見出し画像

ソフトウエア・ファーストという幻想

著名なプロダクトマネージャーである及川さんの著書。大変な力作でした。

が、ここに書いてあるような会社になるには、随分と長い道のりになりそうだなと感じました。勇気づけられた方もいれば、おいおいここまでやりきれんのかと感じる人がいても、いいでしょう(笑)

ITの企画、開発、運用、改善までをすべて手の内に

ソフトウエア・ファーストという言葉が何回も出てきて、微妙にニュアンスが異なる解釈で使われていたので咀嚼するのが難しかったのですが、一言でいうと、こういうこと(ITのライフサイクルを手のうちに入れる)だと思います。

私もそれが正しいと思って、2007年に内製回帰をすべきと言い始めて、2009年に一人でそれをやりきることに挑戦しました。GAFAに比べたら企業規模は太平洋とペットボトルのキャップぐらいの程度の差があるけれど。数年かけてやりきって、その結果自分の仕事がなくなったので、独立しました。

同じレベルで語るべきではないとは思いますが、ソフトウェア・ファーストは相当に頑張って様々な変革をしないとたどり着かない領域なので、幻想のままに終わるかもしれません。

一番苦労したのは、自分の仕事の意味を経営者にわかってもらうこと。

よく言うじゃん。技術がわからない・ITオンチの経営者が悪いみたいな言い訳を。自分は「なんで自分の専門道具の使い方や価値が、お前は俺に説明できないの?」って経営者に言われた。とてもいい勉強になった。

ITの企画~設計~開発~デリバリ~運用~改善までのサイクルを回す体制を作るとサラッとありますけど、かなりの投資と、忍耐が必要だと思う。売るためのプロダクトを作るなら特にそう。やり切れる会社はそれだけですごい。でも、選ばれし強者しか取れない戦略ではという邪念が消えない。

マーケットシェアを拡大するためのソフトウェア・プロダクトを作るのは、極めて難しいチャレンジだと思っています。その分、勝ち残れば大きな果実を得ることができるけど、振れ幅がでかい。良くも悪くも。

オペレーションを改革するための、ソフトウェア・ファーストもありなのでは

会社の経営ってマーケットシェアの拡大と、オペレーションの改革が両輪であると思っています。前者のためのソフトウェアは難しいけど、後者のためのソフトウェア(コーポレート・エンジニアリング)は、難しくない。こっちを着手したほうが圧倒的にコスパが高いはず。

コストしかかからない(着手しても1円も増えない)のは事実ですが、その検討が進みもしないのなら、その会社にITと経営の間をつなぐ、戦略がないってことです。

中の人であれば、ユーザーは目の前にいるし、課題や不安は聞けばわかるし、業務や作業も自分で体験しようと思えばできる、ユーザーペインを自分で体感できる。実際に自分はそれをやったので、そう言えます。

会社にITと経営の間をつなぐ、戦略がない。これが一番でかいかもですね。経営の問題を一番感じているのは経営者で、やる気のある方は自分でそれなりの仕組みを作ってしまうこともあります。業務設計ができるから、あとはそれをPaaSやSaaSに落とすだけなので。

ただ、こういう方はあくまで例外で、戦略を作るのはIT側であるべきです。ビジネスサイドがプログラミング理解できるようになるより、IT側がユーザペインと業務設計とビジネスモデルを理解できるほうが、ずっと速いし効率がいい。

その理解者を見つけることが、オペレーションの改革を実現する仕組みづくりの第一歩であり、身の回りにそういう方がいるのであれば、大切になさってください。中島誠之助先生もニッコリ。

元々業務設計というコンセプトが希薄な所に、空気読んでやってきたワークフローが人材不足でポロポロとシロアリが食ったように蝕まれていく。人を雇うのはケチってSaaSだけは色々あるから、飛びついてみたけど業務インフラを整備する術がないから、ぐちゃぐちゃにITが入って余計気持ち悪くなってフランケンシュタインのような会社が増えるんじゃないでしょうか。

プロダクトは作れても、組織はそう簡単に作れませんから。

SIの主戦場は、そんな会社を何とかするコーポレート・エンジニアリングになるはずなんですよね。売るためのプロダクトは内製組織によって作られるから、外注して丸投げ~なんてやる会社はないでしょう。経営のかじ取りを丸投げしてどうするって話。売れるソフト作れっていうオーダーを出す会社があるとは思えないです。

オペレーションの改革って楽しいし、やる意味すごくあります。やる気のある皆様のために、わたくしは足掛け2年かけて煮詰めた資料を作りました。

ソフトウェア・ファーストを幻想で終わらせないために、私もできる限りのことはやっていきです。一緒に頑張りましょ~。

コンタクト先は以下にありますので、お気軽にどうぞ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?