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茨城県同性パートナーシップ宣誓と、自民党の理解増進法案国会提出見送りについて。

twitterで、巣鴨の地蔵/대한류큐사자_大韓琉球獅子という方から、1日に2回続けて丁寧な言葉で問いかけていただきました。どちらも twitterの文字制限・140文字でお答えするのは難しいので、このエントリでお答えすることにします。

まずは、こちらから。

僕に対して問いかけられたのは、 2019年6月24日の静岡新聞朝刊の下記の記事です。

ご見解を、というご要望なので、僕がこの記事を見て思ったことを記しますね。

「まあ当然のことだよね」

これに尽きます。

その理由をご説明しますね。

1)国会会期末に法案を提出することに意味がない
本気でその法案を通すことを目的とするならば、国会会期中にしっかりと議論を進められる時期に提出するでしょう。今国会が残り3日という時点で提出しても審議されることもなく、次期臨時国会に持ち越されるだけのことです。

2)会期末に法案を提出すると参院選へのアピール目的と誤解される
もし、今国会で審議できないことが分かった上で法案を国会提出したら、あからさまな参院選へのアピールだと、アンチ自民党の皆様が一斉に攻撃されるだろうことは、素人の僕でも容易に想像できます。
さらに言うならば、参院選でLGBT票を取り込もうなどと考える必要もないくらい、自民党の基盤は盤石だと思います。また、日本国内のLGBT票なるものは、自民党の選挙を左右するような力がないくらい小さいでしょう。尾辻かな子議員の最初の国政選挙は全国比例区で3万票程度しか獲得できなかったわけですから。自民党はハナからLGBT票に期待はしていないと思いますよ。

3)解散含みの国会会期末に法案提出することは無意味
今国会は始まった頃から「解散風」が噂され続けています。内閣不信任案が出されたら解散→総選挙、の可能性もあるかもしれません。衆院解散となったら、提出されていた法案は全て廃案になると聞いております。解散の可能性だって考えられる時に、単なる選挙のアピールではなく、本気で通そうと考えている法案は提出しないのは当然のことだと考えます。

4)該当記事に関して
静岡新聞の該当記事をどのように捉えたかも記しておきます。

・表現に注目
該当記事では「法案の今国会提出を見送る」と記されています。
注目すべきは「『今』国会提出を見送る」という『今』の部分です。
例えば「法案の国会提出を断念」と記されているならば、今後も法案が提出されないのだ、ということですから、それは残念至極だと思います。しかし、この記事は「あくまで『今』国会提出を見送る」という事実を伝えたに過ぎません。

・記事の小ささに注目
該当記事は「ベタ記事」と呼ばれる新聞紙面での扱いが非常に小さな記事です。つまり、記事の重要度が低いことを示しています。国会会期末が迫るこの時期になって法案が提出されていないのだから、見送った、というのは自明の理。だから地方紙のベタ記事程度の扱いにしかなっていないのです。

もし、自民党が理解増進法案の国会提出を断念した、という事実があるのならば、朝日・毎日をはじめ全国紙や、Buzz Feed Japanやハフポストが大々的に報じるでしょう。

これは地方紙のベタ記事に過ぎず、さして重要でもない記事に過ぎないと捉えたので、「まあ当然のことだよね」と考えた次第です。

【6月26日 01:30am 追記】

自民党は秋の臨時国会で理解増進法案の提出を目指すと発表しました。



続いて、もう一つの問いかけです。

該当のニュースの内容を、もっとも詳しく的確に伝えていると感じたのが毎日新聞の下記記事です。まずはこちらをご参照ください。

この件に関して述べる前に、僕が同性婚に関してどのような希望を持っているのかを記しておきます。

日本では同性婚がない状況の中、長く連れ添っている同性カップルは養子縁組制度や後見人制度を利用してお互いの権利を守っている方が多くいらっしゃいます。現在ある制度を巧みに駆使することは素晴らしいと思います。

しかし、法的に同性カップルとして認められることを望む方が少なくないことも分かっています。法的に認められていないがゆえに問題が生じると言われている、病院の問題や相続の問題などを解決するためにも、フランスのPACSのようなパートナーシップ制度を国が定めて欲しいと考えています。

下記はPACSに関して、簡潔に説明しているブログです。

これでPACS(パックス)まるわかり!結婚との違いは?

