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「テキストを読み込みましょう」を文字通りに解釈するなよ!!!

令和5年度(2023年度)司法書士試験合格者の谷口遼馬さんに、ご自身のとった勉強方法のうち、テキストの読み方を語っていただきました。

みなさんこんにちは。令和5年度合格の谷口遼馬です。
以前の「過去問を解いただけで満足するなよ❕❕」という記事に引き続き、「するなよ」シリーズ第2弾として、“テキストの読み方”について思うところを述べたいと思います。

なお、今回の記事は主に勉強を始めて日が浅い方、または何回も受験しているのに基準点付近で右往左往している方への記事になります。今年の試験で、合格まであと一歩だった、という方にとっては当然すぎる内容だと思われますので、今すぐ回れ右して勉強の時間に使いましょう。


1 はじめに

司法書士試験を学び始める際、あなたはこう言われたのではないでしょうか。

「テキストをとにかく読み込みましょう」
「テキストをとにかく回しましょう(何度も見ましょう)」

どんな試験でもそうですが、勉強するならとにかく過去問を解くことが大事です。しかし、司法書士試験は、過去問だけを解いて合格するような試験ではありません。なぜなら、過去問の問題がそのままそっくり同じ形で出題されることはあまり想定されず、また過去に出題されていないことが問われることもあるからです。

司法書士試験は相対評価の試験であるため、具体的に何点取れば合格するというのはありませんが、いわゆる逃げ切り点(記述式問題の点数が基準点の時に、合格点を超えるために必要な択一式問題の点数。)をとるためには、59~61問程度を正解しなくてはなりません。

そのため、合格を勝ち取るためには、テキストの内容を理解しておくことが必須になります。だからこそ、「テキストをとにかく読み込みましょう」と言われるわけです。

しかし、特に法律初学者の方や受験回数の多い方に注意してほしいことは、「読み込む」ということをそのまま解釈しないでほしいということです。

つまり、テキストをただ読んで理解した気になるだけ、過去問を解いてその該当箇所に戻るだけ、こうならないでくださいということです。

自分は違うと思っていても、合格後に思い起こしてみると、あの時実はそうだった、ということは本当によく耳にします。最短で合格するためには、正しい「読み込み」の方法を実践することが非常に大切なのです。

2 テキストの「読み込み」方

(1)まずはさらっと読みましょう。

司法書士試験に限らず、法律を理解することは非常に難しいです。初学者の方は、一周目ですべてを理解しようとしがちです。はっきり言いますが、一度ですべてを理解することは、よほどの天才でない限り不可能です。合格のための最短ルートは、意外と遠回りだったりするのです。

そのため、「読み込む」ことの第一歩は、全体像を把握することから始めましょう。「読み込む」 の手順をまとめます。

①全体像を把握するために、とにかくテキストを一周する。
全体像を“把握”できたら、それぞれの単元ごとの全体像の“把握”をするためにテキストを読む。
単元ごとの“把握”ができたら、その単元の“理解”をするため、それぞれの制度の“違い”を意識してテキストを読む。
④③までに触れてきていない細かい部分について、テキストの知識を詰め込む。

つまり、「読み込む」というのは、大きいところから順に理解していき、徐々に細かい知識を覚えるために、複数回テキストを読むことです。一周目に時間をかけすべてを理解しよう、テキストは一周だけしてあとは過去問を解くといったことは「読み込む」ことにはなりません。

そしてもう一つ、ぜひ「なぜ」を大切にしてください。なんでこの制度はこうなのか、この制度と似ているのか、こういうところからの閃きは、意外と本試験で役に立ちます。
一周目でできた「なぜ」を解決するために、二周目でそこを重点的に見ます。そしてそこでも「なぜ」が生まれるので、三周目でその「なぜ」を解決するために、そこを重点的に見ます。この流れを繰り返すことが重要です。

「なぜ」がないまま読み進めても、テキストの表現ではない問われ方をした場合に対処できません。また、「なぜ」がないまま読んでも、考えていないので何も頭に入っていないなんてこともあります。

