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“信条”の兄弟たちは、漫画版『アサシン クリード チャイナ』のもとに集え!

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 ……お前はまた『アサクリ』かよ、と思うかもしれませんが。

 いや実際のところ、別のネタで書く計画を進めていたんですが、仕事の取材やらなんやらで、そっちがぜんぜん進まなくて。とはいえ、今回の話題はオレにとって非常に重要なので、大急ぎで更新した次第。

 というわけで2020年2月19日に、小学館のサンデーGXコミックスから、漫画版『アサシン クリード チャイナ』の第1巻が発売されました! 

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 じつはオレは、『サンデーGX』本誌の漫画の隙間で、ずっとゲーム紹介コーナーを担当していたのですが。もう終わっちゃいましたけど。その関係で、本作を描かれた倉田三ノ路先生にもお会いしたことがあるのですが、倉田先生は本当にガチの『アサクリ』ファンで

 もともと歴史ネタのコミックを描かれている方なので、『アサクリ』は相性バッチリだと思っていたのですが、お話を伺うと『アサクリ』をきっかけにして他のUBI作品まで興味が派生して、『ファークライ』や『ゴーストリコン』といったバリバリのシュータータイトルまでクリアしちゃったというゲーマーぶり。さすがです。

『チャイナ』ってどのゲーム? シャオ・ユンって誰?

 そんな倉田先生が執筆したこの漫画は、タイトルの通り『アサシン クリード チャイナ』のコミカライズとなっています。……ん? 『チャイナ』ってなんだ? 

 『アサシン クリード』のタイトルを知っている人でも、『アサシン クリード チャイナ』というゲームを知っているのは、シリーズのコアファンだけかもしれません。なぜならこのタイトルは、いわゆるナンバリングにあたるメインシリーズとは異なり、外伝的なスピンオフの作品なので。

 『アサシン クリード チャイナ』は、『アサクリ』の世界を2.5Dの横スクロールACTで表現したオムニバス作品『アサシン クリード クロニクル』のうちの一編で、16世紀明朝の中国を舞台に、女性アサシンのシャオ・ユンが活躍する物語になっています。

 『チャイナ』の主人公であるシャオ・ユンが初登場したのは、じつはこのゲームではなく、エツィオ三部作完結編の『アサシン クリード リベレーション』 と同時に発表されたCGアニメ『アサシン クリード エンバース』です。この作品は、テンプル騎士団の支配する中国を脱出したシャオ・ユンがイタリアにやってきて、老人となったエツィオに教えを請い、中国に帰るという物語になっています。この『エンバース』を受けて、中国に帰還したシャオ・ユンの活躍が描かれるのが『チャイナ』編なのです。

 ちなみに実写映画『アサシン クリード』では、現代パートに一瞬だけ、ロープダートを操る女性が出てくるのですが、彼女はシャオ・ユンの子孫という設定です。意外に人気キャラなんですよ、シャオ・ユンは。

武侠漫画の作者が、『アサクリ』世界の明朝を描く!

 そんなわけで漫画版『アサシン クリード チャイナ』は、ゲーム版でのシャオ・ユンの物語に沿って展開していくのですが、この漫画版ならではの注目したいポイントが、3つあります。

 まず1つ目は、これが中国という「東洋」の物語である点です。『アサクリ』シリーズは、さすがに歴史について詳しくリサーチされているのですが、それでも東洋を描くとなると、西洋の目を経由する過程で生じた微妙な違和感が存在します。「ワン・ヤンミン」とカタカナで表記された人物が、日本でも有名な儒学者「王陽明」だと気づくのは、なかなかに大変でしょう。

 漫画好きの人ならご存じかもしれませんが、作者の倉田三ノ路先生はもともと『天穹は遥か -景月伝ー』をはじめとして、中国史、それも武侠ジャンルに精通したコミックを描かれている漫画家さんです。そんな倉田先生だけに、原作のゲームと実際の中国史を丁寧にすり合わせて、まるで違和感のない語り口になっているのが、じつに素晴らしいのです。

『アサクリ』といえば……のアレが、日本を舞台に展開!

 漫画版『チャイナ』の2つ目の見どころ、これは微妙にネタバレなのですが、単行本の帯裏のアオリにも書かれているのでここで説明してしまうと、じつはこのコミック版には「現代編」が存在するのです! 

 『アサクリ』といえば、歴史上のアサシンの活躍を描いた物語と、現代社会を舞台にアサシン教団とテンプル騎士団の抗争を描いた「現代編」の二重構造が大きな特徴ですが、『アサシン クリード クロニクル』はスピンオフのオムニバスということもあり、基本的には「現代編」は存在していませんでした。ところが漫画版『チャイナ』には、なんとオリジナルの現代編が描かれており、しかもその舞台は日本! 日本で稼働するアニムス、そして日本で暗躍するアブスターゴ社。コミックとはいえ、まさかこんな展開を目にする日が来るとは、シリーズのファンとしては胸アツですよ!

追記:記事公開後にTwitterを見ていたら、日本のアサシン教団は未邦訳のコミックで先に登場していたとの情報が! 『アサクリ』沼はホントに大変だわ……)

まさにコミックで読む『アサクリ』! 続刊を応援したい作品

 そして3つ目の注目ポイントは、ゲームをプレイしながら感じているあの感覚が、コミックで見事に再現されている点です。

 歴史上の人物と共に行動するアサシンが、空中から舞い降りて敵を切り裂き、そしてその行動が現代に生きるもう1人の主人公に影響を与える。過去と現在、史実とフィクションが渾然一体となってスリリングに展開するこの感覚は、まさに『アサクリ』そのもの。これは原作ゲームをよく知る倉田先生だからこそ醸し出せたものなのでしょう。1話目のクライマックスで、シャオ・ユンがイーグルダイブを跳ぶ見開きは、『アサクリ』ファンとしてグッときました。

 1巻目を読了した感想は、もう文句なしに素晴らしい! 原作となっているのはスピンオフ的なタイトルではあるけれど、『アサシン クリード』がどういう魅力を持つゲームなのかがギュッと凝縮されている点で、コミカライズのお手本のような作品だと思います。その意味でシリーズのファンはもちろんのこと、『アサクリ』初心者にもオススメしたいコミックです。

 あとはとにかく、ゲームの物語がこのまま過不足なくコミック化されるかどうかというのが、最大の問題で。そのためにはこの記事を読んでいるみなさんの応援が必須でしょう。紙の単行本だけでなく電子書籍版もありますので、どうかよろしくお願いします。

 ちなみに『サンデーGX』本誌2020年3月号では、第1巻の続きから読むことができるそうなので、そちらもぜひ。……オレの連載記事はもう載ってないですが。

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