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【doublet 井野さん】デザイナーインタビュー #7 @TEXTILE JAPAN SHOWROOM2022SS


「doublet」の公式サイトを覗いてみると、ブランドについてひとことで定義できるような情報はないけれど、わくわくドキドキして次のページをめくりたくなるようなユーモアが完成度の高いウェブサイトに詰まっていました。なんだか、一瞬で海を越えて広がる話題をつくる「doublet」の一方で、素材やものづくりにもとことんこだわる「doublet」のコレクションに通じるものがありそうと感じました。

デザイナーの井野さんにお話を伺いました。(スタッフ3人で井野さんを囲んで不思議な時間です)

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宮浦:お時間いただきありがとうございます。2021秋冬はポリエステル、ウール、デニムなど、リサイクル素材を積極的に使われていたのが印象的でした。そして、最近よく耳にする「サスティナブル」じゃなく「もったいない」という表現にグッときました。反毛とかは、昔からある日本の産地の風景なので、「サスティナブル」でなく「もったいない」という言葉が妙にフィットしているようでした。


井野:半年前(2021秋冬シーズン)は、リサイクルの素材って昔からあるのに知らなかったような、今だから新鮮に感じる部分に面白さを感じました。今は逆に、アナログな手法だけどテクノロジーによって生み出されるような新しさにも惹かれています。コックさんが見たことのない食材をうまく調理してみたくなるような感じで、新しい方法によって可能性が広がるような未開拓なものが面白いと思って探っています。

宮浦
:リサイクルの技術や情報など、国内外問わずすっごくリサーチされていますよね!

井野:今も勉強途中で、やっと小学2年生くらいになったところです(笑)まだ全然わからないところもあって、だからこそ好奇心が出るし、掘り下げて知っていきたいと思っています。

宮浦
:リサイクル素材を、"リサイクルな素材"だけで終わらせないで、井野さんが工場まで行って生産工程を理解されて"doubletの素材"に広げていたのが素敵でした。リサイクル素材だから通る生産工程に注目して、そこにデザインを注入するアプローチと言いますか。

井野:例えば『この素材は地球に優しい素材なんですよ』というメッセージはファッションじゃないと思ってます。そのままだと面白味とか発展性がないので。これをファッションとしてどう魅せていけるのかがおもしろいかなと思っています。まだ言えないですが、次の企画も色々と準備中です。

井上 :
サスティナブルがトレンドになってる現代で、「もったいない」「リサイクル素材を使用」と言うと、「サスティナブルを謳ったもの」と捉えられそうですが、doubletさんではサスティナブルであることが目的なのではなく、サスティナブルにある可能性や未開拓な部分の面白さを突き詰めて形にした、ということなんですね。


中嶋:サスティナブルにはいろんな考え方がありますが、(素材の生まれる過程が環境負荷が少ないとか、お客様の使い方次第で長く着てもらおうなど)  井野さんはどうお考えですか?

井野:作ってるこちらの責任を買ってくれた方にパスするのはなんか違うので、お客様に委ねるようなことはしません。そして極端に「何も作らないのが一番」というのもまた違うと思います。そうしたら何も発展しなくなってしまうので。

宮浦:コレクションのギリギリまでずっと駆け回ってる感じですよね。ブランドとしてやることが沢山あるはずなのに、全部の産地の工場に行かれてたり。

井野:うちもギリギリです。できてるのかわからないし人に迷惑をかけて生きてますね。でもそうやってチャレンジしていると、協力してくれるような宮浦さんとか工場さんとかがいて。

中嶋
:産地の工場さんに足を運ばれたあと、その場で職人さんとアイデア交換するのか、後日アイデアが生まれたら職人さんと相談するのか… どうやって素材開発が進むのですか?

井野:両方ありますね。何かしらの行った爪痕は残して帰ろうと言うのはあります。あと、行ったのに何もなかったら会社の人に怒られそう(笑)

宮浦
:展示会に伺ってびっくりしたのですが、全てのアイテムに強烈なストーリーがありました。オリジナル素材のギミックの数々。ハンガーにかかっているものに語れないアイテムがないという状況ですよね。

井野:全部そうやって作っているので、もう一回やるのはしんどいくらいです(笑)次のコレクションも楽しみにしておいてください。

宮浦
:こうやって井野さんの姿を見て、次の世代に繋がっていきますし、新しいことへのチャレンジが日本で新しい素材が生まれる初動ですよね。


「doublet」は服はもちろん、表現の細部までユニークで、自由なのに確固たる「らしさ」が感じられます。常に更なる可能性、発展性を求めて駆け回る、その超前のめりな姿勢が「らしさ」を作っているのだとわかりました。痺れました。

井野さん、ありがとうございました!




聞き手:宮浦・中嶋
書き手 TEXTILE JAPAN SHOWROOM 2022SS 運営スタッフ  井上

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