仮釈放について思う

 日本の刑罰は、罰金のほか懲役又は禁錮刑(「拘禁刑」に一本化される。)という身体の拘束によって自由を奪う自由刑を原則(死刑は別途)としていて、刑期を定めない無期刑と、1か月以上20年以下の期間を定める有期刑(併合罪の場合最長30年)があります。裁判を経て、この刑の重さ(期間の長さ)が言い渡され、確定すれば刑事施設に収容されて刑が執行されます。受刑者は、満期釈放(刑期満了による釈放)、仮釈放、一部執行猶予の実刑期間の終了などによって身体の拘束が解かれ、社会に復帰することになります。
 世間一般には、被害者が大変な苦労をして勝ち取った判決を、仮釈放という仕組みによって削り取っている。被害者の人権より加害者の人権を重視するというのはけしからん。どうせなら一生外へ出すなという声がよく聞かれます。
 仮釈放とは、「改悛の情」があって、改善更生が期待できる受刑者を刑期満了前に条件付きで仮に釈放し、仮釈放の期間(残刑期間)が満了するまで保護観察に付する制度です。その意義、目的にはいくつかありますが、受刑者に将来的な希望を与えてその改善更生の意欲を喚起させること、受刑者の悔悟、被害者への謝罪や弁償など諸条件の変化に応じて不必要又は不適当となった拘束を終わらせること,保護観察処遇を受けさせることで釈放後における円滑な社会復帰を促進することなどが上げられます。これらを通じて、再犯を防止し、社会の安全を守ることが目的になっています。
 もちろん、社会の感情の一部として被害者等の感情も考慮される仕組みになっていますが、被害者等が反対していることだけで仮釈放が許されないというわけではありません。これらの判断は行政機関である地方更生保護委員会(以下「委員会」)に委ねられています。
 委員会での仮釈放審理においては、受刑者本人との面接、被害者等からの意見等の聴取、受刑成績、帰住先の環境などの情報を総合して、仮釈放を許可するかしないか、許可するとして時期をどうするか、条件である遵守事項(違反すれば仮釈放が取り消される)をどうするかなどが評議されます。
 被害者等にとって、加害者が刑期よりも早く出所してくることは、悔しいことだし、何より再被害に対する不安が高まるのは当然です。仮釈放などという制度があること自体が許せない気持ちにもなるでしょう。制度としては、確かに受刑者に対する恩典としての性格があり、刑事施設内管理上のメリットとして語られますが、更生保護の立場からすれば、満期釈放するよりも、保護観察を通じてその再犯を防止し、被害に対して加害者を真摯に向き合わせ、慰謝、弁償を行わせるように指導・助言することが、被害者等にとっても社会にとっても安全・安心に繋がるものと考えています。
 そのためにも、更生保護、保護観察が確かな更生支援、再犯防止の力を持つことが必要です。もちろん、万病に効く薬はありませんし、対象者の生涯にわたって効果が持続する確証もありません。国が少しでも効果を高め、対象を広げる方策を開発、実践し、私たち保護司が地域の中でその成果を仕上げていく、そんな努力を積み上げていけば、仮釈放を積極的に活用する意義が国民の多くに理解を得て、満期で出すことが批判されるような時が来るように思います。

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