より詳しく知りたいならWikipediaをご参照ください。

僕は、せっかくゲイに生まれてある意味自由に生きられているのだからノンケの結婚制度に組み込まれる必要はないと思いますし、同性カップルならではの必要な要件をカバーする制度があると便利だと思います。

いずれにしても、国内どこでも適用される法的効力がある制度でなければ意味がないと考えています。

さて、当該記事に関しての問いかけにお答えします。

まず、各地の自治体で始まっている「パートナーシップ制度」に関して、はっきり示しておきたいことがあります。それは、法的効力を持つ「条例」と、自治体の内規である「要綱」の違いです。

2015年末に、渋谷区で「条例」、世田谷区で「要綱」としてパートナーシップ制度がほぼ同時期に始まりました。その内容を解説した下記記事がとても分かりやすいので、ご参照ください。

同性パートナーシップ 世田谷区と渋谷区の4つの違い

この記事の中で重要な部分は下記だと考えています。

「条例は法令の1つであり、議会の議決を経て決定される、いわば、みんなが決めたのでみんなが守らなければならない"ルール"です。それに対して要綱は、首長(この場合は世田谷区長)の権限で策定される"事務用マニュアル"だということです。」

条例と要綱の違いはお分かりいただけたでしょうか。

今回の茨城県のパートナーシップ制度も、他の記事では明記されていませんでしたが毎日新聞の記事でははっきりと

「県の制度は、条例として制度を定めている東京都渋谷区などとは違い、要綱に基づくもので法的拘束力はない。」

と記されていますね。

1)大井川茨城知事の対応について

・「要綱」で押し通した意味が分からない
議会の反対があった、つまり議会でまとめられなかったパートナーシップ制度を「要綱」で無理やり実現させた理由はなんでしょう? そこが僕には理解できません。
前記のように僕が求めているものは「国内どこでも適用される法的効力がある制度」であって、自治体の首長の権限で策定される法的効力のない制度ではありません。そして「要綱」が首長の権限で策定されるものであるということは、考えの異なる首長に変わった場合その要綱自体が無くなってしまう可能性だって考えられるのですから。
現時点で自治体によるパートナーシップ制度は、渋谷区以外は全て「要綱」のようです。自治体内でしか使えず、かつ法的効力のない事務的マニュアルには興味がないというのが本音です。それよりも、国として法的効力のあるパートナーシップ制度を定めて欲しいと願っています。

・議会の反対を振り切ることで生じる軋轢は考えなかったのだろうか?
今回の大井川知事の対応は、議会の反対意見を無視したことになります。県民の代表である県会議員の反対を無視するということは、その議員さんを支持する県民の意見も無視したことになると思います。
あからさまに意見を無視されたら、必ずや不満が生じます。そんな不満が蓄積していったら、LGBT当事者に対して本来は生じる必要がなかった嫌悪感が生まれるのではないかという不安を覚えます。
同性カップルの存在を認める制度は、多くの方の理解があり祝福されるものであって欲しいです。大井川知事のゴリ押しは、その逆を行くことのように感じられてなりません。


2)茨城県議会自民党の対応について

私たち一般人は、国会などの議会での議論を見ては議員さんの発言や行動で、その議員さん個人として評価してしまいます。しかし、そこで見落としがちなのは、議員さんは個人の考えだけではなく、支持者の代表として発言・行動しているのだということです。

リベラルは革命的に物事を変革させていくことを是とします。
逆に保守は、多くの理解を得ながらゆっくりと変革させていくことを是とします。

日本では後者の保守的な考えの人が圧倒的に多いだろうと僕は考えています。そして、茨城県の自民党を支持する方の中にも、パートナーシップ制度に対しては「時期尚早だ」と考える人が多かったゆえに、自民党県連は反対したのだと認識しています。

実際、LGBTに関する理解が浸透していると思いますか?

いろいろなゲイの人と話して実感することですが、当事者であるゲイの中でも、レズビアンやトランスジェンダーなど他のセクシュアル・マイノリティに関して興味を持ったり、正確な知識を持っている人はとても少ないです。当事者自体の理解が進んでいないのに、LGBTなど遠い世界のことだと思っている一般の人たちに理解が進んでいるとはとても思えません。

保守的な考え方の支持者によって支えられている自民党県連が、パートナーシップ制度を「時期尚早である」と反対したことは当然だと考えています。


以上、巣鴨の地蔵/대한류큐사자_大韓琉球獅子さんの問いかけにお答えしました。

考えをきちんとまとめようとすると、これだけの文字数(約4000文字)を必要とします。 twitterで複数回に分けて記しても、ここまでの内容はまとめられないですよね。こうやってnoteで自分の考えていることを、きちんとまとめるのは必要なことだと考えることができました。
きっかけをいただいた巣鴨の地蔵/대한류큐사자_大韓琉球獅子さんに感謝します。ありがとうございます。

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