2018.4.28

鹿島戦。
支配率 49% - 51%
シュート数 7 - 19
枠内シュート数 6 - 11
CK数 3 - 11
「コントロールできなかった」というアンジェ・ポステコグルー監督の言葉通り、鹿島の一つ一つの圧力に苦しみ、標榜するプレーモデルを具現化したとは言い難く、劣勢だったことは否めない。


が、結果としては3-0、このスコアとなった要因は、試合をする上での原点、本質を一人一人が意識できたこと、そして点に繋がる部分でのクオリティが伴ったこと。
印象に残ったことを書き記しておきます。
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〇本質/球際で戦う、水際で身体を張る、集中力を高く保つ
あくまでもコンセプトやゲームモデルは優位に試合を運ぶための施術。自分たちの「攻撃回数」「チャンス」を増やし、相手の「攻撃回数」「チャンス」を減らすこと。


ただ、それだけで試合は決まらない、というのをここ数試合いやほど味わってきた。


それを代表するのが札幌戦。
ゲームをコントロールしてアドバンテージまで奪っておきながら、集中力を欠き、緩くなった局面での代償を支払う形になった。しかし、札幌戦後に中澤佑二、伊藤翔、中町公佑を中心に話し合いがもたれ、全員で反省し、その結果、決壊を免れた。

目指すべきものがあり、意識がコンセプトの具現化に向くのは当然のこと。ただ、一人の選手として眼前の敵に勝つ、タフかつシビアに戦うという要素もまた大切なこと。チープな失点を繰り返していたことをコンセプト上のリスクだけで片づけていたけれど、最後に踏ん張ることでチャラに出来たりする。

球際で戦う、水際で身体を張る、集中力を高く保つ。
どんなサッカーをする上でも大事なこと。
それはコンセプトの追及、具現化と同様に凄く意義のある事。これからも大切にしてほしいし、継続してほしい。

上記において特に目を引いたのが、この試合がリーグデビューとなった山田康太。彼が示してくれた「戦う意思」は凄く尊かった。
決して泥臭く頑張るキャラクターじゃない。エレガントな技術とインスピレーションでプレーする選手。しかし、右サイドバックという与えられた役割の中で身体を張ったブロック、ひるまないコンタクト、繰り返したスライディング、その全てが戦う意思に溢れていた。チームのために身体を張ってくれた。
リーグデビューのルーキーがそんな姿勢を示したことで、チームに火を付けてくれたのかもしれない。

(山中亮輔も素晴らしかったよ!)
(後方からの後追いでもあきらめることなく、素晴らしい近足タックルでカウンター阻んだり!)
(前節の失態を経た今節でも使ってくれた信頼に応える、そんな意思に溢れていた、集中力)
(左サイド偏重のチームに置いてアップダウンする回数が極端に増えるため負荷が高く、攻守両面でクオリティを保つのが凄く難しい状況。その中で疲労に蝕まれ、プレーの質が落ちるのは彼だけのせいではない)
(ただ、それを言い訳にせず責任を背負い、矜持を見せた)
(素晴らしい意志の籠ったプレー、よかった)
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◎クオリティ/天野純が示したクオリティ

先制点に繋がるギャップに入り込んでのフィニッシュ、1本目のコーナーキックのボールスピード、ユン・イルロクへのワンタッチでの素晴らしいスルーパス…
試合の入り方、フィーリングのよさに手応えがあった中でのポストを直撃して決まったFK、抜群のボールスピード、コース、鋭い変化…非の打ち所のないパーフェクトなフリーキック。鳥肌が立った。

このフリーキック以外にも痺れるプレーを魅せてくれた。
SB-CB間を走り抜けるユンユンにずばっと通したワンタッチスルーパス。凄く狭いスペースを抜けるユンユンの足元へ糸を引くようなパスは見事の一言。このプレーのフィーリングを見て「今日のあまじゅん、抜群にいい」と感じたり。

