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【価格の科学】SaaSの7つの価格モデルについて

自身のサービスの価格設定を検討する際、どう価格を確定させようか、競合並べて相場と機能範囲把握して、PL的な予測モデルを作り、仮で設定した営業利益率から逆算して考えようか、それ以前にどういう支払いサイクルが顧客にとって良いのか、など考え出したらキリがなさそうだったので、価格について色々調べてみました。
いいネタがあれば連載してく形式にしようと思ってまして、第一回はSaaSをテーマに色々見てみます。

日本の価格戦略の祖は誰?

今では、お店でお買い物をするとき、商品に値札があるのは当たり前で、金額記載がなく、お客さんの身なりやお財布事情によって販売価格を変えるという、いわゆる相対取引はあまり見かけませんよね。
海外旅行いくとたまに目にしますけど。
あと、BtoBだといまだによくあります。

逆に、値切りの駆け引きなしに定価を提示して販売するスタイルを、正札販売(しょうふだはんばい)といい、今では当たり前ですが、商売の歴史から見ればとても新しい販売スタイルのようです。

ドラッカーの「マネジメント上」にもあるので、知っている人も多いと思いますが、
日本で正札販売が生まれたのは1673年、伊勢出身のとある商人が江戸で開業した呉服屋だと紹介されています。
その呉服屋は、「店前売り」と「現銀掛値なし(正札販売)」、「仕立て売り」、そして呉服業界で禁じられていた「切り売り」など今では当たり前となった販売スタイルを次々と生み出し、江戸で大繁盛します。

呉服屋の名前は、「三井越後屋呉服店」。
その店主の三井高利は、後に三井住友銀行、三越伊勢丹ホールディングスなどで知られる三井家の家祖と呼ばれるようになります。

三井高利とその周辺情報については、三井広報委員会からどうぞ。

現代の価格戦略(SaaS編)

高利という天才が様々な商法を生み出し早347年。

需要予測を元に変動的に価格を設定できるダイナミックプライジングは、ホテルや航空券でおなじみで、海外ではこれを応用したデジタル値札あるとかないとかだそうですが、そういやそれ以外にフリーミアムとか数えるくらいしか知らないなーと思い、色々調べてみましたので、自分の学習定着を目的に、今後発見あり次第更新していく連載形式にしようかなーと思っています。

株価や為替といった価格変動のモデルはこの連載では一旦参考程度にしようと思っています。

また、悪習のようにBtoBを中心に根深く残る、顧客のお財布によってかなり大雑把な見積ブラフして相対取引するスタイルを貫く企業が、会計数値からしっかり計算して適正価格と正札販売で勝負してきた新興企業に多くの顧客を奪われている様子、そんでもって、まだその勝負に晒されていない旧態的な業界がまだまだBtoBには多い現状を見ていると、もっと深く理解したいなぁと最近よく思っています。

というわけで、自分の学習用に自作した、海外の「Ultimate Guide」を収集するツールで、「Pricing」ってキーワードからこんなガイドを見つけました。

日付は2019/5/6になっていますが、twitterとか見ると2017年くらいからシェアされてるみたいですね。日本人の方も何人か2年前にシェアしていたので、知っている方もいるかもしれません。

SaaSをベースに、価格モデル、価格戦略、心理学的価格設定の3つに分かれているんですが、今回は価格モデルを見てみようと思います。

SaaS、7つの価格モデル

(1)Flat Rate Pricing (定額料金)
(2)Usage Based Pricing (従量課金)
(3)Tiered Pricing Strategy (段階的価格設定)
(4)Per User Pricing (ユーザー数課金)
(5)Per Active User Pricing (アクティブユーザー数課金)
(6)Per Feature Pricing (機能別価格設定)
(7)Freemium Business Model (フリーミアムモデル)

SaaSの価格モデルを分けるとこの7つのようです。

(1)Flat Rate Pricing (定額料金)

