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法律用語のキホン

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の高橋智宏です。今回は、法律初学者の方に向けて、法律用語の基本をお伝えします。

【1】「判例」「先例」「通説」

①「判例」

判例」とは、裁判の事例について裁判所(特に最高裁判所)が出した判決等をいいます。

裁判所が出した判決の効果は、その事件だけに及ぶものですが、同じような事件が起こって裁判になったときに、同じような判決が出されることになるため、判例は同じケースの事件については、事実上、法と同じように拘束力を持つことになります。

②「先例」

先例」とは、実務のある事例について出された通達や回答をいいます。

法令の条文だけでは判断ができないような事案について、取扱いを統一するために発せられるものであり、法務局の職員(e.g.登記官、供託官)は、先例の取扱いに沿って、事例を処理することになります。

③「通説」

通説」とは、多くの学説が採用している法解釈をいいます。

通説に関しても出題根拠となり得るため、原則としては、条文のほか、判例・先例・通説までを押さえるようにしましょう。

【2】「要件」と「効果」

「(法律)要件」とは、法令の適用によりその効力が生じるための条件をいい、「(法律)効果」とは、要件を満たした場合に生じる効力の内容をいいます。

例えば、売買契約が締結された場合、代金を支払わなければなりません。ここでは、売買契約の締結によって、買主の代金支払義務が発生しています。この場合、「要件:売買契約の締結、効果:代金支払義務の発生」ということになります。

【3】「権利」と「義務」

ざっくり言えば、「権利」とは「~することができる」ということであり、「義務」とは「~しなければならない」ということです。

そして、権利の表現における「~することができる」とは、裁判所を通じて強制することができるという意味を持ちます。

【4】「法律行為」

法律行為」とは、意思表示を要素とする行為をいいます。例えば、「契約が成立した」というときの「契約」という法律行為は、申込みの意思表示と承諾の意思表示を要素としています。ここでは「申込み」、「承諾」といった意思表示により(法律)要件を形作り(契約が成立)、これが満たされれば(法律)効果が生じる仕組みになっているのです(e.g.代金の支払を請求できる)。

1,000万円の家の売買契約を例にとると、「この家を1,000万円で売ってください。」というのが申込みの意思表示、「分かりました。1,000万円で売ってあげましょう。」というのが承諾の意思表示です。

【5】「適用」「準用」「類推適用」

適用」とは、本来の対象に条文を当てはめることをいいます。これに対し、「準用」とは、本来の規定ではないが、準用を示す条文(準用条文)により、似た対象に条文を当てはめることをいいます。

なお、「類推適用」とは、直接当てはまる条文規定や準用規定がないものの、解釈により、その趣旨を類推して、別の事例に条文を適用することをいいます。

【6】「善意」「悪意」「過失」

内心の状態を表す用語として、「善意」、「悪意」、「過失」があります。「善意」とは、ある事実を知らないことをいい、「悪意」とは、ある事実を知っていることをいいます。日常用語とは意味が異なるので注意しましょう。

過失」とは知ることができたこと(不注意により知らないこと)をいい、「無過失」とは不注意もなく知らないことをいいます。また、「過失」には、注意を著しく欠く重大な過失である「重過失」、重過失ではない過失である「軽過失」があります。

【7】「推定する」と「みなす」

推定する」とは、当事者間に別段の取り決めがない場合、又は反証が挙がらない場合に、ある事柄について法令が一応こうであろうという判断を下すことをいいます。

これに対して、「みなす」とは、本来異なるものを、法令上一定の法律関係につき同一のものとして認定してしまうことをいいます。これは、当事者間の取り決めや反証を許さず、一定の法律関係に関する限りは絶対的に同一のものとして扱う点で、「推定する」とは異なります。


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