制作閑話 ‐ ビーズをぶちまける

ビーズとは、知らぬ間に床に在るもの。

キラッと光る一瞬の輝きを視界に感じるか、靴下履きの足裏で感知してその存在に気づきます。作業室は上履きを穿かないカーペット敷の部屋なので、アンデルセンの豆の上に寝た姫のように、足裏の異物を感知して拾い上げたり、照明との関係なのか、一瞬の光を視界の端に感じ取り、まるでスズメを狙う猫のように、光った場所を凝視しながらそろそろと近づいて標的と思しき床に指を撫でつけて探り当てたりして、知らぬ間にある床のビーズを回収します。しかし、知らぬ間に床に在るのではありません。あの時の "ぶちまけ" の残留が拾われるのを待っているだけなのです。

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ビーズを辺りにぶちまける主たる要因はおおまかに3つ。

1, 移す。
2, 跳ねる。
3, 抜ける。

1, の「移す」とは、ビーズをパッケージからトレーへ移す、トレーからトレーへ移す、トレーから収納袋へ移す (戻す) 時などです。三角トレーの性質も相まって、比較的起こりやすい現象ですが、気を引き締めることで回避できる事項です。(三角トレーの性質については、こちらの記事で。)

2, の「跳ねる」とは、ビーズ通し針に通したビーズが、針の弾力性によって躍動し、針から抜けて飛び去ることです。
ビーズ通し針は極細の金属製で、縫い針とは違いほどほどの弾力性があります。この弾力性に伴う反発力が、あたかも棒高跳びのポールの如く、よくしなって、ビーズを向こうへ飛ばします。これは、ビーズを通し不安定になった針の持ち替え時に起こりやすく、指先に針が引っかかったり、ぶつかったりして、針がしなってビーズが針から飛び抜けます。この場合、ビーズは1粒から数粒の単位で跳ねるので、大量にぶちまけるほどではありませんが、いかんせん弾力ある針の反発力で飛ばしますから飛行は長距離になる事が多く、大きく飛んで行ったビーズはほぼ見つかりません。収納棚の隅などに飛び込んで姿を消し、大掃除の時などに発見される類の不用ビーズとなります。

大量にビーズを編みこむデザインの制作時は、「底」「側面 下」「側面 上」などに分けて、ビーズ通しの時間を分散し、集中力を保つことで避けることが出来ますが、その時の心理状態も関係する事なので、心が鎮まるまで、作業を中断することも考えます。

3, の「抜ける」とは、糸端からビーズが抜け落ちることです。ビーズ編みとは、編み糸に必要分のビーズを模様の順番に正しく通してから編む手工芸で、編み糸に通されたビーズを奥に送りながら編み進めますが、残り僅かになった編み糸に気づかずにビーズを奥へ送った時などにこれは訪れます。シャランという音と共に大量のビーズが舞い散る様子が視界の端に見えた一瞬の強い後悔と、その後に訪れる最大級の虚無感は、立ち直るのにやや時間がかかります。精神の痛手が大きい過失の一つで、なるべく回避したい事項であります。

回避方法は糸端にクリップを付けたり、結んでビーズが抜け落ちないようにしておくことです。
糸端を結ぶ時は、上画像のようにループが出来るように結び、糸端を引っ張れば解けるようにしておきます。

編み糸の残量が少なくなり、糸端が見えてきたら、即 結ぶことを習慣付けておきたいものです。
また、糸の巻きを作る時 (カセから巻きを作る時など) にも、最初に糸端を結んでから巻き始めるよう心がけています。

クリップは、バネの力で開閉する紙用のクリップでも対応できますが、専用のクリップも販売されています。

このクリップは、柳橋の「サン・びーどる」で購入したものです。コイルバネの特質をうまく使った逸品で、素気無い見た目は工業製品にも似通い、ただただ興味心のみで購入しました。


紙用クリップとはまったく違い、コイルバネ自体が強い力で留め付けるので、クリップがとれる心配は全くありません。糸端を結べば解決することですが、これは挟むだけなので、あってよかった便利グッズ的な存在です。

ちなみに上画像は、ビーズの一時退避の方法です。編み糸にビーズを通してみたけれども、編み糸との色合いがなんだか納得いかない時や、編み糸にメーカーが作った結び目があった時など、編み糸に正しく通したビーズをバラバラにすることなく、縫い糸に一時的に避難させておきます。

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足裏で感知した落下ビーズや、様々な理由で離脱していったビーズは、不用ビーズ入れに入れます。

これは弁当用品のマヨネーズやケチャップなど粘着性のあるソース類を入れる使い捨てのカップ。ビーズが入れやすい口部を持った容器なら何でもよいですし、ふたがしっかり閉まる容器ならば尚適しています。ジャム用のガラス瓶はとても有効ですが、ガラス瓶にビーズを入れると、よく跳ね、外に出てきてしまうので、入れる時に注意します。
購入したビーズの中に数粒程度混ざる欠陥ビーズもここへ入れますので、ビーズクラフトでは必須アイテムであるともいえます。

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あまりにも失敗が続く日というものがあります。そのような時は、日頃の疲れや焦りのような類の体の具合が関係しているのだと認識し、作業室を出ます。けっして、自分の性格の責任だとは考えてはなりません。たった数回の失敗が続いただけで、それまでの成功が見えなくなる目こそ正すべき性格であると思います。分かりやすい体調の症状が出ているのなら早くに諦められますが、自分では感じていない体調の具合や心理、ホルモンの周期 (男女問わず) 、季節や天候、天体の動きなど、様々なことが関係しあって、失敗という動きが起こります。それらは目に見えないが為に、容易に性格への追及が始まってしまいますが、性格というたった一つの要素が原因のはずがありませんし、失敗の原因全てを負かす程の強い精神はそうそう持てるものではありません。「自分はダメだ」を「今はダメだ」に変換し、材料道具類をすべてしまって、そこから離れる勇気を持つこともとても大切であると日々感じながら制作しています。

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2017年晩秋に出会ったビーズ編みに日々精進しています。

ありがとうございます!!
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