いとバイ通信35　哲学者ヤスパース　　5

2020.7.10(金)

世界哲学を目指して

ヤスパースの晩年、未完の構想があります。世界の大哲学者についてヤスパースが執筆する本をシリーズ化することでした。実際に日本語訳ででているのが理想社のヤスパース選集の中にあります。5佛陀と龍樹、8カント、12イエスとアウグスチヌス、17ソクラテスとプラトン、22孔子と老子です。

このシリーズでは私のような研究者でない者が読んでもわかりやすく書いてあります。まずその哲学者の生涯を紹介しています。この部分では執筆当時の資料に基づいての記述ですから読者がその後の研究成果を補充する必要があります。哲学そのものはヤスパース自身の中に落とし込めた(理解)ことを書いています。

私が思うには東洋哲学に比べて西洋哲学は細かく記述していくところが優れているのではと思っています。その一番対照的であるのが日本の「あ・うん」の呼吸ではないかと思います。もしできれば東洋哲学を西洋風に詳細に記述することができれば世界哲学になるのではないでしょうか。

しかし西洋哲学者が東洋哲学を語る場合、自分の哲学(つまり西洋哲学)の枠の中で東洋哲学を語ることが多かったのではないでしょうか。ヤスパースは思想操作もその哲学者の独特な言葉(例えば孔子であれば「礼」とか「楽」)を生かして説明しています。とってもわかりやすい内容になっています。

哲学とは東洋も西洋も独特な発展を遂げてきました。大航海時代、植民地、世界大戦を経て世界の人々が参加できる世界哲学を目指そうとしているのが私にはヤスパース哲学のように感じます。ぜひみなさんも読んでみてください。面白いと思います。

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