1000円払ったら涙ぽろり

小さくリスクを抑え、小さな収益と経験を積み重ね、長く学び続けていくというきっかけをつくるために、小商い塾というのをはじめて4年目になり、いくらかの手応えを感じ始めている。


世の中には働くのが好きじゃないという人がいて、労働は苦であるという刷り込みがしっかりとされてしまった結果、お金を頂くためには苦しんで我慢して、必死の形相でやらなければ嘘だと思い込んでいる人がいる。

自分の情けなさがいやになったことはあるけれど、働くということがいやになったという機会がない。それはきっと当たり前のことではなく、本当に恵まれたことなのだと思うけれど、僕はそういうわけで働くのが好きだ。


この小商い塾も、もう4年目になるけれど、本当にたくさん学ばせてもらっているし、いくらかのきっかけを提供する機会をつくらせてもらえたりしてもいるし、まだまだ大したことが出来てないというケースもある。

それでも、いつも本気でいろんな人生の話を聞かせてもらっているし、なるべく本気でそこに向き合い、その人のためになることはなんだろうと考えているつもりだし、力不足ながらも出来るだけのことをしようと思う。


すると稀に、とっても嬉しいことがあったりもする。
今日もそんな時間があってとても嬉しかった。


小商い塾の埼玉県での開催は、昨年からずっと大宮駅から歩いて3分ほどのコワーキングスペース『7F』をお借りしており、オーナーの星野さんのご厚意に感謝することしきりである。ありがたや。ありがたや。


今日はメンバーのうち、精神的な苦しさに長いこと苦しみつつも、塾での学びをきっかけになんらか踏み出していきたいと考えて参加してくれた清水さんが、「ワクワクすることなんかなにもありませんが、まあ、、、ちょっとなんか、嫌いじゃないんだろうなって、まあ、そういうのはありますね」と断言を避けながら教えてくれた、コーヒーを淹れることについて披露をしてくれることになった。

これは、なかなかしんどいことにしか目がいかないし、すぐ過去の腹が立ったり悔しかったりしたことに心が奪われがちで、しかも過去には我慢をさせられることがあまりにも多かった清水さんの人生に、これから熱中して取り組めるなにかを探そうという小さな小さな第一歩としての取り組みだ。


到着すると、ものっすごいたくさんの荷物を持ってきてくれていて、いそいそとなにかの用意をしている。自宅にあるエスプレッソマシンをわざわざ持ち込んできてくれて、人数分のバニラアイスやミント、カップや片付けるための諸々の準備をして、今日を万全に迎えようとしてくれたことが伺えた。


「たいしたことはできませんよ、ほんとに!」


とにかく期待をさせないように、させないように、がっかりさせないようにしようとしているんだろうなと思った。それを見るだけでも、きっとがっかりされたりしたことが悲しかった思い出の痛みが深いんだろうなあと思う。

それでもこうして、不安を抱えながらも準備をしてくれて、一番最初に出してくれたのは、バニラアイスにコーヒーを注ぐ「アフォガート」。


うっかり写真におさめる前に食ってしまった、アホだ(笑)
ただとっても苦味と甘みがマッチして美味しいアフォガートだった。


次にエスプレッソを用意し、カフェラテを用意してくれた。



ええがな。
立派なカフェラテ。


「ちょっと、ああ、しくじってしまったんですけど!」


そう言いながらも、十分な出来である。

もちろん素人でやっているわけだし、プロの手捌きに比べておぼつかないところはあるけれど、立派なものだと思う。普段とても美味しいラテを淹れてくれるバリスタの友人がいるので、彼らがやはり、いかに腕が良いかというのもまた実感できるわけだけれども、それでも十分な出来映えだと思う。


そして最後に、炭酸を使って、スパークリングエスプレッソを。

昨日たまたまそれを人生で初めて飲んでいて、まさか二日連続で味わうことになるとは思わなかったけど、ペパーミントも浮かべて立派なものだ。
(写真わすれたけども)


そうして、アフォガート、カフェラテ、スパークリングエスプレッソの三種を味わわせてくれて、彼の人生初デビュー戦が終わった。


お客さん役の僕らが「代金を支払いますよ」というと、「いやそれは、もう、今日はみなさんに飲んでもらうつもりで来たからいいんです」と言うので、それを遮って、今回は代金1000円をお渡しした。

「お店で飲めば、このコースで1000円で十分です。だから1000円。」

そう伝えると、「そうですか。じゃあ、ありがたく頂戴しますね」と、彼は受け取ってくれた。


そのあと、みんなで塾の勉強に取り組んで、時間が経って解散する時間になった。帰り際にみんなで今日はよかったスネ〜なんて話をしてお別れする時になって、また清水さんが「でも1000円もらっちゃって、なんだか」なんて言っていたので、伝えた。


「でもやっぱり、自分がしたことで喜んでお金もらえるの嬉しいっすよね」


そういうと、なんだかすごく刺さったみたいで。


「はい、本当に。本当に。本当にありがとうございます。」


普段はすぐ自虐ネタに走ろうとしたり、過去に傷つけられた相手への恨み節が鋭く、悪態をついてしまうこともままある彼にしては、珍しくやけに素直で、まっすぐなお礼を伝えてくれたので、本当に嬉しかったんだなと思ってちらっと目を合わせようとすると、ふと涙がひかっているのが見えた。


ああ、本当に嬉しかったんだな。
そうか、それは本当によかった。


そんな風に思えた。小さな小さな一歩でしかない。
これから収益を上げて、ナリワイをつくるのだとすれば、1000円なんてのはいくらでも受け取ることになる金額になっていかなくちゃいけない。


それでも「喜んでもらえるってのは、涙が出るくらい嬉しいこと」だということを実感して、知っていてくれさえすれば、きっと大切なことは伝わっていくと信じられる気がする。これからいくらでも大変なことはあるに決まっているんだけれど、それでも嬉しいことが自分を支えてくれるのだから。


こんなケースばっかりじゃないけど、こんなケースが生まれるって信じているからこそ、やっぱり毎度毎度本気でやんなきゃいけないなと思わされる。

手を抜いててこんな風にはならないし、少なくとも僕にはできない。


「ありがとうございます」って、嬉し涙を流しながら報酬をもらえるような仕事をひとつでも一緒につくっていけたらいいなと思う。


とてもうれしかった。やっててよかった。

急に読者の方からサポートもらえてマジで感動しました。競馬で買った時とか、人にやさしくしたいときやされたいとき、自暴自棄な時とか、ときどきサポートください。古民家の企画費用にするか、ぼくがノートで応援する人に支援するようにします。