僕たちは日本代表のためにサッカーをしているんだったっけ?

我らが日本代表がいつの日かワールドカップを制する。そんな夢を思い描いている人はたくさんいらっしゃることでしょう。私もその一人です。

2018ロシアW杯ではまたしてもベスト16止まり。2019アジアカップでは決勝でカタール代表に惨敗。日本代表がワールドカップ優勝に近づくためにやるべきことはまだまだあるようです。


そもそも「日本代表は強くなるべきなの?」と立ち止まって考えると、実はよくわかりません。でもどちらかと言えば、日本代表は強くなったほうがいいと私は思います。

強い日本代表は多くの人に憧れを与えます。もっと上手くなってもっと楽しみたいという気持ちを加速させてくれます。

日本代表の選手たちが時に打ちひしがれながらも日の丸を背負って世界に立ち向かう姿は、私たちに生きる勇気を与えてくれます。


日本代表に強くなってほしいと願う人が多い証に、日本代表が強くなるための様々な議論が連日連夜交わされている様子がスマホの画面を通して垣間見ることができます。

「戦術はこうあるべき」
「監督選びはこうあるべき」
「Jリーグはこうあるべき」
「海外移籍は〜」
「高校サッカーは〜」
「トレセンは〜」
「街クラブは〜」

ややもすれば私もこんなことを言っている気がします。でも、こんな声を見かけたときに腹の奥がぐるぐるといっているような気分になることがたまにありました。

そんななか、よくやりとりさせていただいているはまじさん( @hamaji99 )さんのこのツイートを見て、スッキリした気分がしました。

要は、私の中で消化不良を起こしていたのは、この国にある全てのサッカーがあたかも代表強化のために存在していることを前提としたような論調や風潮なのでした。

プロだろうとアマだろうと、子どもたちもみんな、日本代表を強くするためにサッカーをしているわけではありません。それぞれにそれぞれのモチベーションがあってサッカーをしているわけで、何を大切にプレーするかは一義的には自由です。全ての選手は自分のためにプレーする権利があります。それが“Players First”です。当たり前ですが、これを忘れてはいけないと思います。


「弱小国である日本は総力を挙げて代表強化に取り組まなければ世界のトップになることなんて出来ない」なんて声もあるかもしれません。しかし、そんな心配は無用。“Players First”と代表強化はバッチリ両立します。

なぜならヒトには「上を目指すこと」が遺伝子レベルでがっつり刻み込まれているからです。生存と子孫繁栄に直結しない活動にここまで本気になる動物は地球上でヒトだけではないでしょうか。サバンナ1番のハンターを目指すライオンはいません。でもヒトは飽きることなく上を目指すのです。そうやって人類は文明を発展させ続けてきました。

自分が楽しむためにサッカーをすれば、誰に言われるわけでもなく必要に迫られるわけでもなく、自然と「もっと上手くなりたい」と思うものです。それがヒトの特性です。「上手くなりたい」にどれほどエネルギーを費やすかは人それぞれですが、中には持てるエネルギーのほとんどを費やしてでもそれを願う選手がいます。そして、さらにその中には意志だけでなく、類まれな才能を持った選手もいます。彼らが未来の日本代表です。

ただボールを蹴っているだけで満足な選手がいれば、高校サッカーへ全てを捧げたい選手もいます。それらを含むあらゆる選手に「日本代表が強くなるためのサッカー」を求める必要はありません。日本代表になってワールドカップで活躍したい、世界トップレベルでサッカーがしたいと自ら願う選手をきちんと見つけて、導いて、背中を押してあげれば十分なのです。

ですから大切なことは、意志と才能を持つ選手にそのための環境をちゃんと与えてあげることです。サッカーには長い歴史があり、競技人口も多いので、どんなに才能があっても闇雲に努力するだけではトップオブトップにはたどり着けません。正しい知識とスキルを持つ指導者、同じく意志と能力の高いチームメイトと実力の拮抗する対戦相手が必要です。

「うちは世界に通用する選手を育てたい」と言いつつ、首を傾げたくなる指導を行っているチームや指導者を見かけることもありますが、これは批判されても仕方ないですし淘汰されるべきです。

でも、目に入るサッカー全てに「こんなんじゃ世界に通用しない」という文句をつけることは、スポーツの一番大切な部分を見落とした空虚な議論かもしれません。


自分のためのサッカーを突き詰めた先に高みに登りつめようとしてるとても良いお手本が新生森保JAPANで10番を継承した中島翔哉選手です。中島選手は常々「楽しみたい」と言っています。プレースタイルも「楽しんでこそサッカーでしょ?」と言っているかのような躍動感と創造性にあふれるものです。

先日、カタールリーグのアル・ドゥハイルという日本では知名度が高くないクラブへの移籍が発表されたとき、世間の声の中にはこの移籍にネガティブな反応を示すものもありました。中島選手はそんな気配を察知してか、自身のブログで移籍に関する自分の考えやこれからも上を目指す決意を語りました。

チームの強さやプレースタイル、家族やわんちゃんと共に暮らすことになる街の雰囲気といった環境を自分の目で見定めて周囲の声に惑わされることなく決断する様は、アスリートでなくとも見倣うべき姿勢だと感じました。彼こそまさに理想的な“日本代表”ではないでしょうか。

奇しくも日本代表が決勝で敗れたカタールへ移籍した中島選手。負傷によりアジアカップには不参加でしたが、カタールの人たちに「こいつが日本代表に居たら勝てなかったかもしれない」と思わせるほどの活躍を期待したいですね。

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