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【第2回】鬼木祐輔(前編) 長友佑都専属スタイリストがイタリアとトルコで見てきた「サッカー」、「言語」、そして「目的地の認識」

中村が会いたい人に会いに行き、活動や思想をインタビューしてくる「今日はこの人に会ってきた」。第2回目は、フットボールスタイリストの鬼木祐輔さんです。

中村と鬼木さんの出会いは3年前、鬼木さん著、中村編集で『重心移動だけでサッカーは10倍上手くなる』という書籍を制作し、多くの方にご購読いただきました。それ以来交流を続けており、サッカーが上手くなるにはどうすればいいか、日々ディスカッションを続けています。

いまでは日本代表DF長友佑都の専属トレーナーにもなり、メディア露出も増えてきた鬼木さん。突如渡ることになったイタリアとトルコで、一体何を見て、何を感じて来たのか。シーズン終了後、W杯開幕前の6月4日、4時間以上にわたって聞かせていただいたお話を、可能な限りお届けします。

鬼木祐輔(おにき・ゆうすけ)
日本で唯一の「フットボールスタイリスト」。全国各地、小学生から大学生までのスタイリストを務めた後、2017-18シーズンより長友佑都の専属スタイリストに。著書に『重心移動だけでサッカーは10倍上手くなる』、出演・監修作に「重心移動アナライズ」「重心移動アナライズ2」がある。

ツイッター:@norishirodukuri


サッカーで大事なのは「目的地の認識」

―イタリアとトルコではどんなことをしてきたんですか?
長友選手がパフォーマンスを上げられるように、あらゆることをしていますね。他のトレーナーの方もいらっしゃるので、その方と協力しています。あのレベルの選手なのでできることも多いため、動き方のトレーニングというよりも機能を高めるようなトレーニングが中心で、そこに意識づけのために動きのトレーニングをやっている感じです。そして、あのレベルでサッカーをやると回復力がとても大事になってくるので、ケアは毎日やっています。彼は「一緒に成長できればいい」と考えてくれているので、僕も割り切ってそういうスタンスでいます。もう毎日探り探りですよ。

帰国してくると「講習会やってください」とよく言われるんですが、正直伝えることがないんです。今までやってたような、選手に「こう動いてみよう」ということはやっていないんですよ。

―そういうスタンスでいると、鬼木さんの考え方も変わってくるのでは?
そうですね。ただ、結局ゴールは一緒というか。

最近は「こういう動きをできるようにしよう」という考え方がナンセンスに思えてきました。動きを身につけたからサッカーが上手くなるのではなく、サッカーが上手くなれば自然と動きもよくなると。動きづくり、動きありきでアプローチしてそれができるようになっても、サッカーが上手くなることとはまた別の話です。

―では逆に、欧州では動きが下手でもサッカーがうまい選手はいましたか?
いっぱいいますよ。要は物の捉え方です。そのひとつが「目的地の認識」だと思うんです。それさえしっかりしていれば、勝手に動きも伴ってくるんです。

―「目的地の認識」とは?
言葉にするのも難しいんですけど……逆説、といえばいいかもしれません。サッカーで言えば、ゴールを目指した結果、あるいは目的地を決めてドリブルでボールを運んだ結果、体の動きが勝手に良くなっている。欧州のサッカーを見ていると、すべての動きは結果的に良くなっているだけなんです。体の動かし方を良くすることを目的化してしまうと、それはまた変なことになってしまうのではと、今は思っています。ただ一方で、そういう動きをできるようにしておき、自分の幅を広げておくことは絶対に必要なんです。

例えばブラジル代表選手の動きを見ていると、勝手にスキマができているんです。「スキマ」というのは、走り出すときやボールを蹴る時などに、体全体が傾いて地面との間にできる三角形のスペースをそう呼んでいます。

以前僕が出した本などでは「スキマを意識して動きましょう」と述べていましたが、今はそれも「行きたい場所、ボールを届けたい場所が認識できていれば、体が自然とそうなるのでは?」と考えています。

実は野球でも一緒なんです。例えば下の動画。ゴロ球を裁くシーンで、明らかにクルーズ一人だけ処理が早いんです。

これは「キャッチしてから投げる」と意識しているか、「一塁へ投げるためにキャッチしているか」と意識しているかの差だと思うんです。向かってくるボールを意識して、キャッチしてから投球、だと遅い。クルーズは最初から投球ありきでキャッチに入るんです。

サッカーに例えると「止める・蹴る」でしょうね。ボールを止めてから次を見て蹴る、では遅い。そう教えてしまうと、目の前のボールに集中してしまい、「目的地の認識」もいまその瞬間のプレーだけになってしまうんです。そうなると、プレーはひとつひとつがぶつ切りになり、体もスムーズに動きません。次に何をするか考えながらボールを扱うこと。それが「目的地の認識」です。

部分を切り取ってしまうのは日本語のパーソナリティ?

こういった現象はよく「手段の目的化」と言われます。最大の目的を達成することではなく、過程の手段を上手くすることに目が行きがちなんです。

こういう考えになってしまうのは、日本語を使っているからではないかと思うようになってきました。日本語の概念で物事を切り取ると、そう考えてしまうんです。

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【第2回】鬼木祐輔(前編) 長友佑都専属スタイリストがイタリアとトルコで見てきた「サッカー」、「言語」、そして「目的地の認識」

中村僚(Ryo Editor)

200円

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フリーランス編集者、ライター。サッカーや写真の本や記事をつくります。
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