道具瑣談 - 玉巻糸用ボウル

玉巻糸の場合、内から糸端を出すものと、外から出すものがあります。内から糸端を出すものは、内側から糸が消費されていくので、毛糸玉の体を残しながら、次第に痩せて透けていきます。ワイヤーアートのラインの如く、向こう側が透けるほど糸量が少なくなっても、糸玉の体はそのままで、作業台の上でひたすら横たわって糸を吐き出していく様子は、まるで、自らの命の行方を知らずにただ生糸を吐き続ける蚕を見るようで心憂く、なるべく視界に入れぬよう、編み針に目を落として、ただ淡々と編み進めるばかりです。
逆に、レース糸は糸玉の外側から糸端を取るものが多く、糸の補給中にはじっとしている様子は微塵もありません。糸を引っ張れば、おもちゃを与えた猫の如く、落ち着きなくころころと動き回り、作業台を転がり落ちて視界から消える刹那は、作業中の虚無感の筆頭と言っても言い過ぎではないでしょう。
これでは編み作業に集中できないので、ヤーンボウルという糸を入れておくボウルがあるようなのですが、補助用品としての存在がまだ希薄であるようで、手芸用品店では見かけたことはありません。
そのため、食器のボウルをヤーンボウルとして代用しています。

ヤーンボウルの代用として購入したのは無印良品の陶器製のボウル。
下は「スタッキングボール 大」。50g巻きの糸用で、常に2つはフル稼働。
上の小さいものは「スタッキング ディップボール」で、10g巻きの糸入れやビーズの移し替え時の容器、その他、筆洗、染料を溶く容器 等々に使用。
形も釉薬もあっさりと平滑に仕上がっていて、糸が引っかかる心配が無く、価格も無理なく揃えられるものだったので、これに決めました。
重ねて収納できる仕様の形状は、数個積んでもとても安定します。ダルマ落としのように、運よく重なればいいとばかりにバランス悪く重なり合っている食器の見た目とは雲泥の差です。地震の時の、カチカチと音を立てて恐怖心をより煽り立てる食器類の記憶も判断材料の一つです。

MUJIのものを選んだ最大の理由は、足したくなった時に同じものが手に入るだろうという推足の上。民藝の「用の美」を現代の方法でみごとに表しているMUJIの商品類は、用途別の設計を重要視している印象の強く、定番品の廃盤や大幅リニューアルの頻度が低そうだと判断しました。(実際はどうか分かりません。)

また、もしいつか、編み物をやめる時が来ても、もとの用途である食器に戻せばいいので、ヤーンボウルを買い集めるより、少し気が楽というのも理由の一つにありました。

ただ、購入してから気付いたことですが、このスタッキングボールは扱い店舗が限られているようで、商業施設の一角の店舗だと扱いが無い...大失敗。MUJIにも店舗限定商品があることをこの時に知りました。これらは、池袋店と有楽町店、ウェブショップで少しづつ買い集めました。

上のボウルのサイズ感は以下の通り。

↑ 右「スタッキングボール 大」には「エミーグランデ 50g」がすっぽり。ダルマ糸の 18番 (強撚糸) と20番 (ツヤ消し) (両方とも50g巻) は、エミーグランデ 50gよりやや小さいので、操作性もよくジャストサイズです。
左は「スタッキング ディップボール」にダルマ糸の「紫野 40番 10g」を入れたもの。「紫野 10g」は、オリムパスの40番レース糸 (10g) より、巻がやや大きい。

↑ 上から。今のところ、この2サイズのボウルで対応できています。

↑ DMC コルネドスペシャル 20番 20g巻 を「スタッキング ディップボール」に入れたもの。この糸は国内メーカーの 40番糸 10g よりやや大きい巻で、この器では、これが限度です。

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編み糸専用のヤーンボウルには、糸を誘導し通しておく穴が開いています。上記の転がり対策や、少量となり軽くなった残り糸玉の引き寄せ防止、糸の補給時の引っ張りで起こる糸玉ぶっ飛ばし対策 等々、糸を (ある程度) 固定する為の穴が作業時に効果的に働くようです。

しかし、ビーズ編みの場合は、糸にあらかじめ通しておいたビーズを奥に送りながら編み進めるので、編み作業に夢中になって糸玉をぶっ飛ばすことはほぼありません。また、ビーズは裏側に編みこまれるので、ビーズが指定通りに編み込まれているか、緩んで編み込まれていないか、チェックのために頻繁に手を止めます。ビーズ編みに限っては、糸通し穴が無くても、差し障りなく編み進めることが出来ます。

また、陶器とガラスビーズがぶつかることへの回避策としてレザーやフェルトを貼ることを考えましたが、陶器とガラスがぶつかってどちらかに破損が起こるような扱いをする方がよっぽど危険なので、対策は取らずに、自分の所作を改めることを念頭に作業することにしました。

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巻糸玉をヤーンボウルに投入すれば汚れの付着防止にもなります。ヤーンボウルが編み物の補助用品としての存在を確立し、手芸用品店で簡単に手に入ったり、好みのものが選べたり出来るようになれば、器に惹かれて編み物を始める人もいるであろうと、想像しています。(チューリップのグレーのかぎ針が使いたくて、かぎ針編みを趣味としたワタクシのように。)



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2017年晩秋に出会ったビーズ編みに日々精進しています。

ありがとうございます!!
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