【書評】地方創生大全(木下斉・2016)

良い事例、悪い事例を紹介しながら、地方創生を進める上でやるべきこと、やってはいけないことを論じている。

主張を私なりに噛み砕くと、

地方創生は市場原理の中で生き残れる"ビジネス"として取り組むことが大前提。行政からの補助金などの税金を頼りにする地方創生は、カネを得られるメリットよりもビジネスを歪めるデメリットのほうが遥かに大きいため軒並み失敗してしまう。

ということかと。

総論は全くもって正しい。

私も常々指摘しているところですが、行政にとっては「一貫性」や「説明責任を果たしやすいこと」が重視され、事業効果は二の次三の次になってしまいがちな組織的特性があります。

福祉などの公共性の高い事業は行政が関与しないと成り立たないですが、地方創生・地域活性化を行政が主導するのは難しい。よほど有能で議会や地元と戦える首長がいない限りはほとんど無理かと。


データを示しながらというよりも定性的な議論が多く、各論については「ほんとにそうかな?」と感じるところもチラホラ。(最近の本はどれもそうですが、わかりやすさ重視で書かれているので、おそらく割愛されたバックデータも多々あるのでしょう。)

全国各地の実際の事例を知れたのはよかったですが、もともと似た思考を持っている人がそれを深めるという意味ではそれほど得るものが多くはなかったかもしれません。「そうだよね」という感じ。

なので、全然違うマインドセットを持ってる方にオススメしたい本ですね。それこそ行政職員とか、地方議員とか、いつも補助金欲しくてたまらない団体・業界の人とか。そういう集まりで開催される勉強会の課題図書とするのがベストじゃないでしょうか。

それにしても、この総論部分については地方自治体の価値・存在意義を揺るがしかねないものです。

人口減少社会への対策は全ての地方自治体の最重要課題なので、「俺たちがやるより民間でやって」とは口が裂けても言えない。でも自分たちが(従来のやり方で)関わるとろくなことがない。

どうしたものか。


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