アシスタントはもう美容室に教わらない?【美容界の未来予想図②】
操作イトウです。前回の続きのお話です。
前回はこんな話をしました↓
美容師志望者の減少 → アシスタントに頼らない美容室の増加 → アシスタントを育成する美容室の減少 → 美容師免許だけでは働ける技術を持てない → 辞めていく若手、美容師志望者の減少
激ヤバなデフレスパイラル…。美容界は、この先どうなる!?
小規模の美容室の育成の仕方
前回、サラッと流した「良い指導者に巡り合えるかどうか」のお話を。
残念ながら多くの美容師や美容師見習いには、育成カリキュラムが整った会社に出会えない現状があります。
これは、特に「小規模の美容室」にとって、ずっと解消できない課題でもあります。多くの美容室はあまり店舗展開をせず、5〜20人程で「小規模」な運営をしています。その場合、後輩の育成にあたるのは“最近まで教わる側”だった先輩です。美容師は後輩ができると、後輩に“〇〇の技術”を教える順番が必ず回ってきます。
それは、少人数制のため「人材育成担当」や部署を設けられず、「先輩が後輩を教える」形が通例化しているからです。ですが、その先輩は“〇〇の技術”はすでに習得しているものの、まだ「育成する」経験値が薄い。その上「育成」の仕方を、事前に習ったわけでもありません。よって先輩美容師は「育成に特化した人材」でないまま、取り組む形になります。
もちろんこのサイクルによって、自分の「育成への向き、不向き」を知ることができたり、教える側に立って“〇〇の技術”の再認識をすることは出来ます。ですが先輩も「育成」を試行錯誤することになり、不効率なのです。
美容界に今なお続く、指導者「ガチャ」
正直言って、どこの美容室に勤めたとしても、上手な先輩に出会えるかどうかは“ガチャ”です。技術的に上手な美容師さんが、「教える事」も上手とは限りません。なにより、育成が“苦手”、“興味が薄い”先輩に指導される後輩が不憫でなりません。
この「育成のサイクル」自体は一般企業にもあると思いますが、さらに美容界が「世代別の仕事観」の変化に対応できていないことも、スパイラルに加担してします。
指導に回る先輩美容師は、「若手の離職率が高い」という特殊な環境下で長く勤めてきました。そのため、辞めていく先輩や同期、後輩を数えきれない程見送る経験をしています。
すると経験則から「美容師を続けられる人材は、淘汰されていくもの」と美徳として捉えていたり、「美容師は、“気持ち”が強い人しか続けられない」との自負が強く、若手が心が折れて離職していくのを、“根性”のせいにしてしまう方が多い。これでは、新しい感覚の優秀な人材を、みすみす逃してしまいます(今までも逃し続けてきた、が正しい)。
それ故「良い指導者に巡り合えるかどうか」で、その人の美容師人生は変わってしまうのです。
美容師の離職率についてはコチラ↓
動画で学習するZ世代
幸い、Z世代の若手は技術を得るツールを持っています。それは世界中の美容師が発信するSNSです。動画で発信された技術を見て知ることができ、中にはカリスマ美容師の発信もあるため、具体的な技術や最新トレンドを写真や動画で見れることは、非常に画期的です。
これを網羅できれば、そもそも育成にかかる時間や煩わしさをすっぱ抜ける可能性もあります。
「独学」が加速…
しかし現状、それは有名学習塾のような「有能な先生の授業動画」とまではいきません。それは美容師が各々勝手に発信しているだけなので、断片的で画一性もありません。
また動画には見えない部分があったり、解説されていない小さなコツが隠れていたりもします。「目で見て覚える」ことが得意な方もいますが、技法を感覚で覚える美容師さんも多く、巧く言葉に現せない“微妙なニュアンス”をアウトプットして伝えるのは、とても難しいものです。そのため、大事な“ニュアンス”は動画に載っていないかもしれません。
美容師にとって「独学」は悪い習慣ではありません。ですが、動画を見たからといって、それはすぐにできるようにはなりません。技術は繰り返し練習することでしか、得ることができません。
そもそも「スタイリスト」は誰が決める?
今まで、アシスタントからスタイリストへの昇格は、「育成した美容室」によって承認されてきました。スタイリストの認証は「美容師免許」ではありません。また、〇〇協会の「検定や資格」がある訳でもありません。美容室が売る「商品」として技術を担保するために、お店側が敷いた「ボーダーライン」です。
ですが、独学で立ち振る舞えるようになった美容師見習いには、承認を得る場がありません。そのため、誰かの承認を得ることなく「スタイリスト」を名乗る美容師も増えていると聞いています。
また“無免許のカリスマ”が現れる?【未来予想図②】
今後多くの美容師になりたい若者は、ネット上で下調べするでしょう。そこでは「形骸化した美容師免許」の話や、「独学で技術を得る手段」を知ることが容易にできます。
すると美容師にはなりたいけど「2年も専門学校に通って、免許を取る価値がない」と考える人もいるはずです。「学費なんか払ってもムダ!」「勤め先での2〜5年も修行するのもムダ!」、その面倒なプロセスを踏まない手段を選ぶ、そんな我流が現れるのではないでしょうか?
美容師は、日常的に免許を提示する場面はありません。携帯もしないし(証明書は「賞状」というアナログぶり)、取得していることを証明する手段が、そもそも無いのです。
かつて、「カリスマ美容師が実は無免許だった」と逮捕されたことがありました。カリスマ美容師ブームの最中で、大きなニュースとして取り上げられました(これにはこれの理由がありますが、割愛)。
そして、またいつか“無免許のカリスマ”が話題になる事があるかもしれません。当時も、それによって美容師免許の法律が改正されるに至りました。また世間を騒がせる事件が起きない限り、必要な業界の変革は起きないのかもしれません。
SNSの功罪?それは美容界の怠慢のツケ
人々はSNSによって、世界中の“今”を共有できる時代になりました。ファッションリテラシーは大きく向上し、それまでの「表参道でしか出来なかった」物は無くなりつつあり、ステキな写真をアップしている美容師さんが、全国に沢山います。
その中に無免許の美容師がいても、誰もわかりません。でもそれは“怠慢な美容界”が、時代に合わせた改革をしてこなかったことの付けが回ってきただけ。なんてことに、なるのではないでしょうか。
僕の【未来予想図②】、いかがでしょうか。的中してほしくないけど、なんか起きそうな気がするんだよな〜。
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ではまた。
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