いとバイ通信 2-16

いとバイ通信 2-16

ヤスパースの精神病理学

ヤスパースの学問は精神病理学を研究することから始まりました。その集大成が精神病理学総論でした。私は医学については商業高校卒ですから専門知識はありません。私が読んだのはヤスパースの精神病理学原論でした。

読んだ感想は病気には身体的なものと精神的なものがあるということが分かったような気がしました。身体的な病気で例えば「胃潰瘍」だと自分が健康であっても「胃潰瘍」の症状を容易に想像することができます。しかし精神的な病気の場合普通の人がそれを想像することはかなり難しいのです。

私の姉は精神病だったのですが母も家族もどんな精神病なのかは数十年間深く理解できなかったようです。病気によって独語を言ったり乱暴な行為をしたりすることが精神病のせいでもそれを理解するのが難しいために姉の人格からでる言葉とか行為とかと誤解してしまうのです。

精神病理学原論においてヤスパースは一般的な身体的な病理学と同じように精神の病理学を書いています。ひとつひとつの精神病を類型化しその病を解説していきました。ところどころに実際のその病から回復した高学歴者の体験談が掲載されていますので理解しやすいのです。

ヤスパースは精神病者の理解の仕方を「感情移入」と「了解」という方法で理解しようとしています。私の理解では感情移入とは患者の心の動きを観察者の心にコピーするのです。ここでの注意点はこの病の素質が観察者にある場合はコピーを没頭することによって潜在化していた観察者の病に発現したりする場合があるため、注意して行う必要があります。

「了解」は患者の感情移入から得た精神の理解を使って患者がなぜその行為を行ったのかを推察し理解するものです。

精神病を深くそのものを理解することによって患者の精神疾患と人格を明確に分けて理解することをヤスパースは目指しているのではないかと私は理解しました。私がヤスパースを尊敬する部分は精神病によってもたらされる行動と患者自身の人格(含む実存)とは明確に区別してみているところです。

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