「褒めて伸ばす」と「褒めたら終わり」。

「役者は褒めたら終わり」こんな言葉を聞いたことがある。今の良かったよと言うと、次からなぞるばかりになって、それ以上が出てこなくなると言うのだ。まさに褒めて殺すだ。

歩きながら軽い気持ちで話題にした。とたん「いやそれは違うよ」険しい表情で反論された。何を言っても笑顔だったのに温厚な声も顔も一変。「良かったと思ったらどんどん褒めてください」ベテラン俳優さんの言葉はシンプルだった。

「褒めたらそこから成長しない」そんなことはない。「今の良かったよ」言われたらうれしい。なぜそう見えたか、ちゃんと考える人は冷静にふり返る。もっと褒められたいからもっと極めようとする。

褒めると同じ演技をなぞる人はいるけれど、それはその人の資質。褒めても褒めなくてもそんな人は消えていく。

それ以来、褒めるときはしっかり褒めるようになった。最初は(将来有望な人を潰してないかしら...)不安だったけど、将来有望な人ほど褒められると「ほんとですかぁ?」ふり返って気を引き締める。そんなふうに見えた。


「すてきだ」「うつくしい」「すばらしい」...心が揺れたとき、言葉をかける。言葉は発しなければ伝わらない。送った言葉は思いがけない贈り物になる。サプライズプレゼントのように喜んでくれて、気を引き締め、さらに深めていく。いつか思いがけない大きな贈り物になって返ってくる。

自分の周囲にある風景、食、湯、表現、音楽...あらゆるものが自分を喜ばせてくれる。ときには癒し慰めて育ててくれる。素直な心情の発露が今度は相手を育ててくれる。 すべての表現は受信しながら発信が行われる双方向コミュニケーション。ステージから届くエネルギーを笑顔と笑い声で返信する。

人は、人から受け取りながら人に与えて生きている。影響を受けたと感じるとき、同時に自分も人に影響を与えている。人生って「どんなキャッチボールをしたいか」かもしれない。


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五六〇劇場

ツイッターは140文字。文章は起承転結、音楽はA-A'-B-A'。そこから生まれた560字。 ゴーロクマル劇場。
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