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㉚義理を欠く就活生はいかに?

  2022年の年明け。これから就活を迎える4年生になろうとするA子から「〇〇企業」に入社したいと連絡が来た。A子は他学部から私の学部への転部生。その時、彼女が希望した学科の学科長を私がしていたために、私が転部面接をしたのだった。思慮深く考える性格、2年次までの成績もすこぶるいい。また転部を希望する気持ちも強く、かって彼女が1年生だった時のオープンキャンパス時に「転部をしたいけど、再受験をしたほうがいいのか、転部試験をうけるのがいいのか?」そう聞いてきたのがA子だった。そのとき、対応したのがこの私だった。A子の転部の志望理由は明快で、しかも強い気持ちも理解できた。そのため彼女の転部を承認したという過去の経緯が私とA子の間にはあった。

 A子の依頼を受けて、私はA子と私のゼミの卒業生を引き合わすことにした。時節柄、対面はかなわないのでオンラインでの紹介になった。当日、卒業生は仕事を終えてからオンラインミーティングに参加することになったために、遅くからの3人でのミーティングとなった。

 A子はいろいろ質問をしていた。それらはまあ私の想像の範囲内に収まる質問ばかりだった。悪くはない。この日は初対面のために40~50分ほどで終わりにした。その実施日は私がニューヨークに来る前だから、おそらく3月の初め頃だったように思う。

 私はニューヨークに来てからもA子のその後が気になっていた。しかし、私はもう大学教員ではないし、A子は私のゼミ生でもなかった。A子が私の学科へ3年生扱いで転部をしたとき、私は最後の年だったのでゼミを持っていなかった。だからA子はゼミ生でもなかったのだ。そのため、彼女のその後に口を出すのは躊躇われた。A子に聞くよりも、私にとってはゼミの卒業生に聞く方が聞きやすい。私とその卒業生とは、彼女の卒業後も何かとコンタクトは取り合ってきたから聞きやすかった。

 ゼミの卒業生に聞いたところ、その後、A子から一度連絡が来たという。そしていくつかアドバイスも送ったようだ。最後に「また連絡します」で終ったらしい。そして、その後、A子からはなんの連絡もないということだった。最後にA子と連絡を取り合ってから3カ月近く経過したというのに。
 もうすぐ7月になるという今の時期、就活ではそろそろ内々定が出そろう頃。想像だが就活に望む半数近くに既に内々定が出ているのではないか。A子の就活もそろそろ終わりが見え始めている頃だと思う。しかし、A子が卒業生の会社を受験したかどうかはわからない。受験を止めたのかもしれないし、そうでないのかもしれない。

 私は思う。何かを人に相談したら、その結果報告までを含めて相談事項だと思う。相談して、答えをもらって、はい、ありがとうございました、で終わりではない。今回の場合だと、就活をその後どうしたのか?ゼミの卒業生企業の受験を止めたのか?あるいは受験したけど落ちたのか?今、どのような考えの下、就活をしているのか?どんな業界を受験中なのか?その後の報告をキチンとすることが相談相手への礼儀だと思う。一度は相談した以上、最後までキチンとするのが相談者の責任でもあると思う。

 このような義理を欠く行動をとる学生は、実は驚くほど多い。誰にも教えられていないからということもあるが、少し考えたらわかる道理でもある。考えが及ばない時点で人としてまだまだ足りていないということ。「相談は報告までを含む」と知るべきだ。また大学の教員とはいえ、そこまで人としての行動を教える必要があるのではないか。今の大学教員で振る舞いを含めて指導する教員は少ない。しかし、今の大学生は昔の高校生と同程度。家庭での躾も十分でないために、その分、大学が背負う責任も広いと思う。きちんとした大人にして社会に送り出すべきと思う。今の時代、大学教員はそこまでしないといけないと思う。

 卒業生と後日談をしていたとき、こういうセリフを言われた。「相談だけして、報告をしないなんて、先生のゼミだと絶対にありえないことですよね」と。そう、私も思った。私はそんな態度は許さない。自分のゼミ生がそんな態度を取っていたと知ったら厳しく𠮟り飛ばす。それくらいゼミの中では、常識的振る舞いを厳しく教えて来たと思う。

 義理を欠いてはいけない。そんな行動をとってしまう就活生はきっと就活で苦戦しているように思う。たぶん、実際の採用面接の場でも、面接終了後に、「ありがとう、ございました」で終ってしまっているに違いない。


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