恋ダンスから読み解く、ヒットを生み出すMIKIKO先生の振付の肝

Perfume、星野源、椎名林檎、BABY METALなど数々の人気アーティストの振付を手がけるMIKIKO先生。
MIKIKO作品が世に受け入れられるのは、そのアーティストの個性を存分に引き出す、力が入りすぎず抜きすぎずの良い匙加減の振付だからだと思います。スタイリッシュで一見変わった振付なんだけど、人々にキャッチーだと感じさせられるところに、彼女のセンスを感じます。

でも、彼女の振付はキャッチーだと感じられるだけで、動き自体は難しく、決して真似しやすくはない。大流行した星野源の「恋ダンス」なんか、リズムも振りも結構難しくて、忘年会でやろうとしたら練習に疲れ果ててしまった人も多いのでは。(本当にキャッチーな振付と呼べるのはAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」)

私がMIKIKO作品が世に受け入れられ、ヒットを生み出す振付だと感じるのには2つの理由があります。

1つ目は、画面の枠の中で成立する特徴的な動きです。
音楽番組をよく見ると、あまり引き(遠くから)の映像ではなく、寄り(顔付近)の映像が多いことがわかると思います。
そうなると、体全部で成立する振付(例えばChooChooTrainの全員一列でトレインしている部分)では顔のアップになった時に、顔面と肩しか映らず何をやっているかわからなくなってしまう。なので、寄りの映像になった時によく動きがわかるように顔の近くに手や首の振付を多く入れているのだと思います。
「恋ダンス」のサビの部分がまさにそれで、常に顔の周りに手がある振付です。
私はこの手や首の振付を前面に出した恋ダンスを見ると、盆踊りを思い出します。足のステップは簡単なのに、やたら手の動きが凝っている・・・真似できそうなのにやってみると難しいんですよね。

2つ目は、「脇役のリズム」を振付にするのがうまいことです。
曲の中のメロディや歌詞に動きを合わせることはどの振付家でもやっていると思います。しかし、MIKIKO先生が他と違うのは、4拍子以外のリズムを拾って振付にするのがうまいことです。いわば、「脇役のリズム」を表現しているのです。
例えば、「恋ダンス」のサビの部分の中でドラムの「タタ」の音を手の動きで表現しているところがあります。サビの歌詞「胸の中にあるもの」と「いつか見えなくなるもの」の間に2拍のドラムの音「タタ」が入っているのがわかりますか?この「タタ」は、ボーカルの星野源さんは歌っておらず、ドラムの音に手の振り(頭の上にうさぎのように形を作る動き)だけで表現されています。その他の振付は、ボーカルとリズムに沿ってつけてあるので王道の振付手法と言えますが、ここだけドラムの脇役のリズム「タタ」が表現されていることで、MIKIKO先生流の振付だと感じさせます。この「タタ」があることで、ボーカルが無くても、「恋」の世界観が伝わってきます。

MIKIKO先生の振付の味は、ボーカルや曲のメロディを深く読み解いて、他の人がつけないリズムに振付をし、その曲の世界観を表現しているところにあります。

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