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遠州産地発「HUIS」から学ぶ、産地ブランドの成長戦略

今年の夏にキックオフした、群馬県が主催する繊維産地活性化プロジェクトに糸編が運営として関わらせて頂いています。

セミナーやオンライン交流会を通して県内の繊維関連事業者が連携し、新たな製品や技術、ビジネスモデルの構築を目指す、通称「よつばプロジェクト」。群馬県桐生市の繊維工業試験所にて行われた初回のセミナーでは、遠州産地発のシャツブランド「HUIS」代表の松下昌樹氏を招いてブランドの成長メソッドやSNS戦略について学びました。

“日々の暮らしの中に馴染む上質な日常着”をコンセプトに遠州産地のシャトル織機で織られた生地にこだわった服作りをおこなうHUISが、2014年のブランド設立から8年で、今では年間100件以上の催事をこなし百貨店催事フロアの過去最高売り上げを更新し続ける「売れる産地発ブランド」へと成長した背景に迫りました。


ブランド初期の課題として、『産地ブランドが必ずぶつかる壁がある』と松下氏は言います。

それが「共感はしてくれる、応援もしてくれるけど、買ってはくれない。」という大きな壁。国内の産地で製造するので高価格の商品になるものの、新しく始めたブランドなので認知が弱くまだファンがいない。ブランド価値を上げて高くても買ってくれるファンが必要だけど、大々的な広告や販売プロモーションを仕掛けるようなやり方は、そもそも産地ブランドのには難しい。結果、売り上げが伸びないというジレンマです。多くの産地発のブランドに共通する課題かもしれません。HUISも初期はこの壁にぶつかり苦戦した先に、乗り越える糸口は「売り場」にあったと松下氏は振り返ります。

「職人技術を知って体感したい。日本のものづくりに誇りを持ちたい」というお客様の潜在的なニーズに対して、産地ブランドには「伝統の産業、職人の技術」に裏付けられた品質、伝えきれないほどの熱量や情報など、お客様のニーズに応えられるものはすでに持っている、と松下氏は考えました。そこから、受け手が求めている情報を、理解しやすい言葉と順序で、熱量とともに伝える接客方法を探っていきました。

売り場での直接コミュニケーションを取れるチャンスで、ブランドのメッセージを伝え、HUISのものづくりに興味や共感を持ってもらう努力をする。同時に語り切れなかった部分はSNSやブログもチェックしていただくようお声がけをする。こういった現場での繰り返しの活動が、HUISの「本物のファン」が増え壁を越えるきっかけとなりました。売り場でのコミュニケーションはメッセージを伝えるだけでなく、お客様からの商品に対しての声を聞く場にもなり、更には商品開発にも活きていったそうです。

ついプロダクトアウトで商品を考えがちな産地発ブランドの中で、売り場を重視して徹底的にニーズを探り、何をどう伝えたら理解してもらえるか情報発信の仕方に気を配りながら「求められているもの」を作る。HUISが成長を続けている理由の一端を今回のセミナーを通して群馬県の事業者さんに共有することができたと思います。


レポートでは綴りきれなかったので、またHUISさんのセミナーを各地でも企画したいと思います。

次のセミナーは2022年11月25日に山形から米富繊維の大江さんをお招きします。直接参加される方はぜひ現地にお越しください。そしてこちらのレポートもお楽しみに。


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