彼には期待の大きさから、かなり厳しい目線を向けられている
常に頭をフル回転させつつチームのコンセプトに準ずるプレーを求められ、その中で運動量、強度も求められる、その上で質を…というのは酷な要求なのかもしれない。ましてや常軌を逸した連戦。


それでもやってくれなくては困る存在、質を担ってほしい存在、それを自らのプレーで示してくれたことは賞賛以外にない。素晴らしいクオリティワーク、あまじゅん素晴らしかった。
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◎コンセプト/成功体験となるゴールへの道筋
この試合で決まった遠藤渓太、そして中町公祐のゴールは非常に美しく、試合の中でも大きな価値のあるゴール。その上でチームが欲しかったポジショナルプレーの成功体験としても大きなものであるような気がしてならない。
中町公祐が上げた3点目を例に。

①高い位置での強度の高いプレッシング
クォン・スンテから三竿健斗へスローされたところで天野純が強烈にコンタクトを伴うアプローチで奪い切る。

ここで本気度の伴う守備をしたからこそゴールという得られた対価が得られたことは選手たちにとって凄く意義がある。
相手ボールとなったら、素早く切り替え、ボールサイドにシビアにアプローチに行く。自分達が設定するエリアから相手を出さない、その上で攻撃方向を制限して、手厚く人がいるエリアでボールを奪う。
これが人数を掛けて攻めるチームが抱えるリスクをカバーする上での必須なコンセプトワーク。しかし、疲労や意識の低下からおざなりになることも多く、カウンターを食らうこともしばしば。そんな中でこのタスクをしっかりやることでゴールに繋がる、という形が実際に示された。大きな成果がぶらさがれば、選手達の意識は変わる。そういう意味で大きな成功体験。

また、後半の疲弊した状態でこれだけの意思を示したこともまた素晴らしいこと。天野純はここでもとても良い仕事をした。

②幅を保ち、開いたギャップを突く。
天野純のプレスによって相手陣高い位置でボールを奪回し、遠藤渓太がボールをピックアップ。そして、すぐさまインサイドのギャップに飛び込んだ天野純へ。天野純は身体を回転させながらワンタッチでの折り返し。中央のターゲットには合わずも、ファーサイドに詰めていた仲川輝人がエンドライン際で追いつく。
(エンドライン際でキープした仲川輝人はフリーで走りこむ中町公祐を捉え、タイミングを合わせたラストパス、中町公佑はニアでクォン・スンテの逆を突いたフィニッシュでゴールネットを揺らした)

鹿島の守備は、人に食いつき、圧力を掛けることをベースにしている側面があるので、幅を取るとボールサイドに寄る。となれば、オリジナルポジションを離れるので選手間のギャップは開く。そのギャップを埋めるために隣の選手がスライドで賄うのだけど、間髪おかずスライドして埋めきることが出来るわけではない。その間隙を突いたのがこのプレー。

ギャップが開く傾向を捉えて、天野純が外に寄るのではなく内側のポジションを維持し、そのギャップを突いたことが大きな勝因。
先制点も、外に開いたユン・イルロクの平行パスを内側のギャップで引き出し、良いファーストタッチからフィニッシュに繋げたことで、結果として遠藤渓太のゴールを導き出した。


「内側」を崩す再現性ある崩し。これこそが目指しているもの。この成功体験が更なる「内側」の崩しを進める機運となれば、横浜の攻撃は「怖さ」を増す。
二つの成功体験を含んだ素晴らしきゴール、酔わずにはいられない。
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褒めてあげたい選手が沢山いる、というか本当にみんな頑張ってくれて、中身の伴うプレーをしてくれたことは感謝しかない。苦しい試合だったからこそ、余計に。
次はコンセプトを具現化し、ゲームをコントロールし、中身も伴う、全てが揃う形で成功体験を得たい。
続けよう。お疲れ様!

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