え、各チームのスカウティングに隙がなくなってきたように思います。すなわち知名度やサブスキルではなく、純粋なIIDX力で選抜される傾向はいっそう強まったのではないでしょうか。よって過去最高水準のバトルが見られることは間違いないでしょう。今シーズンの戦いが今から楽しみです。

文責:ユキジ X(Twitter) @isuzumi_BPLFan

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