ズートピア評・箇条書き

良かったところ

・圧倒的なCG技術。ちょっと行き過ぎて人間っぽいところも笑。

・ポリコレ観と大きさの違う動物たちが醸し出す、今までとは一線を画す世界観。これまでのディズニー作品とは違うなと感じさせる。

・脚本の洗練され具合。伏線の張り方が、伏線のための伏線になってない。伏線を貼ってから拾う時間差も長いものから短いものまで豊富に取り揃えてあって、拾うまで気づかない。それがまた気持ちいい。

・安易に、小さいから小さいなりの長所がある、という風に落とし込めなかったところ。

・ニックのキャラが良い感じにポリコレを相対化させて、より鋭く浮き上がってる構図がとても良い。

・動物の大きさや特性の違いを利用して、古典的な芸をアレンジしている。小人の国に行くような所とか。

・まさかの電車アクション。実写大作アクション映画にもタメを貼る緊張感とダイナミクス

・ナマケモノのギャグ。言わずもがな。

・ジャングルのBGMがドンキーコングっぽくて好きだった。

いまいちだったところ

・ズートピアのビジュアルがそんなにワクワクしなかった。街に着いてからの動物たちは良かったのだが、列車での移動中の街の外観が、う~ん、といったところ。

・意外とストーリーにノレなかった。話の筋である行方不明事件の顛末は古典的でよく出来ていたが、ありきたりだと感じた。

・成長譚の形式を用いて差別の話をやってるが、目的の刷新が出来ないのが痛い。

・中盤の感動シーン(?)は「ああこういう女いるよね」という風に感じてしまった(それを飲み込んだ上で楽しめるのが大人なのかもしれないが)。実はあのシーンはニックに会いに行く理由がない。脚本も悩んで悩んで諦めたのかなぁと。

・小さい動物用の警官はどう考えても必要でしょ。ちょっと気になってしまったけど、これを言うと元も子も無いので、「まぁ、、、そこはね?」という感じだろう。

・吹き替えしかやってない(配給の問題)。吹き替えの悪改変の話をチラホラ聞いて(内容書くのは面倒なのでスルーします)ちょっと残念。でも吹き替えで当てた声は良かったです(まぁ元々アニメだしね)

いまいちだったところ(社会篇)

・ズートピアの成り立ちは残虐だったろうに、全く描かれない。

・人種差別関連の描写はあんなにハイコンテクストで絶妙なバランスで描かれたのに、徹底した立身出世主義と職業差別。別にやってはいけないとは言わないが、そのアンバランスさがすごく奇妙。しかも遣り甲斐のある仕事とそうでない仕事の基準が意味不明。一定のエンタメ性を確保するためにはわかりやすい評価基準を用意する必要があったのかな(保守的な評価基準は使えないので)、とは思う。

・立身出世主義の世界だったら格差が大きいのが普通なのに、ズートピアにはスラム街も無さそう。

・差別問題はみな元は移民問題だがそこもスルー。テーマでは無いと言われればそうだけど。ディズニーが次に社会問題系の映画やったら移民を扱うかもしれないね。

まとめ

何より彼よりCGの豊かな表現力ですよね。この作品の大事なのはほとんどそこですよ。しかし話として見ると脚本は洗練されているが、正直ナマケモノギャグがなかったら、傑作以下、佳作といったところかなという感じ。

実写はアンチCGの流れが来ているけれど、ディズニー・ピクサーは化け物CGを作っている。今後はどうなるのかな。


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