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人工内耳のリハビリと聞こえの経過、日常生活に慣れるまでの3か月

人工内耳のリハビリテーションについて、重要だと言われている中で、実際の体験談は多くありません。
手術前にリハビリの重要性をとにかく説明されてきましたが、実際に体験した今、その説明に嘘はないと思います。
イメージが浮かびづらいリハビリについて、私が実際にどのような経過を辿り、日常生活に慣れていったかを発信します。

1)人工内耳手術前の私の状況

私は両耳人工内耳装用ですが、今回のリハビリの経過は初回の左耳の人工内耳についてのものです。

2007年に右耳を失聴し、2015年2月末に左耳を失聴しました。
2015年4月には左耳の人工内耳手術をして、その後初めて人工内耳を通して音を聞いた(音入れ)のは2015年5月になります。

最初に左耳を手術した理由は、直前まで聞こえていた方の耳を手術した方が、聴神経がまだ「聞く」ことを覚えているのではないか、と病院からアドバイスをいただいたためです。(最終的には自身で決断しています。)

よって、左耳が本当に聞こえなかった期間は2015年2月末~2015年5月中旬となります。失聴してから手術に踏み切るまで、約3か月という期間でしたので、失聴期間という点において、他の人工内耳装用者と比較しても短いのではないかと思います。

2)人工内耳で初めて音を聞く

手術後、初めての音入れを迎え、人工内耳を通して聞いた音は「機械的」という言葉がぴったりで、例えば話し声は人によって違うはずですが、どの人も同じような音質でした。

ただ、全く聞こえなかった世界にいた頃に比べると、「聞こえる」というインパクトは当然大きく、過度な期待をしていなかった自分としては「意外と聞こえるな!」と思いました。

まずは、「慣れる」ということ主眼において、音の高低のバランスや音量感の調整をしていきます。

初回の音入れは音が耳に入ったという感動が大きく、あっという間に終わり、まずは「人工内耳の音に慣れること」、その「音が何の音なのかを認識して聞くこと」この2点が重要だと言われ、病院を後にすることになりました。

この瞬間から、外部の様々な音が入ってくるのですが、どれもこれも聞き慣れない機械的な音質で入ってくるので、一体何の音が鳴っているのかを考えながら聞くことを始めます。

この作業が非常に重要で、中途失聴者の場合、何の音が鳴っているかを認識できると、これまで聞いていた機械的な音が、段々と記憶にある通常の音に戻っていく感覚になります。

3)人工内耳リハビリ生活1か月目

音入れが終わり、普段の生活で人工内耳を使う訓練(リハビリ)をしていくにあたり、聞こえに関して気づきをメモすると良いとアドバイスをいただいたため、メモ帳に日々、人工内耳の聞こえについて感じたことをメモするようにしました。

日々の気づきをメモしてきた
振り返ると変化が分かる

最初の1か月は、色々試すことに時間を費やしました。
電車に乗った時にどう聞こえるか、飲食店ではどうか、音楽はどうか、色々試し、うるさいと感じるのか音量が不足していると感じるのか、以前と同じように聞こえるのか等を確かめながら生活をしていました。
※もちろん音の答え合わせをするように、人工内耳で聞いた音が何の音かを認識することを忘れていません。

最初の1か月間の状況は下記のとおりです。
当然なのかもしれませんが、最初の1か月間が一番変化の大きい期間でした。
1か月間の変化を簡潔にまとめてみました。

人工内耳リハビリの経過1か月目

リハビリといっても、何か特別なことをするわけではなく、ひたすら人工内耳を使って聞くということが基本になります。
ただ、機械的な音であることとあまりに久しぶりに音を聞くことで、疲労感は相当です。
1日中、人工内耳で音を聞いていると、夜にはぐったりしてしまいます。(おかげで熟睡できます。)