一番シンプルの形ですよね。7つのカテゴリの中でいうと単体商品、単体販売がこれに当たると思います。

国産のSaaSではたまにこの形態見ますよね。
無料プランなど特になく、クレカ決済や紙の契約書交わした後に法人単位で管理画面のアイパスもらうパターンのものです。

(2)Usage Based Pricing (従量課金)

webではないですが、電気ガス水道のような公共料金だったり、最近は定額も増えたかもしれませんがスマホの料金だったり、webだとAWSが有名ですよね。

(4)のユーザー数課金も従量課金なんじゃね、って思ってたんですが、事前予測の困難性があるかどうかで分類されているのかなーと思います。

(3)Tiered Pricing Strategy (段階的価格設定)

これは、あれですよね。
昔でいうauダブル定額とはdocomoのパケホーダイみたいな、どっかのラインまで定額にして、そのライン超えたらまた上の定額プランあるよー、的な懐かしのあれですよね。

MUSUBUのような営業リストサービスだったり、
主要機能の回数を段階的に制限して料金設定をしているSaaSもこのパターンに含まれそうですね。

ちなみに、どうでもいいですが、僕が高校に入学して親にはじめて買ってもらったケータイがauの初代WINシリーズの「W11K」で、確かパケ放題プランの名前は「EZフラット」だったと思います。
世界一かっこいいデザインだと思ってました。auさんありがとう。

(4)Per User Pricing (ユーザー数課金)

SaaSでは主要な価格モデルのようで、
GoogleのGsuiteだったり、SalesForceの多くの製品でも採用されているかと思います。

他にもGithubTrelloJiraといったチームワーク系のSaaSもこれにあたり、リモートワークに関連するサービスの多くも社員単位になるのでこれになりそうですね。

下記はGsuiteの料金表です。
(6)Per Feature Pricing (機能別価格設定)も含まれますね。

(5)Per Active User Pricing (アクティブユーザー数課金)

(4)のユーザー数課金に似ていますが、
ユーザー数課金は登録しているユーザー全員が課金対象なのに対して、アクティブユーザー数課金は、その中でもなんらかの基準を満たすアクティベートをしたユーザーのみを課金対象とするという違いがあります。

この例で最も有名なのはSlackですよね。
僕も、退職した社員など、非アクティブなSlackアカウントにお金払うのもったいないから削除しよー、って思ってSlackのメンバー設定見てはじめて知ったんですが、Slackの場合14日以上利用していないユーザーは非アクティブとして課金対象として外して請求してくれるので、Slackはただのイケメンです。惚れました。

非アクティブユーザーの取り扱いなどに関してはこのあたりからどうぞ。

(6)Per Feature Pricing (機能別価格設定)

(3)の段階的価格設定に似ていますが、こちらは、データ量などの数値別で料金を分けているのではなく、機能別で料金を分けるパターンです。
このパターンもSaaSでは結構おなじみですよね。

 (4)のユーザー数課金でも紹介したGsuiteの料金表を見るとわかるかと思います。

(7)Freemium Business Model (フリーミアムモデル)

最後に、フリーミアムモデルです。
今は懐かしきクリスアンダーソンのフリー戦略で昔話題になりましたよね。
もう11年前というのが驚きです。

SaaSではないですが、今ではスマホゲームなんかが完全にこのモデルの価格戦略で禁断の勝ちパターンを生み出したり、前出のSlackもまたこのフリーミアムモデルを使用していますよね。

まずは無料で使ってみて、それ以上の機能拡張や利便性を高めたいユーザーに対して、有料プランを設けるという、わりとwebサービスではお決まりの戦い方かと思います。

価格モデルは組み合わせ

一つ一つの内容見ていて思いますが、恐らく多くのSaaSは、このうち1つのモデルを独立して使っているというよりは、いずれかを組み合わせて価格設定を行なっているものだと思います。

例えば、Slackの価格設定は、
(4)アクティブユーザー数課金
の例で使われていますが、
(2)従量課金
(6)機能別価格設定
(7)フリーミアムモデル

も組み合わせて設計されています。多分。

価格モデルに関しては、このサイトは7つで分類していますが、なんかダブり感が否めないというか、他にも色んな分類の仕方ありそうなので、もう少し分類方法や最新事例について次回以降深掘りしていこうと思います。


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