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【MITTAN 三谷さん】デザイナーインタビュー #9 @TEXTILE JAPAN SHOWROOM2022SS

TEXTILE JAPAN SHOWROOMにお越しになったさまざまなデザイナーさんに素材との向き合い方など伺ってきましたが、今回の#9が最後のインタビューとなります。

「MITTAN」は世界に遺る衣服や生地にまつわる歴史を元に、現代の民族服を提案しています。平面的な構造を再解釈し、天然素材が持つ本来の機能性と組み合わせることで、一過性の時代の流れにとらわれることの無い、永く続く服を目指しています。


「MITTAN」を運営するTHREAD ROUTESの代表であり、デザイナーの三谷さんにお話を伺いました。


宮田
:とても共感しながらウェブサイトのABOUTの文章を拝読しました。改めて、MITTANの服作りのルーツを教えていただけますか?

三谷:ブランドは2014年からやっているのですが、2013年にバングラデシュでラナ・プラザ崩落という事故があって大きなニュースとなりました。その前からアパレル産業は、児童労働や環境負荷などの面も社会的に問題視されていましたが、ラナ・プラザの件は自分自身もすごく衝撃を受けました。なので、ブランド運営の裏側でこういった負荷がかからないようなものづくりをできる限りしていきたいというのがあります。そして、自分のアイデンティティに基づいて「どんなものづくりをしていきたいか」と深堀りしていったら、トレンドに左右されず長く着れるものを作りたいと考えて、『新しい民族服』というテーマのもと「MITTAN」をスタートしました。

宮浦 : ラナ・プラザ崩壊事故をきっかけに作られた映画『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』を通して事件を知った方も多いと思います。「産地の学校」では、映画を観てから議論し合う時間が放課後にあったりしました。


宮田:将来的にご自身のブランドを立ち上げようというのはいつからあったのでしょうか?

三谷:中学生か高校生の頃からですかね。テキスタイルが好きで、オリジナルのテキスタイルを自分たちで作れるようなブランドにしたいと思っていました。 

宮田:服作りにさまざまな工程と要素があると思いますが、テキスタイルはMITTANの服作りの中でどのような存在ですか?

三谷:テキスタイルはベースにあります。それぞれの季節で心地よく、長く着れるようなものづくりをしています。ラナ・プラザ崩落に関しても服を着る時間がすごく短くなってきたっていうのが原因の一つにあがっていました。短サイクルでものを消費するのではなくて、ずっと着られるものを作って、その価値が変わらないというところも提案し続けるように意識しています。

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宮田
:服をデザインするにあたってテキスタイルを選ぶのはどの段階でされてますか?

三谷:先に生地の開発をすることもありますし、生地と企画が同時に走ることもあります。既存の形に生地だけあてることもあります。必ずオリジナルの生地でないといけないとも思っていなくて、工場さんが提案してくださる良い生地があれば、それをオリジナルに変える必要はないと思っています。

宮田:それぞれのアイテムで色展開が異なりますが、アイテムに合わせて色を選ばれているんですか?色がとても豊富ですよね。

三谷:うちは色と素材の組み合わせが多くて、製品染めの化学染料のバリエーションが3色くらいあって、草木染めのバリエーションが4色くらいあって、ベンガラ染めのバリエーションが3色くらいあると、色だけで10を超えてきます。それを同じ生地に対してはもちろん別の生地でも10とかあると... SKUにすると膨大な数になってきます。通常のブランドさんだと「この服はこの色」と決めるんですけど、うちでは決めてなくて(お取り引き先さんに)色を選んでいただくスタイルです。


宮浦 :  では、MITTANのお取り扱い店舗によって同じアイテムでも色の並びが異なるんですね。

宮田:要素を削ぎ落としたパターンは服のディテールを見せるのではなく、テキスタイルを見せる意識があるのでしょうか?

三谷:服をツールとして提案しているからと言えます。ディテールをこだわると洋服らしさが出てしまいます。それぞれのディテールには歴史があって、それが洋服としての要素になっています。そういったものには引っ張られないように意図的に要素は削ぎ落としています。

宮田:シーズンごとに形を変える、生地を変えるってことはされていないですよね。

三谷:それが自分たちにも工場さんにとっても良いサイクルに繋がっています。プロダクトのビジョンが見えた状態でものづくりをすることで、クオリティや信頼関係を築くことができていると思っています。

宮浦:「定番品があって、生地も縫製もリピートする」というのはひとつの理想の形ですよね。

三谷:さまざまな生地の展示会にも行きますけど、毎シーズン生地を新しくするわけではないので、想像していなかったような生地との出会いがあればと思っています。展示会場に1日中いて、計3点しか(生地見本を)ピックしないとかもあります。

宮浦:今日はテキスタイルショールームにはるばる来てくれましたが、まだスワッチのピックされてませんよね(笑)

三谷:そうですね(笑) 無駄なスワッチは工場さんにとって余計な仕事ですので。自分の中でリンクしたらオーダーするようにしています。以前も何度かスワッチオーダーして生産までいかなかったことはあるので、そうなると申し訳ないので。

宮浦:産地の工場さんからすると、そのスワッチオーダーの本気度はわからないので、スワッチオーダーがあれば送りますよね。コロナ禍では直接顔の見えないオーダーが多いと思うので、特に。なのでブランドさん側がそういう意識だとすごくエコというか、ありがたいですよね。MITTANではコロナで何か変化はありましたか?

三谷:ブランドのサイト上で商品詳細を説明するページを作りました。また商品にもQRコードがアイテムタグについていて、そこからウェブページに飛んで、詳細がわかるようになっています。どこで染めてる、織ってる、縫ってるといった生産の背景です。服の詳細がわかるとそれでもっと服を大切に着てもらえるかなって思いました。その服が何物かわからない服にはやはり愛着って湧きづらいと思います。 

MITTANの商品説明ページ

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宮浦
: 僕自身もそういう服の選び方、楽しみ方が好きです。どこの産地の生地で誰が織っていて、どこでどんな風に染められていて、どこで縫製されているのか。そしてデザイナーさんや生産管理の方の思いなども、話してくれる方からはどんどん聞きたいです。

三谷 : 今後はブランドとして二次流通もやっていこうと考えています。自分たちが作ったものに責任を持つこととして。もちろん修理は継続してやっていきます。自分たちの服なら価格がわかるので、上代の何%かで買い取って修理加工してやっていこうと思っています。着なくなったらブランドがなんとかしてくれると思えば安心して着れるし、買う時もハードルが下がるんじゃないかと。通常の商品はこれまで同様でお取引り先で販売する。お取引り先さんとの関係性も、工場さんと同じように継続して良い関係を築いていきたいです。

宮浦:おもしろいアイデアですね。トレンドに左右されない定番の強い服作りをされているからこそできるんだと思いました。そしてブランドとして修理をずっとやってきたからこそ。


三谷さんからとても興味深く、また考えさせられるお話をたくさん聞くことができました。個人的にもとても速いスピードで消費されていくファッションに疑問を感じていたので、今回のお話は今後のファッションに対する考え方のヒントになりました。三谷さん、貴重なお話をありがとうございました。

聞き手 TEXTILE JAPAN SHOWROOM運営スタッフ 宮田
書き手 TEXTILE JAPAN SHOWROOM運営スタッフ 井上


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