最初の1か月間の変化としては主に下記のとおりです。

  • 人の声がザラザラした感じに聞こえる。特に女性や子供の声。

  • 高音がジージーという機械音で聞こえる状態が継続した。

  • 音量は毎日のように聞いていると不足感が出る。調整の度に上げてもらうことに。

  • 会話は口元を見れば何とかなる。徐々に男性の声は聞きやすくなり、男性との会話は概ねOKに。

  • 電話はほとんどできない状態、電話のベルが鳴っていることも中々認識できない状態が継続した。

  • スマホでの電話は割と成立してくる。(音量が大きいことや、受話口が人工内耳の集音部に当てやすい。)

  • 音楽はちんぷんかんぷん。ひたすら知っている曲を聞く作業を繰り返し、何となく認識できるように。

会話がある程度できるようになるまで、そこまで時間がかからなかったのは嬉しかったです。
もちろん口元を見ることは必須ですし、男女問わずという感じではありませんが、聞こえない状態から比べると雲泥の差です。

一方で電話は非常に難しいというのが実感としてあり、やはり人工内耳で電話は難しいのかなとやや悲観的になりましたが、職場で電話の練習に付き合ってもらったり、家族に手伝ってもらったり、電話を通して話を聞くという作業は欠かさずやっていました。個人的にはこれが非常に良かったのかなと思います。
周囲の協力があっての電話のリハビリなので、手伝ってくれた同僚や家族には感謝しかないです。

音楽については、当初スピーカーで聞いていましたが、ほとんど認識できなかったので、人工内耳とスマホを直接有線で繋ぎ、ひたすら知っている曲(私はGLAYが好きなのでGLAYばかり)を聞き続けました。
1か月では何となくそれっぽく聞こえているかなくらいで、音楽鑑賞というにはほど遠い状況でした。

4)人工内耳リハビリ生活2か月目

人工内耳装用生活にも徐々に慣れてくる頃です。
最初の1か月目に比べると変化は少なくなってきますが、徐々に聞こえ方が変わってきたのが、ちょうど2か月目になります。

2か月目の変化をまとめてみました。

人工内耳リハビリの経過2か月目

リハビリでやることは基本的には変わりません。
日常生活でしっかりと人工内耳を使っていくことと、聞いている音が何の音なのかをしっかり認識していくことが大事です。

2か月目の変化としては主に下記のとおりです。

  • 人の声のザラザラ感が徐々に低減。子供の声が聞きやすくなってきた。

  • 高音は相変わらずジージー感が残る。紙の擦れる音が結構不快に。

  • 音量は不足感からどんどんアップするものの、雑音が邪魔になることが多くなる。

  • 会話は上達を認識できる。複数人でも大丈夫に。普段あまり話さない人だと、声の音質に違和感が出る。

  • 電話のベルは認識できるようになるものの、固定電話の応対はやはり厳しい。

  • スマホでの電話は苦手意識がなくなり、自信がついてきた。

  • 聞いたことがある音楽は認識できるが、初めて聞く音楽はさっぱり分からない。(音楽鑑賞はまだまだ)

2か月目で一番嬉しい出来事は、鳥の鳴き声を認識できたことです。
鳥の鳴き声は高音なので、聴力が悪くなってから、しばらく聞いたような記憶がなかったのですが、妙に高い音が鳴っているなと思ったら、それは鳥の鳴き声で、とにかく感動しました。(もちろんこれも、鳥の鳴き声じゃないの?と周りに教えてもらわないと分からない)

音楽の認識が少し出来てきたのがこの頃です。聞いたことがある音楽であれば、リズム等を認識し、判別できるようになってきました。
とにかく音楽を聞くことを繰り返していて、1日30分は同じ曲を必ず聞くようにしていました。
私の場合は、繰り返し聞くことで、徐々にですが、「あ、聞いたことがある感覚だ!」という風に、頭の中で整理されてきました。

一方、新しい音楽(人工内耳で初めて聞く音楽)は、正直さっぱり何だか分からないという状況は続くことになります。(ひどい場合は、雑音にしか聞こえないものも)