ただ読んでいる時間は、無駄な時間以外の何物でもありません。そんな時間は桃鉄をしたほうがましです。他のプレイヤーがキングボンビーにやられている様を見て高笑いしているほうがずっと有意義です。私は友達いないからできないですけどね。

と言われても、イメージが浮かない人もいると思うので、苦手な人が多い、会社法の組織再編でそれぞれのゴールの具体例を示します。

(会社法全体のイメージを把握したうえで)組織再編には合併、と分割、株式なんちゃらっていうのと、新設型と吸収型っていうのがあるのね。なにやら分割に近い事業譲渡っていう制度もあるらしい。契約書や計画書を作ってスタートで、効力発生日がゴールなのかな。その間にそれぞれやる手続きがあるね。

組織再編の流れは、事前開示した後、(種類)株主総会と株式(新株予約権)買取請求手続き、債権者保護手続きをして、効力発生日から事後開示をする必要があるのね。
株主総会の決議は基本特別決議だけど、対価によって株主全員同意とかになったり、あとは簡易と略式があるんだね。なんで決議の要件が違ったりするんだろうか。

合併と分割、株式○○の違いは、(例)合併は会社がなくなり、分割は対価が株主ではなく相手会社にいって、株式○○は包括承継が起こらないといったのがあるのね。
簡易は額が少ないから株主にあまり影響ないから簡略化されていて、略式はどうせ賛成されるから決議不要なのね。だったら、影響ある株主とかいたら簡易だめだね。略式は、募集株式の発行や譲渡制限株式の設定と同じように考えれば、できない場合が覚えやすいのか。
ってことは、分割は対価が相手会社に行くから、簡易も略式も分割会社側はダメな場合がないってことにつながるんだね。だって株主に影響ないんだもん。

簡易組織再編ができるためには、対価の帳簿価額の合計額の存続株式会社等の純資産額に対する割合が5分の1を超えない場合にできるね。

といったように、とにかく大きいところから順に細かい知識を入れていくのが大切です。

初学者の方は、この①~④の作業を同時にしようとしてしまいがちです。会社法の全体像が分からないのに、簡易組織再編の要件を覚えても、それが問題で使えるかというと、そんなことはありません。単発知識だけで立ち向かえる試験ではないからです。

①のゴールは、その法律についてさらっと説明できるようになること。②のゴールは、どのような制度があり、さらっとどんな制度か説明できるようになること。③のゴールは、制度の違いを意識してより詳しく他人に説明できること。

とにかく、③です。③さえできていれば、暗記量がぐっと減ります。それだけで解ける問題もかなりあります。最初からちゃんと説明ができなくても、徐々にできてくるようになります。急がず、ここまでしっかりできたなと思ったら④の詰め込みに行きましょう。④の詰め込みなんて直前期にやればいいのです。この試験、急いだら負けです。

また、決して、三周でここまでできろと言っているわけではありません。テキストを何周もして、過去問や答練の問題を解いていき、本試験の直前期に入るタイミングくらいである程度できていればそれでOKです。

ただし、決して過去問や判例の暗記が無駄と言っているわけではありません。その知識が本試験で出て、そのまま使えることに越したことはないです。そうではなく、初めて見る問題やド忘れしたときの思考プロセスを確立するために、この作業が必要なのです。

(2)ペンと付箋の使い方

上記①~③の作業において、講師の先生がここをマークしましょうと言われた場所以外にもたくさんマークしたり付箋を貼ったりする方が多くいる気がします。

マークを引く場所は“大切なところ”にします。それでは、

Q、一周目でその“大切なところ”がわかるでしょうか。

A、わかりません。

無駄に引くと、あとで読み返すときに見づらくなったり、本当に大事なところに実はマークを引いていないなんてことになりかねません。本当に“大切なところ”というのは、何周かしてやっとわかってきます。
付箋も同じです。無駄にペタペタしても、本来必要ないところに貼ってあり、いらない復習の時間を費やすことにもなります。

