2018.5.19

長崎戦。
相手の狙いを御しきれずに常に先行される苦しい展開も、若き選手が苦境を跳ね返してくれたことに大きな希望を感じています。

そんな試合に置いて大きな輝きを放った二人の選手について。

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・山田康太の「ファーストゲーム」

山中亮輔の目測誤りをカバーするために全速力で戻り、プレスバックでボールを奪う。
そんなファーストプレーを見て、いいゲームの入り方をした、と感じた山田康太の本当の「ファーストゲーム」。

これまで本職ではない右サイドバックでの出場が続いていた中で、喜田拓也の負傷離脱に伴って巡ってきたインサイドハーフでの出場機会。
タッチラインを背にするのではなく、360°自由に動ける環境を得た彼のプレーの質は際立っていた。
その特筆すべき要素はピッチの状況を把握し、正しい判断をする力。味方・相手の状況を瞬時に判断して最善の選択を出来ていたように思う。
前に出るのか、ポジションを落とすのかというロスト後の選択、外を回るか、内を突くかという相手の穴を突くコース取りの選択、一度足元に止めるのか、半身で受けてそのままスペースに流し込むのかというボールを引き出したときの選択、その選択、判断に質を感じさせてくれた。

個人的に大好きなのは、足元で受けるような「餌」を巻きつつ、半身レシーブでそのまま前を向き、相手を出し抜くプレー。ボールを受ける前の周辺の状況判断と技術の粋が詰まった一連のアクションは、陣形を崩す効果絶大。そしてアイデアとしても極上。そんなシーンが何度も見れた。こういったプレーを見て改めて中盤でこそ輝く選手なんだな、と実感した。

彼からしてみれば当たり前のことをしたまで、と思うかもしれない。しかし、それこそが末恐ろしいこと。エレガントな技術やアイデアの土台となる判断力。未来を夢見たくなる才能の台頭を喜ばずにはいられない。

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・躊躇なきスコアラー、仲川輝人2ゴール

彼は、スコアラー。
サイドアタッカーでも、ドリブラーでもない。

それは関東大学サッカーにおける燦然と輝く実績と得点への強い希求を感じていたからだ。

爆発的な加速でマークを剥がす、躊躇なきフィニッシュでゴールを陥れる。それは誰にでもあるものではない仲川輝人のスペシャリティ。

その予兆は前半にもあった、松原健の素晴らしいクオリティの縦パスを相手より一寸先に身体を開いて受けるとそのままゴール方向へ突進、山田康太は呼応するように外を回りオーバーラップを仕掛ける。しかし、外を使わず空いたコースを見逃さずに打ち切る。鋭いシュートは枠を逸れるも、ボックス内でコースがある状態であればシュートを選択する、スコアラーの一端が見えたシーンだった。

そして、スコアラーとしての躊躇なき姿勢がついに実を結ぶ。自らの積極的なディフェンスから、ハーフライン付近で山田康太がボールを奪う。山田康太が奪った勢いそのまま右サイドのスペースにボールを運んで折り返す。ディフェンスに当たりコースが変わるも、鋭く反応し、迷うことなくフィニッシュ。これがネットを揺らす。鋭い反応からのシュートに一つの躊躇も感じられなかった。

これで自信が確信に変わる。右に開き、松原健からのパスを受けると、松原健は外を回る。その一連のアクションにより空いたコースを見逃さず躊躇なくコンパクトな振りで打ち抜く。ボックス外からのシュートがニアに突き刺さる。見事というほかない素晴らしいゴール、これが決勝点となった。

スコアラーらしい躊躇なきフィニッシュが導き出した見事な2ゴール、試合後の表情は久々にスコアラーとしての責を果たした充実感か。実に晴れやかな笑顔だった。

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・二人の活躍が示すもの

彼らの充実したプレーが本当にうれしかった。

しかも、彼らはエゴイスティックに自らのやりたいプレーだけをして、コンセプトの基準から逸脱してたわけではない。求められる役割、位置取り、タスクを理解し、枠組みの中でスペシャリティを発揮してくれた。

仲川輝人であれば、ロスト後の瞬時の切り替えからの鋭いアプローチ、ワイドポジションでの幅を担うポジショニング、スペースを突くランニング。ロスト後の切り替えからのファーストディフェンスはアタッカーの中でもNo.1の反応の良さ、この貢献がチームにもたらす影響は計り知れない。

山田康太であれば、中央ハーフスペースでのボールレシーブ、サイドプレーヤーに対しての平行位置でのサポート、空いたスペースを見出した時のスペースランニング。中央の位置でセントラルらしい振る舞いをしてくれたからこそ、プレーエリアが中央に寄った。

チームを機能させるための役割を果たせるからこそ、信頼を得れる、ピッチに立てる。
元々の優先順位として決して高くなかった彼らが優先順位を覆して試合に出ている意義、そして結果を残した意義は決して小さくない。アンジェ・ポステゴグルーがしっかりとジャッジし、フェアな評価を下している証明でもある。チャンスは誰にでも訪れる。全ては自分次第。

そんなメッセージが彼らの活躍には詰まってる。競争原理が働き、切磋琢磨し、クオリティが高まっていくことが出来ればチームはもっと強くなる。

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これから中断期間。
連戦の疲労を抜きつつ、再度コンセプトを確認し、実戦を経て浮き出た課題を解決すべくトレーニングする「再構築」の期間に入る。

良いトレーニングを積み、チームとしてのクオリティを高めていければ、きっといいシーズンが過ごせる。そこに「個人」のスペシャリティが加われば、チームはより高みにいける。

この期間が横浜にとっていい時間となりますように。

終わり良ければ総て良し、ではないけれど、最後の最後にホームでの歓喜があってよかった。15連戦、全ての人にお疲れ様。

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