福祉型ヒーロー!?『暴太郎戦隊 ドンブラザーズ』にみるケアする/される関係

前置き

3/10日の、TBSラジオ アフター6ジャンクションで読まれたメールの全文です。何度かメールが採用された経験はあったのですが、ここまで感心されたことは無かったので感激でした。しかし、メールの文面が我ながら固すぎて頭が痛くなったので、こりゃ聞くよりは読んでもらった方が良いかと思い、こちらで公開します。

メール本文

ラジオネーム:板さん

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』、福祉に携わる臨床心理士として、非常に感銘を受けましたし、勇気付けられた作品でした。しかし、投稿メールとしては文章が固すぎて、自分で

  多くの男児向けのヒーローが、“悪の根源”を排除することで、社会の安定を目指します。“正常”と“異常”を分け、病気の原因を取り除くという発想は、いわば“医療型ヒーロー”です。

 対してドンブラザーズは、心が暴走して社会にいられなくなった人をなだめ、再び社会の中で生きられるようにすることを主な機能としています。怪人=心の問題を抱えた人が、その問題を抱えたまま生活することを助ける、という発想は、いわば”福祉型ヒーロー”と言え、男児向けのヒーローでは特異な存在だと思われます(『プリキュア』などではよくみられるケースかもしれません)。

 その結果として、一度ヒトツキとなった人が累犯を重ね(何度もヒトツキになり)、最もそれを繰り返した一人がヒーロー陣営にいる雉野であることは、非常に示唆的です。なんなら、揺るがぬ正しさの権化として君臨する桃井タロウも、無神経な正論で人のコンプレックスを刺激してはヒトツキを何人も生み出しており、基準を決めて人を裁いたり区分けすることが”異常”を生み出す、という社会の構造を示していると思います。

 東畑開人先生の『野の医者は笑う』などでも描かれているように、対人援助の世界では、支援者と被支援者は表裏一体で、その境界はとても微妙なものです。かつて心に傷を負った人が支援者に回ることが多く、支援者(訂正:ラジオだと誤字ったまま「被支援者」となってました)の側も実はケアを受けることを常に必要としています。

 それゆえ、「ドンブラザーズに入ってよかったのか?」と問われた雉野が返す言葉は、非常に胸を打つものでした。正しくなさを抱えたまま、利他的な行動をすることで脆弱な自分を支え、社会の中で居場所を得て何とか生きられている。そんな人は、実は社会の中にたくさんいる、「当たり前」のことなのだと、言ってくれているように感じました。

 そのようなメッセージを、「インクルージョン」や「共生」のような手垢のついた借り物の言葉でなく、アクの強い人々の織り成す圧倒的にいびつで豊かな枝葉で雄弁に体現していることが、『ドンブラザーズ』の粋さとカッコよさです。

  自分が臨床をやっていくうえで、とても重要な指針を示してくれて、ありがとう、『ドンブラザーズ』。

余談ですが、日本のノーマライゼーションのパイオニアである、石川信義氏のご子息である宇多丸さんが、『ドンブラザーズ』を推しているというのも、とても重要なことだと思っています。