ここ覚えられないな、とかここは絶対に暗記しないといけないな、などこういったところ専用にするのがおすすめです。また、何色も使うこともあまりお勧めしません。正直、意味ないです。やった気になるだけです。1色、多くても2色プラスシャーペンで書くメモくらいに収めるのが無難でしょう。

3 過去問からの戻り方

「テキストを読み込みましょう」といっても、テキストを読むだけでいいわけではありません。過去問や答練を解く必要があります。

とても大切なことですが、過去問は〇×を答えるためにするわけではありません。その答えに導くための“理由付け”を自分で理解しているか、またそれを説明できるかを確かめるものです。

そして、その理由付けも、なるべく大きな視点で見ることが大事です。コツとしては、イメージをすることです。そうなったら株主はどう思うかな、この書面を添付したら登記官は困るよね、など簡単にイメージするだけでも、理解度が上がります。

例えば、株式会社が持分会社と組織再編するときの決議要件を問われたとします。

吸収合併の時に対価が持分なら株主全員の同意が必要だ、吸収分割の時に対価が持分でも特別決議でいいんだよね!

ではなく、

合併は対価が株主に、分割の時は対価が会社にいく。そして持分というのは他人に譲渡するための手続きが非常に厄介だ。だから、持分を株主がもらうなら一人ひとりの意思を確認しないといけないし、持分を取得するのが会社なら株主は関係ないんだから(やや語弊がある)普通の特別決議でいいよね。

といった理由付けしなければなりません。

これをできるようにするためには、テキストへの戻り方に工夫を加える必要があります。

テキストの該当箇所(上の例だと、組織再編の決議要件が網羅している表のページ)に戻るだけでなく、

それぞれの単語の意味が理解できるページ(合併、分割、持分の定義が書いてあるページや株式と持分の違いの記載があるページ)
その該当箇所がテキストのどの位置にあるか(その単元の総論部分か各論部分か。つまり、他の制度と共通なのか相違点がある場所なのか)

をすべて見ると良いでしょう。もちろん、わかるなら飛ばしてOKです。

こうしていくと、徐々に全体像が見えていき、知らない問題にあたった時にも、まぁ多分こうなんだろうなぁ……という理由で答え、ちゃんと正解してるじゃん!という不思議現象が起き始めます。

ただ、この解き方はすごく時間がかかります。なかなか説明できるようになりません。しかしやり続けていると、ある時から一気に点数が上がります。私も基準点付近でウロウロしていたのが、一時期を境になぜか安定して30点をとれるようになりました。私ができたのだから、あなたも必ずできるようになります。

4 さいごに

「テキストを読み込みましょう」と言われても、何をしたらいいかわからないのが法律系資格試験の難しいところです。読んでるのに点数が伸びない!なんてことはよくあることです。
そんな方に、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

試験勉強中にテキストの読み方について参考にしたnoteがあるので、載せておきます。ぜひ参考にしてください。

「テキストの読み込みを頑張りましょう」というアドバイスの中身をガチで検討してみた。(伊藤塾司法書士試験科 黒澤クラスマネージャーの記事)

また、受験回数が多いんだけれどイマイチ考え方が身につかないといったかたは、ぜひ伊藤塾の『司法書士合格への「思考力」完成講座』を受けてみてください。中上級の方にとってはとても参考になる講座だと思っています。初学者の方は、入門講座に専念してください。

ちなみに、このサイトから受講しても、私のもとには1円も入らないので安心してください。欲しいけど。

長い勉強って大変ですよね。大丈夫です。いい感触があった本試験から合格発表までの3か月のほうが1億倍つらいです。
今頑張れば何とかなります。何とかなった私が言うのだから間違いありません。

それでは、よき試験勉強LIFEを!!


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過去問を解いただけで満足するなよ❕❕

答練を受けただけで満足するなよ!!


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