5)人工内耳リハビリ生活3か月目

3か月目ともなると人工内耳装用が生活の一部となり、自分の中で装用に対する違和感が相当薄れていきます。

また、聞こえているという状態にも大分慣れてくるので、入浴や就寝の際に人工内耳を外して無音の世界に入ることとのギャップを認識してしまい、精神的にも疲れてくるのがこの頃でした。

3ヶ月目の変化をまとめてみました。

人工内耳リハビリの経過3か月目

3か月目に入ると、人工内耳の扱いに慣れてきて、余裕が出てきました。
やはり「慣れ」は大きいです。
認識できる音が増えてきていることが、人工内耳をきちんと使っていこうという前向きな気持ちにさせてくれるので、自分から話しかけるようになり、コミュニケーションに積極性が出てきたと感じていました。

3か月目の変化としては主に下記のとおりです。

  • 子供の声は以前聞いていた感じのように聞こえる。

  • 高音の違和感も軽減されてきた。低音が不足しているように感じ出す。

  • 音量の不足感はまだまだ感じるので音量アップ。雑音のこともあり、音量をリモコンで調整するように。

  • 職場における通常の会話は問題ない。会議室等の違った場面では慣れない。

  • 固定電話は相変わらず苦手。聞こえはするが、聞き返し、そもそも何を言っているか分からないことが多い。

  • スマホでの電話はほぼ問題ない。スマホに限れば、人工内耳を装用していることが分からないレベルに。

  • 徐々に「音楽鑑賞」が可能に。女性ボーカルの特に高い声の女性はザラザラした感じになり苦手。

音の違和感がどんどんなくなってくるのが3か月目でした。
子供の声がきちんと分かるようになったこと、今まで聞いていた音楽が音楽として楽しめるようになってきたことは精神的にもすごく良い影響が出たと思います。

私は「音楽」に対してすごくこだわりがあるとか、オーディオが好きだとか、そういう性格ではなかったのですが、いざ失聴し人工内耳になってみると、「音楽」を聞きたいという思いがすごくあるのだなと認識しました。
「音楽」が生活を豊かにする一部であることは間違いがないと思います。

日常生活の上では、3か月目で十分なレベルに達していると感じました。
会話はできますし、スマホで電話も可能です。
どこかに一人で出かけて行っても、人工内耳さえあればそれほど困らないのではと思っていました。

6)まとめと課題

人工内耳を装用してから3か月間で、日常生活には大きな変化が出ます。
日々、違いを実感出来る期間が、大体3か月くらいじゃないかなと思います。

3か月で不十分だなと思っていることは下記のとおりです。

  • 固定電話の対応。(聞き取りづらいが、対応可能な場合もある。)

  • 高低音のバランスや音量感。(心地良い着地点は3か月では難しい。)

  • ガヤガヤしたところや、広い空間での行われる会議等の会話。

  • 乗車中の会話。(集中力がとても必要なので、運転中はなるべく会話をしていない。)

  • 店内放送等の公共の場における放送が聞こえづらい。

  • 初めて聞く音楽。(率直に、何となくしか分からない。)

もちろんこれ以外にも不便に思うことや不十分に感じることはあるのですが、あくまで3か月目ということですし、この先人工内耳を使っていくことでクリアになることも多いと思っていたので、それほど心配はしていませんでした。

私は両耳人工内耳で、今回は最初に装用した左耳の体験談です。
実は右耳は、私の場合、左耳と同じようにはいかない現実がありました。
左耳の人工内耳で聞くことに慣れているので、どうしても左耳に頼り、右耳だけで使う頻度が低くなることに原因があります。

本来右耳のみでしっかりリハビリをしていかなきゃならないのですが、左耳が聞こえる今となっては、中々、右耳だけを使って、日常生活をおくる(リハビリの意味で)のは難しいと思います。

人工内耳の装用を考えている方の参考になれば嬉しいです。

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